本記事では、BtoBマーケティング初心者の方向けに基礎的な考え方を解説します。
こんな方におすすめ
- 「BtoBマーケティングとは?」を知りたい
- BtoBマーケティングに取り組む理由を知りたい
- 考え方やプロセス、全体像を知りたい
才流(サイル)はこれまで、スタートアップから大企業まで、180社以上のBtoBマーケティングを支援してきました。お客様の課題として多いのが、「施策を実行しているが、正しいのかわからない」「成果が出ない」という声です。
原因の多くは、施策実行前のプロセスで正しい戦略を立てられていないことにあります。
成果の出ない施策に時間やコストをかける前に、まずは全体像や重要な考え方を理解し、正しい戦略を立てましょう。これからBtoBマーケテイングをはじめたいと考えている方は、ぜひご一読ください。
また、才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、マーケティング戦略立案から施策実行まで支援しています。マーケティング活動で課題がある方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
※関連資料:2024年10月公開『BtoBマーケティングガイドブック』
BtoBマーケティングとは?
BtoBマーケティングとは、企業間の取引におけるマーケティング活動のことです。商品・サービスを提供する企業は、自社の顧客を特定し、顧客が求めており、競合には提供できない自社独自の価値を、さまざまな手法で顧客に届けます。
BtoBの場合、顧客となるのは企業。企業は、業務上の課題を解決するために商品・サービスを購買します。購買に至るまでには社内で複数の人が関与し、商品・サービスの機能だけでなく、提供する企業の信頼性や取引上のリスクなども考慮しながら検討を重ねます。そのため、検討開始から契約までに時間がかかるのが特徴です。
また、BtoBマーケティングでは顧客の行動や判断を支援するという視点が重要です。顧客に商品・サービスや自社を知ってもらい、買ってもらうまでの道のりにおいて、顧客がスムーズに検討を進められるようにマーケティング活動を設計しましょう。
デジタル化やコロナ禍により顧客の情報行動・購買行動は大きく変わりました。営業担当者が対面で商品・サービスを説明していたプロセスの多くは、Webサイトや広告、SNSからの情報収集に置き換わっているのです。
「BtoB企業の購買プロセスの57%は、営業担当者に会う前に終わっている」ともいわれています。BtoBマーケティングに注力をしないことは、大きな機会損失にもなるのです。
ただし、BtoBマーケティング=オンライン施策と考えるのは、間違いです。
業界業種などによってはオフラインの施策も有効です。重要なのはお客様の企業を理解し、効果的なコミュニケーションをとること。「オンライン施策をとりあえずやればいい」という議論は本質ではありません。
BtoCとBtoBでは、購買にかかる期間・人数・目的が違う
BtoCとBtoBマーケティングの違いは複数ありますが、必ず理解しておかなくてはならないのは以下の3つです。
- 購買の意思決定をする人数
- 購買までの期間
- 購買目的
たとえば、BtoCの場合は店舗で商品を見たり、広告を見たりした人が、その場で購入します。
しかしBtoBの場合は、現場の担当者が広告を見て自社に必要だと感じても、社内で許可をとる必要があります。購買金額もBtoBのほうが高額になるケースが多く、社内の意思決定者も多いことから、購買までに時間がかかるのです。
また、BtoCの購買目的は「商品がほしい」「サービスを体験してみたい」「困りごとを解決したい」など多岐にわたりますが、BtoBの場合は主に課題解決です。
BtoBマーケティングのステップ
BtoBマーケティングのステップは、大きく分けると3つです。
1.市場環境(市場・顧客・自社・競合)の調査・分析
2.マーケティング戦略の立案
3.マーケティング戦略の実行
ステップ1.市場環境の調査・分析
市場環境の調査分析で対象となるのは、市場・顧客・自社・競合の4つです。
市場・顧客を理解する
市場とは顧客の集合体です。自社の商品・サービスが狙う市場にどのような特徴があるか、市場規模はどうかなどを把握する必要があります。さらに、市場のなかでも自社の商品・サービスを購買してくれるであろう顧客は、どんな課題を解決したいのか、どのような情報収集をしているか、社内の購買プロセスはどうか、などを知ることで、適切なマーケティング戦略を描くことができます。
自社を理解する
