営業力の強い組織では、営業パーソン一人ひとりの予実管理が徹底されています。しかし、実際には「部下の売上予測の精度が甘く、月末のたびに調整が大変」という課題に直面している営業マネージャーは多いでしょう。
とくに近年、稟議プロセスの複雑化が進み、顧客側も発注までに複数の関係者との合意形成が必要になりました。その結果、延伸してしまうケースや確実に受注できると思っていた案件が失注になるケースが増加。売上予測の精度を保つのが難しくなっています。
そこで本記事では、予実管理を確実にするためのツール「ヨミ表」と、その運用方法について解説します。すぐに使えるヨミ表テンプレートも用意したので、ぜひ活用してください。
営業ヨミ表テンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
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営業組織の予実管理でよくある課題
営業部門のマネージャーにとって、予実管理にまつわる悩みは尽きないもの。当月〜2か月先までの予算・実績を管理するなかで、とくに以下のような問題は頻繁に起こります。
- 月末になると、部下の売上報告が修正・減額される
- 進捗が数か月間止まったままの案件がある
マネージャーの予実管理の課題を解消する方法として、SFA、CRMといった営業・顧客管理ツールがあります。そして近年、SFA、CRMによる営業・顧客管理を実施している企業も徐々に増加中です。
とはいえ、株式会社TSUIDEが実施した「SFA・CRM導入実態に関する調査」※によると、SFA・CRMの導入率はわずか9.1%と、回答者全体の1割にも達していないのが実情です。
多くの企業では、今もなおExcelなどを活用した予実管理が行われています。Excelを用いたツールの代表的なものとして、「ヨミ表」が有名です。
※参考:プレスリリース「営業デジタルツール「導入していない」が9割 SFA、CRMツール導入に関する調査結果発表!導入ツールランキング1位は…?」|株式会社TSUIDE
ヨミ表とは?役割とメリットを解説
ヨミ表は、営業の進捗を管理できるツールのことです。
商談途中にある各案件を以下のような項目で分類し、表にまとめることで、全体目標に対する予算・実績の現状を定量的に把握できます。
- 受注で見込める金額
- 受注の時期
- 受注の確度(受注が見込める可能性)
売上予測の精度が悪く予実管理がままならない状態では、営業組織の課題の特定や、目標達成に向けて必要なアクションを導き出すことは至難の業です。
しかし、ヨミ表を使用すれば、可視化されたデータをもとにリソースの再配分やネクストアクションを設定できます。案件の取りこぼし、停滞に対しマネージャーがフォローを行うことも可能です。
ここからは、営業組織でヨミ表を使用する3つのメリットについて解説します。
メリット①:営業の進捗管理がラクになる
ヨミ表は営業チームの業績や目標達成度をリアルタイムで把握できるので、進捗管理が容易になります。
さらに、可視化されたデータをもとに各営業メンバーやチーム全体の進捗状況を詳細に分析できるため、必要に応じてリソースの再配分や戦略の見直しを行うことが可能です。
メリット②:精度の高い売上予測が可能
ヨミ表によってデータが可視化されるため、過去や現在の状況から将来の売上予測を立てることが可能です。さらに、案件数や受注確度も把握しやすくなるため、営業戦略を適切に調整することができます。
精度の高い売上予測を行うことで、経営陣への報告や商品・サービスの開発計画、リソースの最適な配分が可能となり、企業全体の成長の促進につながるでしょう。
メリット③:失注原因の仮説検証・分析が可能
ヨミ表を活用すれば、失注の原因や傾向が明らかになります。失注原因の仮説を立て、その検証を行い、検証結果に基づいて改善策を策定することで、失注の回避や顧客満足度を向上させられるでしょう。
また、失注原因の仮説検証を通じて、営業プロセスの改善や営業スキルの向上につながる可能性があります。
ヨミ表を最大限活用するためのポイント
ヨミ表を使用している営業組織の方々によると、以下のいずれかに苦慮されているケースが多いです。
- いつ実施すればよいか (ヨミ表を更新するタイミングがわからない)
- なにをどこまで記入すればよいか(ヨミ表に必要な項目がわからない)
- どのようにいかせばよいか(ヨミ表の活用方法がわからない)
ここからは、予実管理にヨミ表を活用するためのポイントを紹介します。
ヨミ表の更新を行うタイミングは「商談終わり」
案件ごとのヨミ表の更新タイミングは、商談終わりに実施することを基本ルールとしましょう。
週末にまとめて実施したいケースもあるかもしれません。しかし、商談が終わった直後にヨミ表を更新することで、新鮮で正確な情報が記録できます。これにより、ネクストアクションをすぐに意識できるメリットがあります。
