BtoBマーケティングに取り組むために、「専任担当者を置きたい」「BtoBマーケターを採用したい」というご相談をよくいただきます。
BtoBマーケターの採用には、専任者の要件を決め、ターゲットを絞ったうえで、求人票の作成やスカウトなどを行う必要があります。BtoBマーケターの採用は難易度が年々高まっており、課題を抱えている企業も多いようです。
そこで、採用ステップの中でよくある質問に、これまでマーケターの採用活動で100人以上のBtoBマーケターと面談してきた才流採用責任者の中澤が回答します。
また「これから採用要件を決めたい」「求人票やスカウトを作成したい」方は、以下の記事も参考にしてください。
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BtoBマーケター採用スタートガイド~フローチャートで自社に合ったターゲットがわかる~
BtoBマーケター採用の求人票・スカウト文テンプレート~4つのターゲット別に解説~
本記事は、採用代行サービス「CASTER BIZ recruiting」を提供している株式会社キャスターのみなさまに監修協力をいただきました。同社はBtoB企業の採用支援実績を多数持ち、『採用を科学する。 計画・データ・仕組みで採用は変貌する。 』(NextPublishing Authors Press)も出版されています。
Q1.会社概要や労働条件を魅力的な内容にするためにはどうすればいいですか?
マーケターの転職理由を理解しよう
まずは、採用ターゲットの方を理解することが重要です。「何を求めて転職をするのか」、理由を理解しておくとよいでしょう。
これまで私がマーケターの方からヒアリングした中で、代表的な転職理由は以下のとおりです。年収を上げたい、働き方を改善したいなどマーケター職以外の方にもあてはまる一般的な理由は省略しています。
マネジメントするのではなく、プレイヤーとして活躍したい
マネージャーになったことで、メンバーのマネジメント業務が多くなり、本来やりたかったマーケティング業務の割合が減っているケース。プレイヤーとして、マーケティング戦略の策定から施策の実行に集中できる環境を求めている方は多いです。
違う業界・プロダクトのマーケティングをやりたい
長い期間、同じ業界や同じプロダクトを扱っていると実施する施策もかぶってきてマンネリ感を感じることがあります。新たな刺激がないため、成長実感を得られないことが転職を考えるきっかけです。
スキルの幅を広げたい
規模が大きめの会社・組織になると業務が細分化されていることがあります。特定のマーケティング施策のみを担当することもあり、マンネリ感、将来的なキャリアの不安を感じ転職を考えるケースもあります。
マーケティングの上流から携わりたい
「スキルの幅を広げたい」に近い理由ですが、施策の幅だけではなくマーケティング戦略・コミュニケーション設計などの上流から携わりたいという希望も多いようです。
独立できるスキル・経験が欲しい
マーケターは独立しやすい職種でもあります。独立につながるスキル・経験を求め転職を検討するケースもあります。
マーケティングの予算が削られ、できることが限定的
所属する会社の業績や方針によって、マーケティング予算が削られてしまうことがあります。できる施策が限定的になってしまい、仕事の面白みが半減してしまうことが、転職のきっかけというケースもあります。
Q2.スカウト文などに記載する訴求内容はどのように整理すればいいですか?
