時代の最先端に挑戦する実践者をつなげるコミュニティ「DOER NIGHT(※)」。第三回目は「BtoBオウンドメディア運営の実態」と題し、3名のゲストにお話を伺いました。
- 長谷川 智史 氏(ソウルドアウト株式会社『LISKUL』)
- 平塚 直樹 氏(ナイル株式会社『SEO HACKS』)
- 大久保 亮佑 氏(株式会社ガイアックス 『ソーシャルメディアラボ』)
1時間以上にわたるディスカッションは、多方面に展開されました。今回はその中から、
- メディアによってインバウンド営業になった経緯
- リード獲得に効いたオウンドメディア施策
- 問い合わせフォームをあえて長くした理由
- 何の指標を見るべきなのか
というテーマを抜粋してお届けします。(モデレーター:栗原康太/株式会社才流 代表取締役)
※DOER Nightとは、時代の最先端に挑戦する実践者をつなげるコミュニティとして、2018年に才流が開催していたイベントです。
インバウンド主体になるまでの期間は?
栗原 平塚さん、大久保さん、長谷川さんの会社では、テレアポはもうやっていないんですか?
平塚 ナイルはもうやっていないですね。
大久保 ガイアックスはほぼインバウンドのみで、残りは代理店経由です。
長谷川 ソウルドアウトはまだやっています。「この会社様とどうしても取引したい」という場合のみですが。
栗原 インバウンド主体になるまで、どのくらいの期間がかかりましたか?
平塚 インバウンド主体の体制に移行するのは0か月。ただ、売上がきちんと立つまでにはもう少しかかっています。社長の高橋がある日突然「もうアウトバウンドはやらない」と宣言しまして(笑)、そこから営業もコンサルにシフトしました。また、当社の中でも積極的に情報発信をしているメンバーがいて、コンサルのメンバーも情報発信がミッションになりました。
長谷川 ソウルドアウトでは、2013年初頭に2つのサイトを立ち上げました。「オウンドメディアをフルコミットでやって欲しい」と言われたからです。最初のサイトはコンテンツマーケティングを得意とする会社さんにお願いしたものの失敗、次のサイトはニュースをクローリングする会社さんに依頼しましたがやはり失敗しています。
その頃は社内的に「コンテンツマーケティングってイケてないよね」と言われていたのですが、2014年1月にバズ部さんにお世話になって「LISKUL」を立ち上げてからは順調で、同年末にはアウトバウンドをやらなくてもよくなりました。
大久保 ガイアックスも、移行期間はほとんどかかっていないですね。もともと当社はFacebookアプリを売り、ソーシャルメディアラボとは別のサービスサイトで集客していました。僕自身は、ガイアックスがSNSの運用代行やコンサルサービスを売るタイミングで入社しました。インバウンド施策を開始したのは、そのあたりからですね。
栗原 私もガイアックス社にいましたが、2007年ぐらいまで飛び込み営業とテレアポをやっていて営業が疲弊していたのを覚えています。当時の役員が「インバウンドでやっていくぞ」と宣言して、それからは試行錯誤でした。当初はリスティング広告やサイトのチューニング、SEOを頑張ったり。ソーシャルメディアラボが立ち上がる頃はかなりうまくいったんですけど、最初は苦戦していた印象があります。
リソースがあるなら、電話したほうがいい
栗原 オウンドメディア運営の目的は、多くの場合リード獲得や案件増だと思います。みなさんの中で、「この施策が効いた」というものがあれば教えてください。
長谷川 当社では、スタートアップガイドですね。いわゆるホワイトペーパーです。2014年に実施した施策で、「リスティング広告」で検索1位をとった記事があったのですが、そこにリスティング広告初心者向けのガイドブックをダウンロードできるようにしました。
あとは、リンクを青文字にしたこと。これはめっちゃ効きまして、ダウンロード数が1.5倍ぐらいに伸びました。これはぜひやっていただきたいです。最近、月のダウンロード数は500件くらいに減りましたが、好調な時は月900件くらい、累計で2~3万ダウンロードされています。
栗原 ダウンロードしてからステップメールを送るんですか? それとも、いきなり電話を?
長谷川 その時のリソース次第ではありますが、いきなり電話をしたほうが受注は取れますね。
栗原 僕もいろいろなマーケターの方と情報交換をさせていただくのですが、ホワイトペーパー系でリードを取った後どうするかと聞くとみなさん「全件、電話がいいですよ」とおっしゃるんですよね。ナーチャリングするよりは、「リソースがあるなら電話したほうがいい」という答えが多かったんです。
長谷川 確かにどちらがアポや受注取れるかというと、全件電話したときですね。
栗原 ステップメールはどんなものを送っているのですか?
長谷川 今は送ってないはずですが、当時は6回ぐらい送っていました。
栗原 けっこう送られているんですね。そこから引きあがってくるものですか?
