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ABMにおける顧問活用のポイント|成功企業に学ぶ取り組み方

法人営業
コンサルタント
渡辺 佳彦

エンタープライズ営業において、ABM( アカウント・ベースド・マーケティング)に取り組む企業が増えています。そこで効率よくアプローチするための施策として注目を集めるのが顧問活用ですが、なかなか成果が出ない、顧問を活用しきれていないという声も耳にします。

※関連記事:ABMとは?基本的な進め方【アカウントプランのテンプレート付き】

本記事では、ABMにおける顧問活用のポイントを探るべく、電話面談システムを提供するベルフェイスの顧問活用について伺いました。

5名の顧問を活用し、アポ単価15万円、受注率20%、アライアンスに次ぐ受注経路として成果を上げているベルフェイス。サービスサイトには、通常のマーケティング施策では難しかったという業界大手企業のロゴが並びます。その取り組みの実態に迫りました。

取材協力

ベルフェイス株式会社
事業戦略本部 本部長
岩田 恭行 氏/Iwata Yasuyuki

リクルートでIT製品情報メディアの広告営業からキャリアをスタートし、営業マネジメント業務を経験したのち、セールスフォース・ドットコムにてSFA・CRMを提案するインサイドセールスとフィールドセールスに従事。
その後、BtoBセールス&マーケティングのコンサルティング会社である2BCの立ち上げに参画し、執行役員兼コンサルタントとして多くの企業の営業変革/営業DX化プロジェクトを担当。MA/SFA/CRM等の各種資格保有。
2019年12月よりベルフェイスへ参画。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス部門を管掌した後、2022年4月より現職。

才流(サイル)では成果が実証されたメソッドにもとづき、BtoBマーケティングの支援をしています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)

顧問活用の概要

――まずはベルフェイスの顧問活用の概要について教えてください

ベルフェイスでは、ABM施策において5名の顧問を活用しています。

アライアンス(パートナー紹介)、手紙、テレアポなどにも取り組んでいますが、顧問活用はアライアンスに次ぐ受注経路。規模や業界によって異なりますが、アポ単価は15万から20万円程度、受注率は20%程度です。

ちなみに横串でマネジメントできるよう、営業やマーケティングではなく事業戦略部門の担当者が顧問の管理をしています。

利用している顧問紹介サービス

――顧問紹介サービスにはいろいろなものがありますが、どんなサービスを使っていますか

顧問名鑑HiPro-Biz(旧i-common)といったサービスを使っています。VCから紹介していただいたり、既存顧客のキーパーソンにお願いしたりするケースもあります。

サービスのコストや料金形態はさまざまですが、紹介手数料として初期費用を100万円程度、サービス利用料や顧問への報酬として月額40万〜60万円程度を支払うことが多くあります。サービス間で顧問が重複するケースはほぼないので、いろいろなサービスに声をかけてみるとよいと思います。

おもしろいところでは、サブスク形式の顧問紹介サービスもあります。常時3名の顧問に依頼でき、紹介先がなくなった場合はほかの顧問と入れ替えていくようなサービスです。

――「既存顧客のキーパーソン」とはどんな方なのでしょうか

既存顧客のキーパーソンは、当社のサービスを利用してくれていて、なおかつ、その方がいなくなると解約に至ってしまうような存在の方です。定年退職や異動される際に声をかけることが多いですね。

顧問紹介サービスの選び方

――顧問紹介サービスは、どのように選べばいいのでしょうか

重要なのはサービスではなく、担当者だと感じています。

たとえばクレームが発生した際に顧問に対してはっきりと伝えられるか、顧問との面談の際に目的に沿ってファシリテートできるか。また、当社のニーズと合致した顧問をリストアップしてくれるか。こういった点が重要です。

また、もしも担当者が当社の事業、顧問活用の目的・ニーズを正しく理解していない場合は、適切な顧問の紹介を受けられません。結果的に検討が徒労に終わったり、契約後のミスマッチを引き起こしたりします。

そのため、担当者については、適切な顧問をリストアップしてくれるか顧問との面談の際の立ち振る舞いに不安がないかといったことをとくに確認するようにしています。

あわせて、顧問を選定してもらったときは、担当者に選定の理由をたずねるとよいでしょう。選定の理由がずれていた場合、もう一度自社の事業や顧問サービスに求めるニーズについて説明する、顧問に依頼する企業を変更するといった対応もできるようになります。

顧問を採用するときのポイント

――顧問を採用するときのポイントについて教えてください

ベルフェイスでは、採用面談に注力しています。面談は合計2回実施し、1回目の面談では当社のサービス内容やミッションを詳しく説明します。顧客に提案するようなイメージです。顧問の経歴はあらかじめもらっているので、プロフィールや経験内容について詳しく聞くようなことはしません。

2回目の面談では、顧問としての具体的な活動内容のイメージについて聞いています。売れそうなイメージを持てたか、どこにどのように持っていけば売れそうか、といったような質問です。

この段階で、熱量が低い、本音では売るのはむずかしいと感じていそう、自社とカルチャーが合わないと思った方はお断りしています。「一緒にやっていけそう」と思えた方だけ採用することが大切です。

また、事前にもらえる資料には、顧問としての活動実績や事例は掲載されていません。実際に顧問としてどのような活動をされているのかを担当者に確認しておくことが大切です。