まずは、採用ターゲットの方が自社の環境を見たときに、魅力的に感じてもらえるポイントを整理しましょう。
訴求のポイントを整理しよう
ポイントを整理するうえで参考になる軸と例を紹介します。
経営陣
特に、経営層との距離が近いポジションでは、「創業者や役員がどのような人なのか」はチェックされるポイントです。経歴や実績に加え、人柄やマインドも伝えられると良いでしょう。
(例)
- (外資系コンサルティング企業など)〇〇出身
- 経営陣が社員一人ひとりの生活やキャリアを真剣に考えている
- 経験豊富な役員/社外取締役
ビジョン
企業選びの第一歩に、ビジョンへの共感を上げる方もいます。企業として解決したい課題は何なのか、何を実現したいのか、業界に詳しくない方でもわかるように、かみ砕いて表現しましょう。
(例)
- 〇〇業界が抱える、人材不足を解消し△△を実現する
- 日本が抱える、〇〇課題を△△の力を使って解決する
事業の優位性
転職はリスクも伴うため、候補者の不安を払拭する必要があります。
特に、BtoBの場合、社名や事業を知られていないケースも多いので、事業に優位性があるかは重要なポイントです。
(例)
- 業界/市場においてリーディングカンパニーである(業界No.1である、など)
- 競合他社が少ない/参入障壁が高い
- 世の中へ与える影響力が大きい
将来性
事業の優位性と似ていますが、事業の将来性、将来への期待を訴求しましょう。特にベンチャー・スタートアップなど、まだ実績が少ない会社の場合、「将来性」は候補者が気にするポイントです。
(例)
- 売上高/利益が毎年純増している。xx%増で成長している
- 市場規模が大きい(数十兆円規模、今後さらにニーズが見込まれる、など)
- 法律改正、国が推進している施策など、優位性がある
業務内容
採用ターゲットの目線になり、募集ポストの業務内容にどのような魅力があるかを整理しましょう。
(例)
- キャリアアップにつながる。市場価値を高められる
- 現職では挑戦できない業務を経験できる
- これまでの経験を活かせる
ポジション
1人目ポジションや役職(役員、責任者、リーダー、など)など、が訴求ポイントです。
(例)
- 1人目マーケターとして、マーケティング機能の立ち上げができる
- CMO候補として、将来的に役員を目指せる
裁量
決定権がある、予算が持てる、タスク・スケジュール管理は個人に委ねられている、など大きな裁量があるのは訴求すべきポイントです。
(例)
- 年間〇千万円のマーケティング予算を確保しています
- マーケティング機能のミッションや目標の設定はお任せします
働き方
働き方の魅力を整理する際は、既存メンバーへのヒアリングが有効です。
(例)
- フルリモートワーク勤務、リモート勤務ができる
- フルフレックス勤務ができる
- 柔軟に稼働できる(週4日勤務、時短勤務、など)
- 産休/育休の取得率、復帰率が高い
- 正社員以外の雇用形態も選択可能(業務委託、インターン、など)
福利厚生
特徴的な福利厚生があれば、スカウト文に記載しましょう。
基本的な福利厚生は、求人票に記載しましょう。
(例)
- 各種手当(リモートワーク手当て、学習に利用できる手当、など)
- 資格取得にかかる費用は会社が負担
- 子育ての支援制度(企業提携の保育園がある、など)
- 独自の休暇制度
仲間
優秀な人と働きたいのか、未経験でも安心して働けるのかなど、採用ターゲットによって訴求の仕方は変わります。
(例)
- 一緒に働く社員がハイスキルである(CMOがxxさん、元〇〇出身者の先輩社員がいる、など)
- 年代比(若手からベテランまで活躍している環境、など)
- 未経験で入社したメンバーはxx%
社風
社風を整理する上でも、既存メンバーへのヒアリングが有効です。才流では、全社員に対し、才流らしさを感じるシーン、をヒアリングし社風を整理しました。
(例)
- 社内イベントなど、社員同士の交流がある
- ボトムアップ(社員の意見が反映される)の文化がある
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が浸透していて、仕事に対する社員の意識が高い
また才流では、BtoBマーケティング支援でも使用している、カテゴリーエントリーポイントの考え方を採用にも活用しています。
カテゴリーエントリーポイントとは、何かを購入しようと思った時にブランドを想起するきっかけやヒントを整理したもの。才流ではこれをもとに、求人票、スカウト文を作成しています。
カテゴリーエントリーポイントの作成方法は以下の通りです。
- 全メンバーに入社した理由、働いていて魅力だと感じたポイントをヒアリング
- ヒアリング内容を整理して、初稿を作成
- カジュアル面談などで、採用ターゲットの方に初稿を見ていただき反応を見る
現状整理したポイントは、採用ターゲットの方に響いている実感があり、採用サイトや会社概要説明資料を作成する上での土台にもなっています。
まだ訴求すべき自社の魅力が整理できていない場合、カテゴリーエントリーポイントを作成してみてはいかがでしょうか。
Q3.専任の採用担当がいない場合、どのように採用を進めればいいですか?
