才流(サイル)で営業組織をご支援していると、「営業に必要なスキルはなにか」「どのように身につけるのか」という質問をいただくことがあります。
営業スキルをどう向上させるかという課題は、多くの企業にとって大きな関心事。売上や顧客満足度の向上、新規顧客の獲得数などは、個々の営業パーソンのスキルの度合いによって左右されやすいからです。
しかし、営業に必要なスキルを網羅・定義して、実際の育成に活用するとなると準備が大変です。そこで才流では、どのような営業組織でも自社に合わせてアレンジして使えるスキルチェックシートを作成しました。本記事ではチェックシートの活用方法を詳しく解説します。
「営業スキルの棚卸ができていない」「育成計画の立案が進まない」「指導が感覚的になりがち」という営業マネージャー、営業推進担当者はぜひお読みいただき、営業スキルの向上にお役立てください。
【営業版】スキルチェックシート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
才流では「営業スキルの向上に取り組みたい」「営業活動を最適化したい」企業さまをご支援しています。フィールドセールスでお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
営業のスキル不足が企業のビジネスに与える影響
個々の営業パーソンのスキルが高ければ、当然ビジネス面でよい成果につながりやすくなります。反対に、営業パーソンのスキルが不足していると、企業の成長や業績に以下のような影響を及ぼすことが多いようです。
売り上げの低下
営業スキルが不足していると、商品・サービスの価値を十分に伝え、顧客のニーズに対応する能力が低くなります。これは売上の低下につながり、企業の収益性に影響を及ぼします。
顧客満足度の低下
顧客の要望を理解し、適切な解決策を提供するには高い営業スキルが必要です。スキルが不足していると、顧客満足度が低下し、長期的な信頼関係の構築が難しくなります。
新規顧客獲得の困難
優れた営業スキルは、新規のビジネスチャンスを切り開くための重要な武器となります。営業スキルが不足していると商品・サービスの価値を十分に顧客に届けられず、競合他社との争いの中で新規顧客を獲得するのが難しくなります。
このように、営業のスキル不足は企業の成長を妨げる直接的な要因になり得ます。そのため、企業は営業スキルの向上に取り組む必要があるのです。
営業パーソンに必要なスキルとは
営業パーソンに必要なスキルには、業界や商品・サービスに紐づくような個別のスキルと、ポータブルスキルと呼ばれるような職種や業種を問わない汎用的なスキルがあります。また、マーケティングや開発などの他部署とディスカッションするための知見、また財務や会計の知識が必要な場合もあるでしょう。
業界や商品・サービスに紐づく個別のスキル
業界や顧客に対する知識、自社・競合の状況の理解、商品・サービスに対する知識など活用場所を限定したスキルのこと。
職種や業種を問わない汎用的なスキル
仕事に対する意識や協調性などのマインドに関するスキル、あるいは思考力や自己管理能力といった汎用的なスキルのこと。
【営業版】スキルチェックシートのダウンロード
営業のスキルを向上させるためには、現状のスキルを可視化して課題を洗い出す必要があります。しかし、営業に必要なスキルの分類は多岐にわたるため、多忙なマネージャーが一から定義・体系化していくのは至難の業です。そこで才流は、営業に必要なスキルを体系化した営業スキルチェックシートを作成しました。
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営業スキルチェックシートの活用シーンと得られる効果
まずは、どのような場面でチェックシートを活用すればいいのか、チェックシートでどのような効果が得られるのかを説明します。
チェックシートの活用シーン
チェックシートで営業パーソンのスキルを可視化することによって、以下のようなシーンでの活用が期待できます。
- 営業パーソンの課題抽出
- 施策の立案
- 評価基準の一環
- 営業戦略の変更
- 新プロジェクトの立ち上げ
ビジネス環境の変化が加速し、営業戦略の変更や新プロジェクトを発足するケースが以前よりも増えています。営業パーソンが新しい戦略を実行できるか、プロジェクトを成功させる条件を持っているかどうかを確認するのにチェックシートが役立つでしょう。
チェックシートの効果
チェックシートを活用することで得られる効果は以下のとおりです。
- 強みと弱みの可視化
- 営業成果の向上
- トレーニングの効果測定
- モチベーション向上
- キャリア形成
強みと弱みを可視化し、強化・改善していくことで営業活動の質が向上するでしょう。また施策の効果測定もできるようになります。
近年、人的資本経営が重要視されるようになっています。「企業として人材への投資を行っているか」「自分が大切にされているか」という観点で、社員を含むステークホルダーが企業を判断することも増えてきました。そのようなケースへの対策としても、チェックシートを使った教育政策が役立つでしょう。
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【解説】営業版スキルチェックシートの使い方と育成のステップ