長谷川 メールで引っかかったのか、ガイドブックを読んで良いと思っていただけたかはわからないのですが。最初のメールは「ガイドブックをダウンロードできる」という内容なので開封率は90パーセント、クリック率70パーセントぐらい。そこから最後の6通目になるとそれぞれ30パーセント、10パーセントまで下がります。普段のメールはもっと低いかもしれないです。
問い合わせフォームをあえて長くした理由
栗原 平塚さんは「是非これを」という施策はありますか?
平塚 当社はSEOを主としている会社なので、手法と考え方の話をさせていただきます。
皆さんSEOと聞くと検索ボリュームのことをイメージすると思うんですが、当社は見積もり・資料請求といったコンバージョンに直結する部分、問い合わせに近いところを充実させるべきだという考え方でコンサルティングをしています。SEO HACKSもそこを意識してやっています。
手法的な部分では、ディスクリプションの使い方です。例えば「Googleアナリティクス 使い方」で検索流入を狙うとして、どう1位に持っていくか。用語の場合、ページの冒頭部分に100字~120文字ぐらいで「**とは○○である」というテキストを入れておくと上位表示されることがあります。そういう手法で、できるだけCTRをとれるということが意外と使える知識じゃないかなと思います。
栗原 SEO HACKSさんだと「SEO会社 見積もり」とか「SEO会社 比較」といったワードを取りに行くんですか?
平塚 そうですね、見積もりとかSEOコンサルとか、意外と見落としがちなワードも取りに行っています。
栗原 月間のクエリ数だと、数十ぐらい?
平塚 ゼロという月もあります。ちなみに、クエリ数ゼロでもページを作ります。「そのワードに対してサービスを用意する」という形で。まだまだやりきれてはいないんですが、そういう考え方でやっています。
栗原 SEO HACKSさんでもう1つ特徴的なのは、問い合わせフォームの長さ。セオリーとしては短いほうが良いとされていると思いますが、このあたりの意思決定とコンバージョンの良し悪しを伺えますか?
平塚 ぶっちゃけコンバージョンは悪いです。
栗原 悪いんですね。
平塚 ただ、悪くていいんです。ここは、ある程度ふるい落としの場として使っているので。当社は、営業が4~5人しかいないので、例えば予算が十分にないクライアントや、いわゆる「外部リンクで上げてくれないか」というお客様が来ても対応が難しいんです。
栗原 月に触れられる件数が多くない中で、そういう案件が来ると困ってしまうと。
平塚 月額40万円以上だと予算としては高いですが、30万円以下や、下手すると10万円台の話をいただいてもお断りすることになる。そうすると、お互い時間の無駄になりますよね。
なので、エントリーフォームで「うちはこういう形でしかやっていないんです」というのをアピールするために長くして、項目も細かくしています。ただ、これは仕組みが出来上がってからの話。最初はリストを得るために、メールアドレスと会社名だけのシンプルなフォームにするのが良いと思います。
見ていたのは、問い合わせからの売上数
栗原 満を持して(笑)大久保さん、「これが効いた」という施策はありますか?
大久保 ソーシャルメディアラボの編集長をやっていた頃は、問い合わせからの売上数値を追っていました。メンバーは、セッション数を追っていましたね。BtoBでのコンサルティングサービスの場合、受注の要因として一番大きいのが「商談」ですから、営業管理・案件管理が一番効果が高いです。「商談でいつ・なにを・どうやるか」をきちんと詰めると効果は大きかったと思います。
メディアの部分でいうと、アクセスのボリュームを増やした施策として効果的だったのがリライトです。ソーシャルメディアラボは2010年から運営しているので、記事数が1,000本弱あったんですがどれも内容が古くなってしまって。そういった記事の情報を更新したことで、アクセスボリュームが一気に上がりました。
あとは、質でいうと当時SATORIというツールを入れていまして、実際に発注していただいたお客様がどのようなコンテンツを見ているかを洗い出し、そこから共通項を見つけてそのコンテンツを増やしました。サイトからもコンテンツへの動線を多く貼って、一度そのコンテンツを経由して問い合わせを増やすみたいなこともやりました。
ソーシャルメディアラボの場合、単純にFacebookだけの説明をするよりもFacebook・Twitter・Instagramの3媒体を比較するといった記事がよく見られていました。それぞれどの程度の更新頻度なら良いのかを調査し、Facebookだったらこれくらい、この業界だったらこのぐらいの頻度でやっているというデータをピックアップし、調査したコンテンツを書くとか。そういうコンテンツを横展開し、たくさん作っていく感じでした。
あとは、例えば飲料業界など業界を絞って事例紹介した記事とか。そういったコンテンツを厚くして、動線を増やして、受注に繋がる問い合わせを獲得する。そういう施策を愚直にやっていました。
DOER Nightは、目標やミッションを実現するために行動し続ける実行者「DOER」の集まるイベントとして、毎月開催しています。その中でも今回は、オウンドメディアについて取り上げました。
成功するオウンドメディアの運営者たちは、結果を出すために必要なことを実行し続けていました。今日の各社のオウンドメディアがあるのは、どれほど課題が出てきたとしても、成果が出るまで、課題に対して施策を講じ続けた結果であると感じました。