また、チーム全体や関連部署との情報共有もスムーズになるため、迅速な意思決定や連携が可能となり、売上創出にとっても有益な方法といえるでしょう。
予実管理のお悩みを解消するヨミ表テンプレート
「ヨミ表に必要な項目がわからない」「どうやったらヨミ表を予実管理に活用できるのか知りたい」
そのようなお悩みを解消するために、才流では汎用的に使えるヨミ表テンプレートを用意しました。テンプレートの使い方についても解説していますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
営業ヨミ表テンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
ヨミ表テンプレートの効果的な使い方
ここからは、予実管理を確実にするヨミ表テンプレートの使い方を解説します。
テンプレートでは「ステータス表」と「ヨミ表」のシートを用意しました。シートは自社に合わせて自由にアレンジが可能です。それぞれのシートごとに重要なポイントをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
シート①:ステータス表
まずはヨミ表の重要項目である「ヨミ」を、自社の営業の実情に合わせて設計していきます。最初のステップは、「ステータス」をはじめとする項目の判断基準をそれぞれ定義することです。
1. 顧客の購買プロセス
ステータス表の設計で忘れてはならないのが、自社の商品・サービスにおける顧客の購買プロセスを言語化することです。
顧客は一般的に、以下の順で購買を実施します。
課題を認識 → 解決策の探索 → 情報収集 → 比較・選定 → 最終調整 → 意思決定 → 稟議 → 発注
比較・選定のプロセスは、担当者が行うほか、キーパーソンも行うなど複数回あることが一般的です。すべてのプロセスをステータス表に反映させるようにしましょう。
項目が多くなると管理が煩雑になるため、5項目程度に集約するのも一つの考え方といえます。しかし、実際に顧客の購買プロセスが10段階あることは事実です。10項目で管理するほうが営業として実施すべきことを意識しやすくなるため、実際の購買プロセスに合わせることを推奨します。
よくあるNGパターン
ステータス表の設計でよくありがちなNGパターンについて紹介します。
上図のような表では、「提案書提出済みなのでBヨミです」といった報告が上がってくることがあります。しかし実際には、以下のような確度の低い状況である可能性が捨てきれません。
- キーパーソンは案件についてまだ報告を受けていない
- 担当者がとりあえず提案書を受け取っただけ
- まだ顧客の興味喚起がされていない状況なのに強引に提案した
これでは正確なヨミが期待できません。こういった事態を避けるためにも、ステータス表は顧客の購買プロセスで設計することが重要です。
2.定義
顧客の購買プロセスを明らかにしたら、それぞれの定義を明確にしましょう。営業パーソンによって認識のズレが起きやすい項目なので、組織で合意形成を図ることが重要です。
また、定義についても顧客を起点に設計するようにしましょう。
3.定義の根拠
定義の根拠は、定義をクリアしたかどうかの判断軸になるため、正確に設計しましょう。この項目も、営業パーソンによって判断がまちまちになりやすいので注意が必要です。顧客から言質を得ることが明確な判断基準となります。
案件ごとのステータスをランクアップする場合は、ステータスの定義に忠実に行いましょう。たとえば、「ヨミ」を4から5にランクアップしたい場合、要件を満たすためには顧客から「自社のサービスを推薦する」との言質を得なくてはなりません。
つまりステータスの定義を意識することで、顧客へのネクストアクションが明確になり、商談推進力の向上にも寄与できるのです。
4. 受注確度
受注確度を決める際は、以下の点に注意しましょう。
- ステータス表の中身について、組織で合意形成が取れている状態にする
- 受注確度(歩留まり率)は実数を計測
たとえば「内示」のステータスの場合、受注確度は80%で設定されていますが、本当に80%受注しているといえる状況でしょうか。 仮に実数が75%であれば、最終的に売上予測に狂いが生じてしまうため、実際の数値で計算する必要があります。
シート②:ヨミ表
ヨミ表のシートには、ステータスごとに、顧客企業名・担当者・商品名・月別売上を入力します。分納の場合、納品ごとに計上しましょう。
ヨミ表を活用するためのポイントは、以下の3つです。
① 月次の更新はシートを上書きせず、シートをコピーして入力する
※前月と見比べることで差分を把握しやすい
② 売上数字は受注日ではなく計上月で入力する
※組織のなかで合意形成を図っておく
③ マネージャーが管理・判断しやすいように文字を色分けする
- 新規案件:黄色
- ステータスのアップ:青
- ステータスのダウン:紫
- 中断・失注:グレー
ヨミ表の精度をさらに向上させる「BAT」とは?