専任担当がいない場合、懸念点は「採用活動におけるノウハウ不足」や「業務を担うリソース不足」などが考えられます。これらの課題解決には、RPO(Recruiting Process Outsourcing)といった外部の専門企業に採用プロセスの一部を委託することをオススメします。
日本では人事業務を外部へ委託することに抵抗を感じるという声も聞かれますが、外資系企業やベンチャー・スタートアップ企業においては、以前から一般的な手段として活用されています。
採用業務をRPO事業者に委託する際は、委託する業務を明確にしておきましょう。
採用業務は、採用戦略の立案・母集団形成・応募者対応・面接日程調整と多岐にわたります。一部の業務を任せたいのか、一連の業務を任せたいのかによって、選定するRPO業者は変わります。
才流の組織拡大期には一連の採用業務を委託できる、株式会社キャスターのRPOサービスCASTER BIZ recruitingを活用しました。
Q4.ダイレクトリクルーティングのスカウト文は、送付する人に合わせカスタマイズをしたほうがいいですか?
明確な正解はないと思いますが、当社では試行錯誤の結果、固定のスカウト文を送付しています。
理由は、求職者の多くは内容よりも、「どの企業の誰からスカウトが来たか」を重視しているからです。代表や役員など権限を持った人からのスカウトであることが重要であり、本文の内容は返信率に大きく影響していません。
ただし、スカウト文の名義には注意も必要です。
スカウト文の名義は代表名になっているが、実態は採用担当者しか採用活動に関与していないというパターンをよく見かけます。現実的に、代表の方がすべてのスカウトを送信するのは難しいかもしれませんが、候補者の体験的には良くないでしょう。
当社では、実際にスカウトを送信している採用責任者の名義でスカウト文を送っています。
代表も候補者の情報を事前にチェックしている場合は、「弊社代表と一緒に、△△様のご経験を拝見しました。弊社でご活躍頂けるのではと思い、お声がけさせていただきます」などの一文を入れるとよいでしょう。
また、ダイレクトリクルーティングはタイミングが重要です。転職意欲が低い人はそもそもスカウト文を開かない、しっかりと読まないため稼働対効果が悪いと考えています。
以上の理由から、スカウト文の内容はシンプルで、興味をもっていただけるものであればよいと考え、スカウトを送付する対象者の選定に工数を割いています。
ただし、あくまで当社の結果なので、もしリソースに余裕があるなら職務経歴書などの情報を見て、個別の文章を作成してもいいかと思います。
Q5.優秀なマーケターを見極める方法はありますか?
優秀なBtoBマーケターを定義するならば、BtoBマーケティングのノウハウや経験に加え、自社の商品・サービスを利用する顧客への深い理解がある人だと考えています。
BtoBマーケティングのノウハウや経験をどこまで求めるかは状況によって異なりますが、前提として戦略立案から施策の実行までできる、オンライン・オフラインすべての施策に精通している方はほとんどいません。
そのため、顧客理解の重要性を理解し、これまでどのような工夫をしてきたかがポイントだと考えています。
商談に同席していた、見込み顧客や既存顧客にインタビューをした、定期的に営業や事業責任者にヒアリングしていたなど、具体的に何をしていたかを確認するといいでしょう。
Q6.マーケティングの業務を、副業やフリーランスの方に業務委託でお願いできますか?
可能です。ですが、業務委託の場合、どうしても限られた稼働の中で業務をお願いすることになるので、その点は注意が必要です。
例えば、戦略立案から施策の実行まで、主導して実施いただくのは難しいかと思います。マーケティング戦略や実施すべき施策が明確で、お願いしたい業務が明確な場合であれば、業務委託も選択肢になるでしょう。
「BtoBマーケター採用スタートガイド~フローチャートで自社に合ったターゲットがわかる~」の記事で解説していますが、
- マーケティング経験者(メンバークラス、BtoCマーケティング経験者も含む)
- BtoB営業経験者(マーケティング未経験者可)
のパターンであれば、採用・社内異動・業務委託で検討してもよいかと思います。
まとめ
BtoBマーケターの採用市場におけるニーズは高く、採用難易度はあがっています。「優秀でなんでもできる人」とひとくくりに考えるよりも、自社の状況に合った採用要件を定義するほうが効率的です。採用で成果を出すために、ターゲットに沿った採用活動を進めましょう。
採用活動を進めるうえで、以下の記事もご活用ください。
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