ここからは、営業版スキルチェックシートを活用した人材育成のステップについて解説します。
チェックシートの作成
まずスキルチェックシート内の「評価シート」をコピーします。すべての項目を使用する必要はありません。62項目の中から“自社で必要なスキル”をピックアップして使用します。選ぶ項目は組織全体で統一させても、チームごとに変えてもいいでしょう。
なおスキルチェックシートは、全部で62項目を以下のように分類しています。
- 知識
- 業界知識
- 顧客知識
- 商品知識
- マーケティング知識
- マインド
- 仕事意識
- 着実性
- 協調
- 能力(スキル)
- 思考
- 自己管理
- 対人
- 業務遂行
- 商談スキル
チェックシート内には、参考として「新人のスキルチェック項目」シートを用意しました。全62スキルの中から半分の31スキルを集約しています。新人のスキルチェックを行う際の参考にしてください。
評価者の設定
次に、評価者を設定します。以下の3つの評価方法の中から、それぞれの目的やメリット・デメリットを踏まえて選択してください。
- ①マネージャーによる単独チェック
- ②マネージャーと個人によるチェック
- ③マネージャー・個人・メンバーによるチェック
①マネージャーによる単独チェック
マネージャー単独でチェックする方法です。評価対象者がチェック項目を把握していない状態で評価を実施します。目的とメリット・デメリットは以下のとおりです。
目的 | マネージャーが策定した育成計画にチーム全体で取り組む |
メリット | チーム全体の育成計画として提示することで、 メンバーに素直に受け入れてもらいやすい |
デメリット・リスク | 現場を理解していないマネージャーには正確な評価が難しい |
このチェック方法は、SFA(※)を十分活用していたり、同行営業や1on1を頻繁に実施していたりと、マネージャーが現場をよく理解しているケースで有効です。
※SFA:エスエフエー/Sales Force Automationの略。営業活動の記録、進捗状況、顧客情報などを管理するシステムのこと
※関連記事:SFAを有効活用・運用するためのチェックリスト
②マネージャーと個人によるチェック
マネージャーと評価対象である個人の2者で評価します。ディスカッションによって評価を統一し、合意形成を図る方法です。
目的 | 当事者間で議論して、納得できる育成計画を策定する |
メリット | 議論によって認識の統一を図れる |
デメリット・リスク | マネージャー側の意見が優先されやすい |
③マネージャー・個人・チームメンバーによるチェック
マネージャーと評価対象である個人のほかに、先輩、同僚、後輩などを含むチームメンバーと合同で評価する方法です。
目的 | 多角的な評価を取り入れた育成計画を策定する |
メリット | 個人の主観や評価の偏りが排除されやすい |
デメリット・リスク | 評価が分かれる可能性があり、合意形成までの労力がかかる |
評価者が決まったら、それぞれの項目で設定している評価基準に則って採点を行いましょう。
- 1点:営業として最低限クリアすべきレベル(新人)
- 2点:営業として一人前といえるレベル(若手)
- 3点:営業として目指すべきレベル(中堅以上)
評価者が押さえておくべきポイント
評価を営業スキルの向上につなげるためには、採点する側のスキルや意識も改善していく必要があります。以下の3つのポイントを押さえて評価を実施するように心がけましょう。
- ①採点の根拠を明確化
- ②採点者側のスキル向上
- ③採点者同士によるフィードバックと改善
①採点の根拠を明確化
採点者は思い込みやバイアスによって評価に主観が介入しがちです。「なぜこの点数をつけたか」と根拠を聞かれたときに回答できるよう、採点の根拠を明確にしておきましょう。
②採点者側のスキル向上
採点にも基礎的な考え方やスキルが存在します。個人任せの採点は、評価者によるブレや一貫性の欠如を引き起こすかもしれません。組織として採点者側のトレーニングを実施し、採点スキルを向上させましょう。
③採点者同士によるフィードバックと改善
②に近いですが、採点者同士でフィードバックを実施し、採点内容に間違いがないか、一貫性があるかを確認しましょう。場合によっては評価基準の見直しも行います。また、フィードバックやディスカッションは、採点者同士の認識合わせにも寄与します。
定期的なスキルチェックの実施
個々の営業パーソンに対して、スキルチェックを半年ごとに実施します。ただし、研修や教育を頻繁に行う育成段階の新人や若手に対しては、3か月ごとにチェックを行うなどペースを早めてPDCAを高速で回すことも有効です。
スキルチェックの際は、レーダーチャートを用いることをおすすめします。視認性が向上し、時系列で計測することで成長プロセスの可視化も可能です。
チェック実施後に行う3つのトレーニング
スキルチェックを実施したら、「弱点の克服」「強みの強化」「総合力の獲得」のための3つのトレーニングを実施します。3つすべてに取り組むことが難しければ、優先順位をつけてできるところから始めましょう。
弱点の克服:メンバー間で比較し、足りないスキルをトレーニング
