マーケティング施策を実行したものの、「なぜ成果が出たのか」「なぜ失敗したのか」をチームで明確に言語化できない。施策を実行し、結果の数値は管理しているのに、次の施策に再現性を持たせられない 。もしあなたのチームでこうした状態が起きているなら、振り返り方法に問題があるかもしれません。
本記事では、「KPTA(Keep・Problem・Try・Action)フレームワーク」を活用した施策の振り返り方法を解説します。才流社内でも実際に使用しているフレームワークであり、次の行動を見据えた有意義な振り返りができる方法です。
振り返り時に使えるテンプレートも用意しましたので、ご活用ください。

※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとダウンロードされます
正しい振り返りをしないと起こる問題
マーケティング施策を実行後、正しい振り返りができていないと、以下のような問題が起こりえます。
- 各施策の良し悪しがわからないまま「なんとなく」で予算を使い続ける
- 本来は有効な施策だが、実行方法が良くないために成果が出ず、「この施策は有効ではなかった」と間違った判断をする
- 成果が出なかったときや、さらなる成果を求められたときに、何をどう変えるべきか判断できず対策が進まない
私は多くの企業でマーケティング支援を行っていますが、上記のような問題を抱えているチームでは、振り返りの方法に共通の傾向が見られます。
① 具体的な根拠がない評価で、施策に再現性がない
- 「なんとなく良かった」
- 「うまくいかなかった気がする」
- 「今回は手応えがあった」
- 「ターゲットには刺さった感じがする」
② 何と比較しているのか、なぜその差が生まれたのか見えていない
- 「前回より反応が良かった」
- 「競合と比べて見劣りしない」
- 「思ったより数字が伸びなかった」
③ 一部の指標のみに注目し、全体的な成果や他への影響が見えていない
- 「SNSでの反応は悪くなかった」
- 「炎上しなかったから成功」
- 「コンバージョンが上がった」
④ 成功・失敗の要因が不明で、次回にいかせない
- 「なぜうまくいったのかわからないが、結果は良かった」
- 「失敗したが、その要因が特定できない」
- 「数値は把握しているが、要因がわからない」
⑤ プロセスの評価と成果の評価が混在し、改善点が見えていない
- 「チーム的には頑張った」
- 「予算内に収まったからOK」
- 「時間をかけて丁寧に作った」
もしあなたのチームの振り返りで、上記のような発言が出ていたら改善が必要でしょう。
「KPTA」は次の行動につなげるための型
あいまいな議論を避け、効果的な振り返りを行うために推奨したいのが「話し方・考え方の枠組み(フレーム)」であるKPTAを活用することです。
KPTAとは、Keep(良かった・続けたい点)・Problem(課題・問題点)・Try(成果向上・改善に向けたアイデア)・Action(今後実行する点)の頭文字をとったものです。
開発の現場でよく使われるKPTに加え、Action(今後実行する点)までを明確にすることで、次の行動につながる前向きな振り返りが可能になります。
KPTAを活用した振り返りのステップ
KPTAを有効に活用するためには、振り返りの順序と粒度が重要です。以下のステップで整理することで、チームとして前向きに改善アクションを定められるようになります。
振り返りの準備
まず施策全体の「目的」と「結果」を俯瞰的に整理し、チーム内で目線を合わせておくことが重要です。以下の3ステップで、振り返りの土台を整えましょう。
1-1 施策の目的と狙いを明文化する
施策の「目的」や「狙い」は何だったのかを確認し、言語化します。数値目標だけでなく、「誰に対して・どんな状態変化を起こしたいのか」という意図も明記しておくと、振り返りが深まります。
例
- セミナーから初回商談を5件獲得する
- 新サービスの認知を向上させ、サイト訪問数を増やす
1-2 結果を複数の視点で整理する
施策を定量・定性・ROIの観点で整理します。この3つを整理することで、表面上の数字だけでなく「本質的にどうだったか」が見えやすくなります。