意外と見落としがちなのが、自社の理解です。顧客データ、過去に行った施策の分析、営業方針や体制、短期でできる改善点などを洗い出し、自社の状況を把握しましょう。また、顧客生涯価値/LTV(ライフタイムバリュー)が高ければ高いほど、マーケティングコストをかけやすく、戦略の自由度が高まるため、LTVも把握しましょう。
競合を理解する
自社の商品・サービスと競合する他社はどのような訴求やプロモーションを行っているか、どのような顧客が利用しているかなどを分析します。
※関連記事:BtoBマーケティング戦略立案前の調査To-Doリスト
ステップ2.マーケティング戦略の立案
市場環境を把握できたら、戦略を立てていきます。マーケティング戦略とは、「誰に(Who)・どんな価値を(What)・どのように(How)提供するか」を定義することです。
誰に(Who)
顧客の集合体である「市場」には、さまざまな課題やニーズを持った顧客が存在します。なかでも自社の注力すべき層はどの顧客なのかを特定し、顧客像を明らかにするために、セグメンテーション、ターゲティング、ペルソナ作成を行います。
市場をいくつかのセグメントに分類することをセグメンテ―ションといいます。分類したセグメントのなかでも、とくに注力するセグメントを決定するのがターゲティングです。
さらに、ターゲティングで決定したセグメントにいる顧客を理解するために、注力するセグメントにいる顧客は、どのような会社、役職、課題を持つ人なのか、具体的な人物像を描き出すのがペルソナ作成です。
※関連記事:BtoBマーケで役立つペルソナ作成3つのステップ【テンプレート付き】、セグメンテーションとは? BtoB事業で「売れるセグメント」を発見する方法
どんな価値を(What)
次に、自社が提供する商品・サービスの価値は何なのか、独自の強みはどこにあるのかを言語化していきます。このプロセスでは、ポジショニングマップで現状を把握したうえで、バリュープロポジションを作成します。
ポジショニングマップとは、市場における自社の商品・サービスと競合を比較し、視覚的に示した図です。ポジショニングマップによって自社の優位性、他社との差別化ポイントが明確になると、効果的なマーケティング戦略が立てやすくなります。
バリュープロポジションとは、「自社が提供でき、競合が提供できず、顧客が求める独自の価値」のことです。バリュープロポジションが明確なほど、マーケティングメッセージがつくりやすく、営業担当者が説明しやすく、顧客に選ばれやすくなります。
※関連記事:バリュープロポジションとは?作り方と事例~テンプレート付きで解説~、ポジショニングマップの作り方~肝となる軸の決め方をテンプレート付きで解説~
どのように(How)提供する
戦略立案の最後は、「どのように提供するか」を決定します。具体的には顧客とのタッチポイントになるチャネルを特定し、コミュニケーション設計を行うことです。ここでは、カスタマージャーニーマップの作成と階段設計を行います。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスを認知してから、購買に至るまでのよくある道のりを可視化したものです。各フェーズにおける顧客の行動や態度変容をマッピングすると、顧客視点で施策やコンテンツを設計できます。
また、カスタマージャーニーをもとに、顧客が受注までの道のりをスムーズに進むための階段を作ります。当社では階段設計と呼んでいます。
階段設計は、各マーケティング施策からいきなり問い合わせや商談獲得を目指すのではなく、顧客の検討度合いに応じて最適なコンテンツやコミュニケーションを提供することで、顧客との関係性を構築できる手法です。
一見すると手間がかかるように見えるかもしれませんが、最終的には問い合わせ数や商談数、受注数を最大化できる手法です。
※関連記事:カスタマージャーニーの意味って?基本の概念と構成【初心者向け解説】、カスタマージャーニーマップの作成手順【BtoB向けテンプレート付き】
ステップ3.マーケティング戦略の実行
戦略に応じて施策の優先順位は変わりますが、標準的な優先順位は以下のとおりです。
良い商談を営業に引き渡すためには、コンバージョン(CV)ポイントの改善が重要です。注意したいのは、施策を実行する際、いきなり認知拡大や集客施策を行わないこと。
コンバージョンポイントであるWebサイトやランディングページ(LP/サービスサイトとも言う)がわかりにくいままでは、たとえ広告で訪問してくれた顧客がいても、すぐに離脱してしまいます。
この状態は、穴が空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。まずはWebサイトやランディングページのコンバージョン率(CVR)を上げ、バケツの穴をふさぎましょう。
また、コンバージョンポイントの階段をなめらかにすると、リード数や商談数を増やせます。