まず個人のスキルを他のメンバーと比較して、足りていないスキルを特定します。不足しているスキルがあった場合、それを強化していきましょう。
ここで大切なのは、「そのスキルを改善することで業績にインパクトがあるか」という視点で不足スキルを特定すること。そのスキルが営業活動上どの程度貢献しているか、振り返りながら取り組みましょう。
強みの強化:強みをさらに伸ばすトレーニング
個人のスキルを分析し、どこに強みがあるかを特定します。そして、その強みをさらに伸ばしていくためにトレーニングを行いましょう。
優秀な営業パーソンがそれぞれの強みをさらに強化することは、個人だけでなく企業にとっても大きな価値を生み出します。売上や競争力の向上といった直接的な好影響だけではなく、チームの士気が高まる、ロールモデルを確立できるなど組織にも良い影響をもたらすからです。専門性を磨き、組織内で一目置かれるような模範となる営業パーソンを育成しましょう。
総合力の獲得:個人として不足しているスキルをトレーニング
個人のスキルの中で、とくに不足しているスキルを特定してトレーニングを行います。
営業活動は細かなプロセスの集合体です。継続して安定した業績を残すためには、スキルに穴がない状態を目指す必要があります。足りない部分を磨くことで、スキル全体の底上げを図りましょう。
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営業マネージャーが知っておくべき人材育成のポイント
最後に、マネージャーが人材育成に取り組む際に押さえておきたいポイントを、「組織による取り組み」「部下へのフィードバック」の2つの観点から解説します。
組織としての取り組み方
営業スキルの向上は組織全体で取り組むべき課題です。知識や経験を全体で共有することで組織としての学習効果が高まり、競争力の強化にもつながるでしょう。
ここではナレッジマネジメントのフレームワーク「SECIモデル」を用いて、組織で取り組む営業スキルの向上について解説します。
- Socialization(共同化)
営業パーソン同士が経験を共有し、暗黙知を人から人へ移転させます。たとえば、経験豊富な営業パーソンが新人と同行営業を行い、具体的な交渉の様子を見せるなどです。
- Externalization(表出化)
個人の暗黙知を言語化し、他のメンバーと共有します。たとえば、営業パーソンが自分の経験や洞察を文章や図表、プレゼンテーションなどの形式に落とし込み、ワークショップや共有会で発表するなどです。
- Combination(連結化)
言語化された異なる知識を組み合わせ、新しい知識を創造します。たとえば、すべての営業メンバーからの情報を集めて、営業手法のベストプラクティスをまとめたハンドブックを作成したり、営業の型化を行うなどです。
- Internalization(内面化)
最後に、連結化された知識を学習することで、自身のスキルとして習得します。たとえば、営業メンバーが新たに学習した知識を使ってロープレや同行営業に取り組むことで、その知識を自分のものとするなどです。
以上の4つのプロセスを循環させることで知識の創造と共有が進み、組織全体の学習と成長を促すことができるでしょう。
部下へのフィードバックの方法
スキルチェックの結果をもとに、部下にフィードバックを行う際のポイントを紹介します。
マネージャーは事前にシートをチェックし、必要なフィードバックを準備しておきましょう。その場の思いつきでは正確なフィードバックはできないからです。
フィードバックは以下の手順で進めてみてください。
- 目的の共有
スキルチェックの目的は「改善」であり、指摘の場ではないことを改めて説明します。
- 傾聴
部下の意見を優先して聞くのがポイントです。まずは自身に対する評価とその根拠を話してもらいます。思い込みを排除するためにも具体的な事例を述べてもらうとよいでしょう。
- フィードバック
マネージャーは部下の意見を否定せず、ポジティブな言葉を使用して肯定するのがポイントです。チェックシートの定義を再確認し、部下と視座を統一したうえでフィードバックを伝え、本当に達成できているかを改めてヒアリングしましょう。
- 再採点
フィードバックの結果を踏まえ、必要あらば部下と合意形成のうえでチェックシートの点数を修正します。
- 改善
課題を洗い出したら、実際の営業活動に置き換えて具体的な状況と改善案を部下自身に言語化してもらいます。次回その場面に直面した際に、どのような行動を取るべきかを明確にするのが目的です。課題をクリアする基準は、改善案を実行できたかどうかであることを部下と擦り合わせておきましょう。
まとめ
本記事では、営業パーソンのスキル強化に使えるチェックシートを紹介しました。チェックシート活用のポイントは以下のとおりです。
- チェック項目と評価基準を自社向けにアレンジして使用する
- 組織の状況に合わせて適切な評価者を設定する
- 定期的にスキルチェックとトレーニングを行う
営業スキルの向上は、組織全体で取り組むことでより高い成果が期待できます。ぜひ営業版チェックシートを貴社の人材育成にお役立てください。
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