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新規事業における商談を通じた仮説検証メソッド/進め方【テンプレート付き】

新規事業開発
コンサルタント
野田 拓志

本記事では、新規事業のコンセプトができあがった段階で、商談を通じて仮説検証を行う手順を解説します。2つのテンプレートも用意しましたので、ご活用ください。

①商談検証で使えるテンプレート

商談を通じた仮説検証テンプレートをダウンロードする(Excel形式)

※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとダウンロードされます

②商談サマリのスライドテンプレート

商談サマリのスライドテンプレート(ppt形式)

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商談を通じた仮説検証の目的

新規事業のコンセプト(仮説)ができあがった段階で顧客と商談を行い、コンセプトの検証を行うことを「商談を通じた仮説検証」と呼びます。顧客インタビューとは違い、実際に価格や導入プランを提示して、顧客が本当に導入するかどうかを確認することで、仮説の正当性や改善点を把握することが目的です。

この段階では、商品・サービスの価値はまだまだ磨ききれていない状態です。まずは購買にあたり「マイナス」と感じること、つまり「売れない理由」を特定することにフォーカスしましょう。開発前にマイナスをゼロにしておくことで、無駄な予算や時間、リソースをかけてしまうリスクを回避できます。

ヒント
よく、「商品開発の前に、商談を行って大丈夫でしょうか?」と質問されることがあります。才流としては、顧客に現在の開発フェーズや今後の見込みをしっかり共有すれば問題ないと考えています。才流が支援した企業でも、商品がまだない状態で商談し、実際に受注するケースもありました。商談で興味を持ってくれた顧客には、β版の無料モニターになってもらったり、割引価格でPoCに協力をしてもらったり、本格リリースを見据えて関係を築いていきましょう。

商談を通じた仮説検証に重要な4つの観点

商談を通じた仮説検証は、基本的に以下の4つの観点でおこないます。

1.顧客の属性

  • この事業案は、どのような課題を持った誰に売れるのか
  • 顧客はどのように情報収集を行い、比較検討をするのか
  • どのような訴求メッセージだと反応がいいか
  • どのチャネルであれば顕在層にリーチでき、ホットリードを獲得できるか

2.顧客の課題

  • 顧客は具体的にどのような課題やニーズを持っているか
  • 顧客はお金を払ってでもその課題を解決したいか

3.ソリューション(課題の解決策となる商品・サービス)

  • 顧客に求められている機能・効能は何か
  • 顧客に求められていない機能・効能は何か

4.価格

  • どのくらいの価格であれば購買に至るのか
  • LTV最大化が見込める価格はどのくらいか

才流で作成した「商談を通じた仮説検証テンプレート」の項目も、上記の観点をふまえた設計になっています。

商談を通じた仮説検証テンプレートをダウンロードする(Excel形式)

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商談を通じた仮説検証の手順

商談を通じた仮説検証は、準備・商談・振り返り・検証と改善を1セットとしておこないます。

  • 01 準備

    まず、仮説をもとに集客を行い、商談を設定します。コンセプト段階でも営業資料を用意し、通常の商談と同じように進めます。

    営業資料は、チームで同じものを使用しましょう。人によってクオリティや内容にばらつきがあると正しい検証がしにくいためです。

    体制は2名で行うことを推奨しています。理由は1名だと顧客への応対にいっぱいいっぱいになってしまい、顧客の小さな機微を見逃す可能性があるためです。立ち会うもう一人が第三者として客観的に商談を見たり、聞き漏らしなどがあった際にサポートがしたりすることで、より良い商談を実施できます。

    商談前に、「商談を通じた仮説検証のテンプレート」の顧客の基本情報や流入経路を記入しておきましょう。

    上から2行は書き方の例です

    また、検証の際に使用する評価基準も作成しておきます。前述した4つの観点に沿って作成するとよいでしょう。以下の例は、同テンプレートの2シート目にありますので、カスタマイズしてご使用ください。

    初期は2か月ほど集中して行い、週に1回の振り返り会を開催するスケジュールを組みます。顧客の声を常にアップデートするため、慣れてきても継続的に実施するとよいでしょう。商談が月に10件以上になったら、事業フェーズが進んでいると考えられるため、月に1回ほどに減らしてもかまいません。

    ヒント
    「ターゲット課題」に関しては、「お金を払ってくれる」「予算を用意している」という観点で評価条件を設定することを推奨しています。ニーズがあるかどうかは、営業担当の判断に影響を受けてしまいがちです。顧客から明確に「お金を払う」という言葉を聞き出せるかどうか、緊急性が高いかどうかで判断しましょう。
  • 02 商談

    商談の流れは、基本的には既存事業の商談と同じです。顧客の課題や希望の要件、欲しいソリューション、予算、受注失注の決め手などを把握します。

    既存事業の商談と違う点は、ネクストアクションです。この段階ではまだ商品・サービスがないため、ネクストアクションとして、β版でのモニターやPoCへの協力などを打診しましょう。