※関連記事:BtoBマーケティング手法大全、階段設計
※関連動画:【入門】BtoBマーケティングを始めるための3つのプロセス
「顧客理解」は戦略を立てるための最重要事項
戦略を立てるうえで、才流が最も重要だと考えているのは顧客理解です。
顧客理解ができていないと、マーケティング施策を実行するうえで、顧客と適切なコミュニケーションがとれないからです。
たとえば、以下のような問題が起きてしまいます。
- サービスサイトが、顧客の知りたい内容になっていない
- 自社が想定していた顧客の課題と、実際の課題が違っている
- 顧客とどういう接点を作ればいいのかわからない
- 広告のコピーが書けない
顧客理解をしていないマーケティング活動では、どんなに施策を繰り返しても、成果は最大化しません。逆に顧客理解をしていれば、打ち手はおのずと見えてくるものです。
もしこれからBtoBマーケティングに取り組もうとしているのであれば、最低限やることとして「顧客理解」という言葉を覚えておいてください。
※関連記事:「顧客理解」を深める12の方法
戦略を立てずに施策を実行することのリスク
BtoBマーケティングのステップを紹介しましたが、実際のところ、現状の分析や戦略立案をせずに、施策を実行しているケースは多く見られます。
マーケティングオートメーション(MA)や広告自動運用など、さまざまなツールが登場し、手軽に施策を実行できる環境は整いつつあります。コンテンツ制作は制作会社に、広告運用は代理店に任せるといった分業も進んでいます。
施策を実行する際の選択肢が増えることは良いことですが、戦略や顧客理解がない状態で施策を実行しても、大きな成果にはつながりません。
才流はこれを、BtoBマーケティングのドーナツ化現象と呼んでいます。
「施策を打っているのに成果が出ない」「正しくできているのかわからない」「リードはとれても、商談化しない」などの課題の多くは、戦略がないままに進んでいることが原因です。
成果が出ないと社内で予算がもらえなかったり、理解が得られなかったり。継続するための体制にも影響します。
限られたリソースと時間を有効に使うために、戦略に沿って、正しい優先順位のもと施策を実行することが重要です。
BtoBマーケティングで「売れるロジック」が必要な理由
購買までに時間がかかり、意思決定者も多く、金額も高い。だからこそ、BtoBの商品・サービスを顧客に買ってもらうためには、顧客が抱える課題をどのように解決できるのか。ロジカルに説明できなければなりません。
才流では、「売れるロジック」と呼んでいます。
売れるロジックは、営業資料、サービス紹介資料、製品サイト、LP(ランディングページ)、広告クリエイティブの内容を考える際に活用できます。
※関連記事:売れるロジック
BtoBマーケティングのおすすめ本を紹介
これからBtoBマーケティングを学びたい人向けに、おすすめの本をご紹介します。
才流代表 栗原がおすすめする本
- 『究極のBtoBマーケティング ABM』(日経BP)
- 『新規顧客が勝手にあつまる販促の設計図』(翔泳社)
また、栗原の著書では、本記事で解説した考え方を詳しく紹介しています。
- 『BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎)
- 『マーケター1年目の教科書』(フォレスト出版)※ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員CMO 黒澤 友貴氏と共著
BtoBマーケティング用語解説
本記事内で出てきたBtoBマーケティング用語を解説します。
CV(コンバージョン)
CV(コンバージョン)のもともとの意味は、「転換」「変換」です。BtoBマーケティングでは、自社の商品・サービスを検討しているお客様が購買に近づくために起こす行動。または行動によって得られた成果のことを指します。
商品・サービスの特性やマーケティング戦略によって、何をコンバージョンとするのかは変わってきます。
たとえば、以下の行動はすべてコンバージョンです。
- Webサイトで情報を閲覧し、資料請求をする
- 資料を見て、セミナーに申し込みをする
- Webサイトから問い合わせをする
また、問い合わせをコンバージョンとしている場合、問い合わせの数をコンバージョン数(CV数)と呼びます。コンバージョンポイントの設計次第で、購買につながる商談数が変わってくるため、非常に重要な指標です。
CVR(コンバージョン率)
CVR(コンバージョン率)とは、自社の商品・サービスのWebサイトに訪問したり、広告をクリックしたりした人が、どのくらいの割合でコンバージョンしたかをはかる数字です。
たとえば、CV=Webサイトからの資料請求 と置いている場合。
