保育業界特化型のSaaSを開発し、約8ヶ月で契約社数が1600から3200まで急成長した企業がある。
約4年で3200園に導入され、保育ICTシステムで導入実績No.1を誇る株式会社コドモンだ。同社が提供する「コドモン」急成長のワケは何だったのだろうか。
本記事では、これまでのコドモンの立ち上げ時の課題から営業・マーケティング施策、秀逸なカスタマーサクセス施策まで、代表取締役社長・小池義則氏と、ICT推進チームマネージャー足立賢信氏にお話を伺った。
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ーーはじめに、コドモンの現状と立ち上げ背景について教えてください。
小池:コドモンは、2015年に展開を開始してから4年間で保育ICTシステム業界で導入実績No.1となったSaaSビジネスです。
元々、受託事業がメインの会社で、Webサイトやシステム開発、チラシ、リーフレットなどを制作していました。
ある時ご縁をいただき、とある認可外保育施設向けのシステムを作ったのがコドモン開発のきっかけになります。
通常、認可保育園はプロモーションや営業活動の概念はありません。社会福祉事業として、自治体経由で園児を預かるというスタンスが通常だからです。しかし、認可外保育施設になると国の補助もないため自分たちで園児を募集する必要があります。そのため、初期のシステムのコンセプトは保護者さんにきちんと自分たちの保育や教育内容を、紙の連絡帳の代わりにアプリを使って評価をしてもらうことを目的としたコミュニケーションツールとして開発を行いました。当時は珍しい製品だったこともあり、とても評判が良かったです。
そのコンセプトをもとに、SaaSモデルとして開発をしたのがコドモンでした。
ーーSaaS事業の立ち上げ時、どんな状況だったのですか?
成功した受託事業を横展開するも失敗。原因は顧客理解の不足
小池:当時は保育業界のことをしっかりと理解しきれておらず、「きっとこのサービスは喜ばれるだろう」という想いだけでスタートを切りました。ちょうど自分に子供が生まれて保護者になったこともあり、保護者の立場でも熱量が高くなっていた時期でもあります。コドモンというネーミングをつける前は、「保護者と先生で子どもを見守る」という意味で、「見守り地蔵」というネーミングが最有力候補だったくらいです。友人に止められましけど(笑)。ただ、どうにも世の中の保育事業者からは全く受け入れられませんでした。
保育園側の課題は、保育士の採用・離職
小池:保育業界の課題は、保育士さんの採用難・採用コストの上昇です。ピークの1月時には都内では有効求人倍率数が6倍を超えます。この現状の中で、保育園は保育士さんが辞めてしまうことを一番懸念していたのです。
確かに先生方からは、アプリを使って保護者とのコミュニケーションが改善され、家庭連携を強化していくという点は大事だとおっしゃっていただいたものの、ICT導入による「保育士さんの負担増」という課題を解決しなければ、なかなか導入には踏み切れない。今でこそ、保育におけるICTが認知されつつありますが当時は全く状況が違いました。
そういった状況に対し、機能を制限した無料版を提供してご案内をしても、なかなか思うようにご利用いただけない状況が一年半くらい続きました。
その頃から保育業界が本当に求めているポイントは、対保護者の課題以上に対保育士の抱える課題解決であると気づきはじめました。
ーーそこから業界シェアNo.1に至るまで、どんな施策に取り組んだのでしょうか?
小池:あらゆる施策を打ちました。まずは、各自治体のWebサイトに掲載されている認可保育園リストや、ハローワークの求人情報などさまざまなソースから園の情報をかき集め、メールやFAXをリストに対して行いましたが、あまり結果は変わりませんでした。
「保育士の業務負担を軽減する」というコンセプト
小池:そこで、懇意にさせていただいている数人の保育園の先生のもとへ話を聞きに行き、現在どのような悩みを抱えていて、どのような物があれば現場の負担減につながるのかを事細かにヒアリングを実施いたしました。
その中で、今掲げている「保育士が子どもと触れ合う時間とこころのゆとりを」といったメッセージやプロダクトのコンセプトを再構成する機会を得ることができました。
ヒアリングを繰り返したことで、どこに課題と需要があるのか分かっていったのです。
補助金で実質100%免除に!導入補助金で契約社数は4倍に
小池:また、プロダクトのコンセプトが固まってきた時期に、保育園がICTシステムを導入する際に補助金が支給されるようになってから流れが変わりましたね。その辺りから競合企業も参入するようになりました。
競合企業の参入以降は、プロダクトのコンセプトがより分かりやすく伝わるようなWebサイトの改修や、サービスサイトの立ち上げ、オウンドメディアの立ち上げなども行いました。
そして、約100社を超えたあたりで補助金が出て、初年度で400社になりました。その頃から採用も強化するようになりましたね。
契約社数が4倍に増加した理由は、たとえば下記のような施策をたくさん打ったことも関係するでしょう。
- 「保育園 システム」などのキーワードで検索上位
- 地域の園長会に呼ばれてプレゼン
- 月間10万円未満のリスティング広告
- 紙のチラシやDM
ーー足立さんが2018年7月に入ってから約8ヶ月で、導入施設数を1600から3200まで倍増させることができたのはなぜでしょうか?