ヨミ表は、精度の高い予実管理を実施するのに有効なツールです。しかし、自分の感覚に頼ってヨミ表に数字を記入している営業パーソンは意外と多いもの。その情報が間違っていたら、正確な予実管理は実現できません。
ヨミ表に記入している情報に間違いがないかどうかは、BANT※の中の「BAT」、つまりBudget、Authority、Timeframeについて論理的な根拠を示せるかどうかでわかります。
ここでは、BATそれぞれの根拠の示し方を解説します。営業の感覚に頼らない情報管理を徹底するためにも、ぜひ取り入れてみてください。
- Budget(受注金額)
- Authority(決裁者・キーパーソン)
- Timeframe(受注時期)
※バント/法人営業のフレームワークに使用される、Budget(予算)、Authority(決裁者)、Needs(ニーズ)、Timing(検討時期)の略。
Budget(受注金額)
この場合のBudgetは、予算ではなく受注金額を表します。論理的な根拠を示すためには、顧客が予算をどれだけ持っているかを把握する必要があります。
予算を把握したら、顧客の立場で受注金額の根拠を説明しましょう。
例:「予算500万円に対して提案金額が400万円であるため、提案内容のすべてを発注したいと言っている」
Authority(決裁者・キーパーソン)
Authorityの要素で論理的な根拠を示すためには、顧客企業の組織構造や役割分担を把握し、どのような立場の人物が決裁権を持っているのかを明らかにする必要があります。
決裁者・キーパーソンを把握したら、なぜその人なのか根拠を説明しましょう。
例:「⚪︎⚪︎部長は本案件の起案者であり、発注権限も有している」
Timeframe(受注時期)
受注時期について論理的な根拠を示すためには、顧客との取引履歴から購入時期のパターンを分析する、顧客とのミーティングで購入計画に関する情報を収集するなど、いつ頃受注が発生する可能性が高いのかを把握する必要があります。
受注時期を把握したら、顧客の立場でその根拠を説明しましょう。
例:「4月より運用を開始したいと要望があり、すでに顧客社内に運用に向けたクロスファンクショナルチームが設置された」
また、延伸するケースでも論理的な根拠を示して説明しましょう。
例:「4月から運用を開始したい場合は2月発注が最終期日であり、延伸すると運用が遅れることを経営陣含め理解をしてくれている」
ヨミ表を活用した案件レビューのポイント
ヨミ表を運用し始めたら、上司と部下で案件レビューのミーティングを実施しましょう。案件レビューでは、以下の議題でディスカッションを行います。
- 売上金額の確認
- ステータス向上のための施策(ネクストアクション)
営業組織全体で報告の方法が統一されていると、マネージャー側としては非常に効率的です。また、部下側からしても、要点が整理され注視すべき事柄が明確になります。
本記事で作成したヨミ表を使ったMTGの進め方は、以下の記事で詳しく解説しています。案件レビューの議事録もダウンロード可能なので、ぜひご活用ください。
※関連記事:案件レビューの進め方【トークスクリプト&テンプレート付き】
まとめ
本記事では、ヨミ表を活用した予実管理の方法について解説しました。ヨミ表を作成するときのポイントは以下の通りです。
- ステータスは顧客の購買プロセスで設計する
- ステータスの定義は組織で合意形成を図る
- 受注確度は実数で計測する
ぜひヨミ表テンプレートを活用して、現状と目標との差分を把握し、戦略の振り返りや見直しに役立ててください。
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