コンバージョン率は、以下の計算式で算出されます。
CVR(%)=資料請求数(CV数)/サイト訪問者数×100
CVRが低い場合は、訪問したお客様が知りたい情報がない、もっと知りたいと思わせる工夫がないなどの理由が考えられます。サイトの改善を検討しましょう。
※関連記事:
読んでそのまま使える、BtoBサイトのCVRが改善する打ち手10選
LP(ランディングページ)
ランディングという言葉の意味は、着地。ランディングページとは、商品・サービスを検討している顧客が最初に訪問するページのこと。BtoBマーケティングでは、自社のWebサイトの中でも、商品やサービスの特徴を1ページにまとめたページ(サービスページ)のことを指す場合が多いです。
※関連記事:LPの標準ワイヤーフレーム
LTV(ライフタイムバリュー)
LTV(ライフタイムバリュー)とは、顧客生涯価値とも言われ、1顧客が生涯に生み出す利益のことです。
たとえばサブスクリプション型のビジネスであれば、「1顧客あたりの月次利益×継続月数」、スポット型のビジネスであれば「1取引あたりの利益×リピート購買回数」で算出できます。
※関連記事:LTV・CACの計算方法とよくある質問への回答
ペルソナ
ペルソナとは、自社の商品・サービスを使う具体的な顧客像のことです。似た言葉に「ターゲット」がありますが、ペルソナはターゲットの中でも、さらに具体的な人物像を言語化します。
たとえば、ターゲットは「事業会社のマーケター、40代男性」くらいの粒度ですが、ペルソナはさらに詳しく
- 業務でどのような課題を持っている人か
- 普段どのような媒体から情報を検索しているか
- 組織の中で、どのような役割をはたしているのか
などを深掘りし、人物像を設定していきます。
BtoBの場合は、購買目的はほとんどの場合が「課題解決」。どんな課題を抱えているのか、自社のサービスで何を解決したいのか、ペルソナを設定し仮説を持って戦略を進めることが重要です。
※関連記事:
BtoBマーケで役立つペルソナ作成3つのステップ
才流コンサルタント小島note「BtoBマーケティングはペルソナで決まる」
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを知ってから、購買に至るまでのルートを可視化したものです。
顧客がどこで自社商品・サービスと接点を持ち、どんな目的でどのコンテンツに興味を持つのか。その後、どのような行動を行い、商談に進むのか。検討段階ごとに時系列で可視化することで、有効なタッチポイントやコンテンツを提供できます。
※関連記事:カスタマージャーニー基本の概念と構成【初心者向け解説】
MA(マーティングオートメーション)
MA(マーケティングオートメーション)とは、さまざまなフェーズにいる顧客や顧客とのコミュニケーション状況を可視化し、最適化されたマーケティング活動を目指すための概念です。MA=MAツールのこと自体を指す使い方も多いです。
代表的なMAツール:Marketo Engage、Salesforce Pardot、b→dash、SATORIなど
※関連記事 MAツールを有効活用するための60のチェックリスト
本記事では、BtoBマーケティング初心者の方向けに、基礎的な考え方やプロセスを紹介しました。
才流ではBtoBマーケティングのメソッドとして、初心者向けだけでなく、マーケターの方がBtoBマーケティングに取り組む際の具体的な手法や、すぐに使えるテンプレートなども発信しています。
BtoBマーケティングで成果を出すためにお役立ていただけますと幸いです。
また、成果が実証されたメソッドにもとづき、マーケティング戦略立案から施策実行まで支援しています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)
BtoBマーケティングガイドブックを無料でダウンロードできます
さらにくわしくBtoBマーケティングについて知りたい方は、2024年10月に公開した『BtoBマーケティングガイドブック』をダウンロードしてご活用ください。どなたさまでも無料でダウンロードできます。
ダウンロードページ:https://sairu.co.jp/guide/download_form/btob-marketing/
<目次>
第1章 BtoBマーケティングとは何か?
第2章 BtoBマーケティングの進め方
第3章 市場環境(市場・顧客・自社・競合)の調査・分析
第4章 マーケティング戦略の立案
第5章 マーケティング戦略の実行
第6章 課題別のケーススタディ
付録 BtoBマーケティング用語集
※知識定着のためのワーク付き
本メソッドへのご感想・レビュー
より良いメソッド発信のため、コメントを参考にさせていただきます。