例
- 定量(数値):目標に対してどこまで達成できたか
リード数、商談数、コンバージョン率、資料ダウンロード数、CPA - 定性(反応):対象者や社内の受け止め方はどうだったか
アンケート回答、商談時の反応、営業コメント、社内フィードバック - ROI:コストに対して成果は見合ったか
獲得単価(CPA)、商談獲得単価、1件あたりのコンバージョンコスト
1-3 総合評価を記載する
最後に、「目的に対して期待値は超えたのか、 未達だったのか」「仮説通りの成果が出たのか、それとも想定外のことが起きたのか」などをふまえて総合的な評価を行います。
総合評価を明確にすることで、KPTの観点を整理でき、次のステップで「KPT」を絞り込んで書き出す際にも優先順位づけがしやすくなります。また、振り返りの場でゼロから話し合うよりも、チームでの共通認識が持ちやすく、議論も深まります。
例:総合評価と振り返りの観点
評価 | 振り返りの観点 |
A:理想的 | どう再現するか他施策にどう転用するか |
B:合格点 | 良かった要因はなにか もうひと伸びするには何が必要か |
C:いま一歩 | 期待通り・期待以上だった点は何か 合格点に達するために何が必要か |
D:要改善 | 良かった点はあるか 何が悪く、何の改善必要か改善は可能か (可能でなければ施策自体の中止を検討) |
E:大失敗 | 継続・次回実施する理由や、ポジティブな面があるか (なければ施策を中止) 次回実施するとしたら、何を改善すれば成果が期待できるのか 次回実施しないとしても、何が悪かったか |
KPTを書き出す
次にKPTを書き出します。振り返りを成功させるカギは、「思いついたことを全部書く」のではなく、あえて「絞ること」です。項目が多すぎると、議論の焦点がぼやけてしまい、結局なにが重要だったのかがわからなくなってしまうことがあるからです。1施策につき3~5個程度までに限定することで、改善に直結する重要な論点だけを扱うようにしましょう。
また、慣れていない方は「Keep → Problem → Try」の順で記入するのがおすすめです。成功点から入り、冷静に課題と向き合い、次への改善に転じるという流れは、議論が前向きになりやすく心理的安全性も保ちやすくなります。
2-1 Keep(うまくいったこと・今後も続けたいこと)
Keepでは、「今回の目的に対して、効果的だった施策や取り組みはなにか」「これは今後も再現したい」などの要素を選定するとよいでしょう。「結果が良かったから」だけでなく、「なぜ良かったのか」も書いておきましょう。
例
- 事前告知を2週間前に開始したことで参加率が上がった
- 特定のCTA文言でCVRが高かった
- 〇〇のターゲットと相性が良かったからだと考えられる
2-2 Problem(うまくいかなかったこと・課題)
Problemには、「目的を阻害した要因」「期待したのに効果が出なかった部分は何か」を書き出しましょう。こちらも、なぜうまくいかなかったのかを一緒に書いておきましょう。
例
- メール開封率が低く、リード流入数が想定より少なかった
- 当日セミナー内のデモが伝わりづらかったかもしれない
2-3 Try(改善すべきこと・次に試したいこと)
Tryは、「次回はどう変えればよいか」打ち手を考えます。改善点だけでなく、より成果を向上させるためにできること、挑戦したい取り組みアイデアなども書き出しましょう。
以下はセミナーのKPT例です。Keep、Problemの違いから、Tryも変わってくることが確認できます。
例1
Keep | ・申し込みページの構成(シンプルでコンバージョン率が高かった) ・登壇者の話し方やテンポが好評だった(アンケート結果より) |
Problem | ・参加率が目標より低く、申込者数の割に当日参加者が少なかった |
Try | ・申込者へのリマインドメールを2通送信(前日朝+当日昼)に増やす ・申し込み時点で「参加特典(資料・録画URL)」を明記し、参加動機を強化する ・登壇者紹介パートを強化し、SNSシェアを促す流れを追加し、認知拡大につなげてみる |