小池:足立が飲食店向け予約システムのトレタから転職したのが2018年の7月頃で、当時は契約社数が1600ほどでした。
そこから契約社数が倍増したのは、以下2つのポイントがあると思います。
- ベルフェイス導入でアポ精査、リードからのクロージング効率のアップ
- CRMツール「ちきゅう」導入で案件管理の課題を解決
詳しく説明していきます。
ベルフェイス導入で商談数増。リードからのクロージング効率アップ
小池:多くの保育園がコドモンを選んでくれるようになった一方で、訪問することに時間がかかることがずっと課題でした。全国の保育園に訪問するので、1アポごとに時間とお金が膨大にかかるのです。
さらに、直販比率が約7割を占めているので営業の効率化が急務でした。大変な時は1日に4件の地方営業があったほどです。月間5000円からの低価格プロダクトなので、当時は大赤字でしたね。
2018年7月に足立がトレタから転職してきてからは、営業効率の改善などさまざまなことに取り組んでくれて成果を上げています。
足立:元々、前職で飲食店に対しベルフェイスを活用した遠隔商談をしていたものの、保育園にベルフェイスを利用した商談が受け入れられるかどうか不安がありました。
当初は訪問可否の振り分けをし、見込み度が高いお客さんの場合のみ訪問する流れを作っていこうと思っていました。しかし、いざやってみるとベルフェイスで商談まで持っていくことができると気づき、ベルフェイス導入から2ヶ月ほどで成果が出てくるようになりました。
すると、僕以外のみんなもベルフェイスを利用するようになりました。おかげで一人当たりの商談数が導入前に比べて倍になりました。
今までは営業先に回れないことがボトルネックだったので、安心してリードを増やせるようになったのです。
営業で成果を出せたのは、コドモンに正式入社する前に1週間保育園で保育士として働いて現場を知ったことも活きていると思います。現場を知っているからこそ顧客の視点に立つことができ、共感も得られるんです。飲食店への営業であった前職でも、実際に飲食店で働いた経験のある営業はやはり良い結果を残していました。
ベルフェイス上に作った営業の型の資料に沿った商談や商談録画機能を活用して教育しているので、繁忙期に営業を外注化した時も、また、今期採用したメンバーもジョインした初月からすぐに売れるようになりました。今はもともと営業経験のある子育て中の女性を中心に採用しており、インサイドセールスとして活躍してくれています。
CRMツール「ちきゅう」導入で案件管理の課題を解決
足立:営業に関しては、もう一つ案件管理の課題がありました。
保育園は園名や法人名が被っていることが多く、案件管理の難しさも課題でした。ただ、私の入社当時には各々に任せている状態で、契約社数が1500件くらいあったのに個々人がGoogleスプレッドシートで案件管理を行なっていました。営業が管理するチーム全体の受注リストすらなかったほどです。
そこで「ちきゅう」というCRMツールを導入しました。導入のおかげで毎月の受注見込みが読めるようになり、また集計されたデータを根拠に受注の傾向や有効な販売促進策について議論できるようになりました。
ーーカスタマーサクセスはどんな取り組みを?
紙製のスターターキットを提供。オンボーディングをサポート
コドモンのスターターキット
足立:オンボーディングに注力し始めたのは今期からです。コドモンはこちら側から積極的にオンボーディングのサポートをしなくても利用できる施設もありました。というのも、UIがわかりやすく直感的に操作できるためです。また、スターターキットも用意しています。もちろん、紙製の操作マニュアルだけでなくWebのマニュアルも用意しています。
また、今期はARPU(1社あたりの平均売り上げ)をあげる方向でいくと考えたときに、サポートの効率化が課題でした。そこで、保育士さんがコドモンを毎日見ていることを考え、それまで電話でサポートをしていたところをコドモンにチャット機能をつけてサポートするようになりました。このチャット機能を使えば、アップセルなどにも応用できるでしょう。
まとめ
インタビューは以上になる。
特に面白いと思ったポイントをまとめると、以下の点だ。
- ヒアリングの末、保育業界の課題は保育士の採用にあることがわかり、業務効率を改善することにプロダクトのコンセプトをシフト
- 営業先に回りきれないことがボトルネックだったところを、ベルフェイス導入で解消
- 手厚いスターターキットで利用者のオンボーディングをサポート
市場がなかった状態から、保育業界の中に見事にICTシステムを導入・普及させ、業界No.1まで急成長したことを、代表の小池氏が「運の要素が大きかった。正攻法では保育園にiPadが普及するとは考えられない」と語っていたことが印象的だった。
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