    「商談を通じた仮説検証のテンプレート」の商談時メモ(顧客からのQA、刺さっていたポイント、ネクストアクション)、受注・失注理由は、商談時または商談直後に記入します。

    なお、商談時は顧客に許可をとったうえで、録画または録音をしておくと振り返る際に役立ちます。

  • 03 商談の振り返り

    商談の振り返りを、初期は週に1回程度設定します。新規事業開発にあたるメンバー全員で行うと、顧客に対する解像度が上がるのでおすすめです。

    振り返り会で議論した内容は、「商談を通じた仮説検証テンプレート」に追加で書き込みましょう。

    また、次の「商談サマリのスライドテンプレート」は個社の振り返りに便利です。顧客属性、顧客課題、自社ソリューションの貢献可能性、営業の質の項目があります。商談のサマリと、準備で設定した評価基準(◎〇△×)を書き込みます。あわせてご活用ください。

    営業の質を客観的に判断できない場合は、同席していた人に評価してもらいましょう。

    商談サマリのスライドテンプレート

    商談サマリのスライドテンプレート(ppt形式)

    ※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとダウンロードされます

  • 04 仮説の改善

    仮説の改善のために、次のフローチャートに沿って打ち手を確認してください。

    1.商談前、顧客はターゲット仮説どおりの属性が集まっているか?

    商品・サービスのコンセプトを作る際に、「誰の何の課題を解決するか」はすでに検討済みのはずです。しかし商談前の集客で、仮説どおりの顧客が集まっていない場合は、今集客しているチャネルに顧客がいない、訴求メッセージが刺さっていない可能性があります。改善を行いましょう。

    業界・業種によっては、Webサイトやオンラインイベントなどで集客ができないこともあります。テレアポやFAX DMなど、オフラインの施策での集客も検討しましょう。

    2.商談時、顧客課題の仮説は概ね正しかったか?

    商談前にターゲットだと判断した顧客でも、商談の場で、顧客から次のような発言が出てきた場合には、ターゲットの再検証が必要です。

    顧客の発言例

    • 「うちの規模だと必要性を感じないですね」
    • 「今やっている業務内容とは少し違うので」
    • 「うちはその領域は別の部署が担当しています」
    • 「そもそも予算をまったく考えていなかった」

    興味を持ってもらえたとしても、お金を払ってまで解決したい課題がない状態です。一度ターゲット選定に立ち戻り、仮説を立て直しましょう。

    3.ソリューション(解決策となる商品・サービス)の課題解決へ貢献可能性はあるか?

    顧客から次のような発言がある場合は、自社の商品・サービスが顧客課題解決への貢献可能性がないと判断します。

    顧客の発言例

    • 「この機能があればいいのに
    • 「どうしても期待していた部分が無いので、導入は難しいですね」
    • 「競合サービスの方が、うちの課題には合っている」

    ターゲットや営業の問題ではなく、そもそも現在の商品・サービスの仕様が市場から求められていない、あるいは競合優位性に欠けるなどの理由が考えられます。

    機能やサービスの改善が必要な場合は、いったんコンセプト設計前のフェーズに立ち戻り、課題探索インタビューをすることをおすすめします。顧客のリアルな実態を把握し、真の課題を理解することで、このようなミスマッチを防げます。

    4.価格は適正か?

    顧客が価値を感じている商品・サービスでも、BtoBの場合は社内の予算や稟議の兼ね合いで、受注できないことも多々あります。価格が高すぎて敬遠されているようであれば、ライトプランやトライアルプランを設けるなど、導入ハードルを下げる施策も検討しましょう。

    また、そもそも商談で価値をうまく伝えられていない、訴求があっていない、営業資料がわかりにくいなどの問題がないかは常にブラッシュアップが必要です。

    顧客から次のような発言がある場合は、顧客が商品・サービスの本質的なメリットや導入効果を十分に理解できていない、もしくは最後の一押しが弱い可能性があります。商談内容の確認を行いましょう。

    顧客の発言例

    • 「良さそうだけど、具体的にどう導入すればいいかイメージできなくて
    • 「メリットはわかりますが、他社と何が違うんですか?」
    • 「導入する意義は感じるんですが、あまりピンときていなくて
    • 「もう少し検討したいので、また連絡します」(その後連絡なし)

    クロージングに課題がありそうな場合は、「導入を決断するためのハードルは何ですか?」と質問し、顧客の懸念点や稟議プロセスを明確にして一緒に解決する姿勢を示しましょう

  • FAQ(よくある質問)

    Q1.商談を通じた仮説検証は、いつ行うものでしょうか?

    新規事業のコンセプトができあがった段階で実施するのがよいでしょう。フィットジャーニーでいう、PSF(プロブレムソリューションフィット/Problem Solution Fit)とSPF(ソリューションプロダクトフィット/Solution Product Fit)の間のフェーズです。

    また、「すでに商品・サービスをリリースしているのに思うように売れない」というケースでも、商談を通じた仮説検証を行うことで、適切な軌道修正が可能です。

    ※関連記事:フィットジャーニー

    Q2.商談は誰が行えばよいでしょうか?

    基本的には、新規事業開発のチームメンバーがおこないます。開発している事業やターゲット、ターゲット課題について解像度が高いメンバーがよいでしょう。できれば実際の商談経験がある方だと望ましいです。

    Q3.仮説とは、どのようなことを指していますか?

    商談における仮説検証の「仮説」とは、新規事業のコンセプトに基づいて立てた、事業成功のための主要な前提条件や前提となる考え方を指します。具体的には、以下のような要素が含まれます。

    • ターゲット顧客の仮説:どの業界や企業規模、部署、役職の人々が自社の新商品・サービスを必要としているのかという前提
    • 課題の仮説:ターゲット顧客が抱える具体的な課題やニーズが何であるか、そしてその課題がどれほど深刻かという前提
    • 提供価値(ソリューション)の仮説:自社の提案する商品・サービスが、その課題をどのように解決できるのか、競合他社に対してどのような優位性を持つのかという前提
    • 価格設定の仮説:顧客がどの価格帯であれば導入を検討し、最終的に購買に至るかという前提
    • 営業プロセスやクロージングの仮説:商談の中で、どのような説明や提案が顧客に響き、購買決定に結びつくかという前提

    これらの仮説は、単なる思い込みではなく、具体的な市場調査や過去のデータ、顧客インタビュー、そして実際の商談を通じて検証・修正されるべき前提となります。商談を通じた仮説検証は、実際に顧客と本気で向き合うことで、これらの仮説が現実の市場で通用するかどうかを明確にするためのプロセスです。

    仮説を立てる際は、以下の記事も参考にしてください。

    ※関連記事

    新規事業における課題探索インタビューのメソッド/進め方

    競合分析テンプレート‐BtoB企業向けにまとめ方やツール、分析の観点を解説

    バリュープロポジションとは?作り方と事例~テンプレート付きで解説~

    Q4.「検証結果が恣意的ではないか、ファクトに基づいているか」をどのように判断したらよいでしょうか?

    検証結果が恣意的な判断に偏るのではないかと不安な場合、商談映像のハイライトを関係者全員で確認することで、その不安を払拭できます。商談の録画を実施する際は、事前に「社内での振り返り用に記録をさせていただいてよろしいでしょうか?」と顧客に一言伝え、必ず同意を得た上で行いましょう。

    受注や失注の理由を記載する際には、最低でも2名以上で記録を作成することで、判断が特定の個人の主観に左右されないようにできます。

    Q5. 同一の仮説で何件くらい商談や集客を繰り返すのが良いでしょうか?

    適切な検証を行える件数の目安は、以下のとおりです。

    • ターゲット属性の検証:30件程度の集客(リード獲得)
    • ターゲット課題やソリューション、価格の検証:10件程度の商談

    Q6.商談でのクロージングは、具体的にどのように行えばいいでしょうか?

    理想は有償契約でのクロージングですが、すぐに有償契約にできない場合は、無料モニターなども1つの方法です。

      例1:PoC(Proof of Concept:概念実証)を割引したうえで有償で提供することに同意いただく場合

    「商品やサービスはまだ作成の途中になりますが、PoCを一緒に取り組んでいただけませんでしょうか。本来の価格よりも割引をさせていただきますし、貴社のご要望を多く取り入れた商品やサービスになりますので、オーダーメイドに近い商品・サービスとなります」

    例2:正規料金から大幅割引(80%割引etc.)で導入モニターになることを同意いただく場合

    「商品やサービスはまだ作成の途中になりますが、β版ができあがった際には80%割引でご提供させていただきますので、導入モニター企業になっていただけませんでしょうか」

    例3:β版無料モニター&事例公開の同意をいただく場合

    「商品やサービスはまだ作成の途中になりますが、β版ができあがった際には無料導入モニター企業になっていただけませんでしょうか。無料でご提供するという代わりとして、導入事例の取材に関しては本リリースになった際にはご協力をお願いいたします」

    記事のまとめ

    商談検証は、リアルな顧客の意思決定を明らかにし、売れない理由を把握したうえで改善を重ねるために重要なプロセスです。

    コンセプトや提案資料がある程度固まった段階で数件の商談を試すことで、ターゲットや価格設定のズレ、営業スキルの問題やプロダクトそのもののミスマッチなど、さまざまな課題が早期に可視化されます。継続的に振り返りや改善を繰り返すことで、顧客が「お金を払ってでも欲しい」と感じる商品・サービスに近づけることができるでしょう。

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