例2
Keep | ・集客チャネルとして活用した既存顧客へのメール配信はCVRが高かった ・オープニングの構成が「わかりやすい」と複数の参加者から好評だった |
Problem | ・製品デモパートが「わかりにくかった」との声が多かった |
Try | ・デモの尺を短縮し、要点を押さえた事前収録動画に差し替える ・デモ前に「デモのポイント3つ」スライドを挿入し、視聴者の理解を補助する ・デモ動画単体をオンデマンド公開し、別途リード獲得施策に活用できるか検証する |
例3
Keep | ・他社登壇者のパートが最も視聴維持率が高く、アンケートでも高評価だった ・資料送付後の営業フォローにより商談化率が高かった |
Problem | ・特に大きな問題は発生していないが、リピート施策の可能性が未検討 |
Try | ・次回は営業チームと事前連携し、当日中のフォロー予約案内を導入してみる ・他社事例だけで構成した「シリーズ型セミナー」を試験的に開催する ・オンデマンド向けに事例パートを切り出し、ホワイトペーパー代替 コンテンツとして活用する |
Actionを明確にする
KPTで多くの視点が出たあとに、「何をやるのか」が曖昧になってしまうと、実効性が著しく下がります。そこで大事なのが、KPTを踏まえて次に実行すべきことを明確にすることです。
KPTで挙げた内容をすべて実行計画にするのではなく、全体を俯瞰したうえで「やりきるべき重要なアクション」に優先順位をつけ、3~5個程度に絞り込みましょう。担当者や実行期限、備考に調整が必要なことなども具体的に決めておきます。
例
内容 | 担当者 | 期限 |
LPのファーストビュー改修案(2案)を作成し、 次回広告配信前にABテストを設計 | 山田 | ○月○日 |
次回セミナーでは「参加特典資料」を事前告知メールに明記する | 鈴木 | ○月○日 |
問い合わせ獲得用の導線強化案(CTA位置と文言変更)を検討・実装 | 佐藤 | ○月○日 |
商談化率の高い業種に絞ってターゲティング広告を出し直す | 木村 | ○月○日 |
チームで効果的に振り返りを進める方法
振り返りをチームで行う際、以下の手順で取り組むとスムーズです。
- 主担当があらかじめ前述のステップですべての項目を書き出す
- 振り返りの場で、チームメンバーとディスカッションする
- KeepやProblem、Tryなどを補足・修正する
- Actionを確定し、KPTAを正式版として記録する
- 会議の最後に、「このActionは確実にやりましょう」と合意形成する
議論の土台は個人で準備しつつ、チームでの視点を加えることで精度の高い学びに昇華できます。
また、チャットツールでチャンネルを作る、タスク管理ツールを使うなど、チームとして実行状況を可視化する仕組みを作ることで、実行への後押しになります。次回のKPTA振り返り会議では、前回設定したActionは実行されたかを振り返るとよいでしょう。
【まとめ】振り返りの質を上げるためのポイント
KPTAは便利なフレームワークですが、振り返りを形式的に運用し、「なんとなく」で終わらせてしまっては効果が半減します。
振り返りの質を高めるには、以下の点を意識しながら進めるとよいでしょう。
- 各項目を欲張ってあれもこれも詰め込もうとせず、振り返りにおいて必要な「次の行動につながる学び」に絞る
- 「Actionをやりきる」ことが重要であり、確実に実行するための体制やプロセスを検討する
- 一定の期間(四半期や半期など)ごとに、施策のカテゴリー別に高評価・低評価のケースを分析し、傾向と全体としての改善点を明確にする
KPTAを適切に用いてマーケティング施策の振り返りを行うことで、チームで前向きに学びを共有し、改善を積み重ねることでマーケティング活動全体の効果を高めることができます。ぜひ取り組んでみてください。
KPTA振り返りテンプレートは以下よりダウンロードできます。

※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとダウンロードされます