当社ではこれまで、顧客へのコンサルティングやPMFを経験したBtoB企業への取材から知見を集約し、PMF達成に必要なプロセスや取り組みの解明を進めてきました。そしてこのたび、知見や仮説を定量的に明らかにするため、「PMFの実態調査」を実施。結果をまとめました。
調査は、2023年4月にインターネットのアンケート方式で行い、BtoB領域でビジネスのグロースにかかわる人134名(PMF経験者42名、PMF未経験者92名)に回答いただきました。
これからPMF達成を目指す人、新規事業が軌道に乗らず課題を抱えている人は、本調査の結果を参考にしていただければ幸いです。
PMFとは、Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット)の略で、顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客が多くいる市場)にいる状態です。
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調査概要
調査目的 | 企業/ビジネスパーソンのPMF経験をたずねるアンケート調査から、PMFの 達成要因と未達要因を分析し、国内における取り組みの実態や推進するための ヒントを考察する |
調査対象 | BtoB領域でビジネス成長にかかわった経験がある20歳以上の経営者・ 会社員の男女 |
有効回答数 | 134件 |
調査期間 | 2023年4月1日~4月30日 |
調査方法 | Webアンケート調査 ※データは小数点第2位を四捨五入しているため、合計しても100%になら ない場合があります |
調査企画・実施 | 株式会社才流 |
PMFを達成した経験がある人は3割
全134名の回答者にPMF経験の有無を聞いたところ、31.3%がPMFの経験あり、68.7%がPMFの経験なしという結果でした。「PMFの経験なし」と回答した人の中には、「PMFのことをよく理解できていない」というフリーコメントも見られ、PMFの概念自体がまだまだ広がっていないことがうかがえます。
PMFを達成するまでに要した期間は、3年未満が9割以上
PMFの経験ありと回答した人に、サービスのリリースから最初のPMFまでの期間について聞きました。もっとも多かったのは「2年以上~3年未満」で28.2%、次いで「半年未満」「1年以上~2年未満」が同率の23.1%でした。全体の9割以上が3年未満と回答しており、PMF達成までの期間は3年がひとつのターニングポイントになるといえます。
PMFを達成したときのチーム人数は5名以上~10名未満が最多
PMFの経験ありと回答した人に、PMFを達成したときのチーム人数を聞いたところ、5名以上~10名未満が最多の35.7%となりました。
一方、PMFの経験なしと回答した人には、PMFできないと判断した当時のチーム人数を聞きました。「PMFの経験あり」のグループと比較すると、あきらかにチーム人数が少ないことがわかります。ビジネス規模にもよりますが、PMF達成にはある程度の人的リソースが必要だといえます。
PMFのシグナルは「顧客からの問い合わせが急増する」
PMFの経験ありと回答した人に「何をもって、PMFをしたと感じたか」を聞いたところ、「顧客からの問い合わせが急増する」「事業の成長に採用が追いつかない」「低い金額で問い合わせや受注が獲得できるようになる」が上位でした。
また、PMFを計測するために使っている指標を聞いたところ、売上が28.4%、利益が19.4%。顧客からの問い合わせでPMFを実感し、売上や利益など、見える数字で確認する人が多いようです。
何をもってPMFを達成したと感じたか?(フリーコメントより紹介)
- 広告費を1円も使わなくても、毎月100件以上の問い合わせがくる
- 需要に採用や開発がまったく間に合わなかった
- チャーンレートが落ち着いた
- 顧客のアンケートが圧倒的に感謝の言葉で溢れている
- 三分の一ほどのCAC(※)で顧客が獲得できるようになった
※CAC:シーエーシー/Customer Acquisition Costの略。顧客獲得のためにかかるコストのこと。
PMFにもっとも貢献した行動は「顧客視点での訴求見直し」
PMFの経験ありと回答した人に、PMFを達成するまでに行った取り組みを聞いたところ、「商品・サービスの機能を改善した」「顧客に受け入れられるコンセプトやメッセージを生み出した」が上位でした。
なかでも、PMF達成のためにもっとも貢献した(価値があった)取り組みを聞いたところ、「顧客に受け入れられるメッセージを生み出した」が最多となりました。このことから、PMF達成には、顧客視点で商品・サービスを見直す行動が必要であることがわかります。
一方、PMFの経験なしと回答した人には、PMF達成に向けて取り組めばよかったと思うことを聞きました。結果、競合調査や仮説検証をおさえて、「顧客や見込み顧客の声を収集すればよかった」という人が最多でした。ここでも、顧客の声を聞くことの重要性がうかがえます。
またPMFの経験なしと回答した人からは、PMFを達成できなかった要因として、以下のようなコメントがありました。
PMFを達成できなかった要因(フリーコメントより紹介)
- 本来製品を磨くべきフェーズで早急に販売拡大を急いでしまい、ビジネスサイドが拡大してしまった。拡大した組織(コスト)を正当化する必要がでてくるが、製品が追い付いていない以上、無理な売り方をする必要があるし、顧客の意見をじっくり聞いて開発チームにフィードバックする仕組みも回らない(そこが評価対象にならない)
- 初期仮説でメインとしていたターゲットが市場にいなかった
- マーケ担当がおらず、営業1名、設計開発4名しか人的資源がさけなかった
- 顧客視点が不十分であり、ユーザーフィードバックを無視したまま開発をすすめたため、端的に「役に立たない」プロダクトになってしまった。その後の改修に多くの時間を使った
PMF後は、売上・リード・商談が増え、組織は拡大する
PMFの経験ありと回答した人に、PMF後の変化について聞きました。PMF達成後の変化としてもっとも多かったのは「売上が上がった」21.6%でした。また、フリーコメントからもわかるように、需要に対応するため採用を強化したり、組織体制を変更したりすることも多いようです。
PMF後の変化は具体的にどのような状況なのか?(フリーコメントより紹介)
- 営利が増えたことにより間接部門の採用につながった
- 既存顧客からM&Aの打診が発生した
- 拡大に向けての議論や機能の拡充、課題の整理など前向きな議論ができるようになった
- コンセプトキーワードと自社の結びつきが生まれ、コンセプトありきの導入検討をしていただけるようになり、導入後のオンボーディング〜成果創出のプロセスに一つの型が生まれた
- メディアでの取材、セミナー登壇依頼が殺到した
- 資金調達のハードルが下がった(実力以上のバリュエーションが付くようになった)
- 採用応募者が月間数十名から数百名に増えた
- セールス・マーケ予算を大幅に増やした
- 商談の成功率が格段にアップしたので、限られたリソースをCSに重点的に振り分けるようにした
売上や利益などの定量的な変化はもちろんのこと、組織におけるさまざまな好循環がうかがえます。
有識者のコメント
DNX Ventures Investment Vice President 田中 佑馬氏
Product Market Fit (PMF) の概念は、長らくスタートアップ業界では新プロダクト成功の必須条件とされており、すべての新興企業が突破しなければならない第一関門です。一方で、PMFに到達したことを測る明確で単一的な指標は存在せず、「PMFに到達したら感覚的にわかるもの」という曖昧な解釈に留まっています。
今回の実態調査は、PMFに到達したと実感した経験を持つ方へのヒアリングを通して、曖昧模糊なPMFという概念を詳細に定義する試みであり、PMFしている状態を定量面、定性面の両面から捉えています。スタートアップ企業のみならず、すべてのプロダクトオーナーにとって大変示唆深い内容となっており、本調査を通して、事業開発におけるPMFの重要性や、考え方としての有用性がますます普及することを期待しています。
調査データのダウンロード
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資料で公開している情報を引用・転載する際は、出典と本記事URLを明記していただけますようお願いいたします。当社への事前連絡は必要ありません。
【受付終了】PMF CONFERENCE2023
当社主催の「PMF CONFERENCE2023」が7月11日(火)にオンライン・参加費無料で開催しました。各社のPMFまでのストーリーを語っていただき、新規事業成功へのヒントを探っていくイベントです。
登壇企業
株式会社マツリカ、株式会社セレブリックス、株式会社キーエンス、東日本電信電話株式会社 、株式会社ビザスク、株式会社カオナビ、キャディ株式会社、suswork株式会社、株式会社ニューズピックス、株式会社才流
メディアスポンサー
NewsPicks Brand Design、MarkeZine、ビズスタ
新規事業の成功へ、正しい方向に、正しい努力をするために
スタートアップ業界では、PMFの概念が広がり、商品が売れないのは営業パーソンやマーケターの責任ではなく、商品・サービスに課題があるからだと考える方が増えています。しかし、大企業や中堅・中小企業の新規事業では、まだまだPMFの概念は広まりきっておらず、成果が出ずに課題を抱えている方が多いようです。
PMFの概念が広まることで、新規事業にかかわる人たちが正しい方向に、正しい努力を重ねられるのではないか。このような考えから、本調査の実施に至りました。一人でも多くの方がPMF達成に向けて前進するための一助になれば幸いです。
関連記事と書籍のご紹介
PMFについてもっと知りたい方は、以下の記事や書籍も参考にしてください。
■ PMF達成ガイド~基礎から事例まで、新規事業を成功に導くためのコンテンツ集
■ 書籍『新規事業を成功させる PMFの教科書』(発行:株式会社翔泳社/執筆:株式会社才流 代表 栗原 康太)