――採用を見送ったほうがいいのはどんな方でしょうか

まずは、アポイントの提供が目的になってしまっている人。「○○を紹介すればよいんでしょ?」みたいな姿勢の人です。

また、自社の商品・サービスへの理解があやしい人も、アポ獲得でミスマッチが起きる可能性があるので避けたほうがよいでしょう。

顧問の契約内容

――顧問の方とはどのような契約を結んでいるのでしょうか

顧問活用は、スポット型と中長期型の2つのパターンが考えられます。ベルフェイスでは基本的に後者を採用し、中長期的な活用を前提に契約しています。

ただし、業界No.1など「どうしてもここには導入してほしい」という企業とのコネクションをお持ちの方の場合は、スポット型で依頼させていただくことがあります。

パターン特徴
スポット型■3〜6か月程度の期間に限定して活用する
■初期費用がかかるため、商談創出単価は割高になる
■目的を達成したら契約を終了し、無理にやれることを探さない
中長期型■中長期的な活用
■幅広い人脈を持つ方と契約する
■中長期にわたって商談創出、パイプラインの創出に関わってもらう
顧問活用の2つのパターン

――具体的に、どのような内容にコミットしてもらうのでしょうか

顧問との契約内容・金額にもよりますが、月3回のアポにコミットしてもらっています。フェーズに応じて、以下のいずれかを依頼します。

  • 商談化
  • パイプライン進捗
  • ロイヤルカスタマー化(受注後の顧客との食事会など)

顧問活用における課題と解決方法

――顧問活用に関して課題はありますか

契約内容が曖昧になりがちなので、アポが3件未満になってしまうなど稼働がショートすることもあります。また、顧問によっては「これがアポ扱いなの?」と思ってしまうようなカウントの仕方をするケースも。

そんなときは直接顧問にフィードバックするのではなく、顧問の扱いがうまいサービス側に戻すようにしています。

また顧問とのコミュニケーションがとれないと、うまく進捗しない場合があります。ベルフェイスでは普段のコミュニケーションは営業部長クラスに限定し、社内の担当者が横についてコミュニケーションのチューニングをしています。

顧問のKPIと評価方法

――顧問はどのように評価するのものなのでしょうか

活動管理と継続判断用として指標をおいています。ただしABM施策ということもあり、受注までのリードタイムが長いので、短期的な目線ではなく総合的に評価しています。

主なKPIは以下のとおりです。

  • 定量
    • 商談創出数
    • 転換率(パイプライン管理)
    • 残リスト保有数
  • 定性
    • 活動のインパクト(例:商談化した企業がビッグネーム)

顧問活用における予算

――予算はどのように捻出されたのでしょうか

もともとはマーケティング施策や業務委託など、パイプライン創出用の予備としてとっていた予算を使ってスタートしました。

最初からかなりうまくいったので、予算をとってやるべきであると判断し、現在は使途を明確にして予算を確保しています。

成果が出ていることもあり、顧問の数を増やすことも検討しました。しかし、顧問の選定基準が高くなかなかよい人が見つからない、選定のプロセスや管理にリソースをかけられないといった理由から、無理には人数を増やしていない状況です。

顧問活用が向いている企業

――顧問活用はどんな企業に向いていますか

もともと顧客獲得コストが高い企業、上位の役職者に会わないとパイプラインが進捗しない商品・サービスにおすすめです。担当者レベルで導入を判断できるような価格帯の商品・サービスには不向きでしょう。

また、できるかぎりシニアの人間が接触することが大切なので、たとえばスタートアップのような若手しかいない企業には少し難易度が高いかもしれません。

やりとりはオープンにして大丈夫ですが、窓口は一本化して、いろんな人から顧問へアポの依頼をさせないようにガバナンスを効かせることも重要です。

まとめ

顧問紹介サービスをご存じの方は多いと思いますが、ここまで顧問を「活用」されている例は聞いたことがありません。顧問の選定から、紹介先との契約、関係深化までとてもよく考え抜かれています。

今回のお話で最も印象に残ったのは、顧問の採用面談のお話です。

ベルフェイスでは、採用面談に注力しています。面談は合計2回実施し、1回目の面談では当社のサービス内容やミッションを詳しく説明します。

<中略>

2回目の面談では、顧問としての具体的な活動内容のイメージについて聞いています。

<中略>

この段階で、熱量が低い、本音では売るのはむずかしいと感じていそう、自社とカルチャーが合わないと思った方はお断りしています。「一緒にやっていけそう」と思えた方だけ採用することが大切です。

本記事「顧問を採用するときのポイント」より

顧問サービスに登録されているのはすばらしい経歴をお持ちの方ばかりのため、面談をするだけでも気後れしてしまいがちです。また、紹介可能な企業のリストがとても魅力的に見えるため、よく吟味せずに契約を進めてしまうということもあるかもしれません。

しかし、顧問を営業に活用する最終的な目的は、自社ではつながりを持つのがむずかしい企業と関係を持ち、自社の商品・サービスを導入してもらうこと。どれだけ有名企業とのアポを重ねても、それがビジネスにつながらないのであれば本末転倒です。

ベルフェイスではその目的意識を一貫して持ち、効果的に施策として運用されている点がとても参考になりました。

エンタープライズ営業ではつながりや人脈が重要であることは周知の事実だと思いますが、その人脈構築にかける時間を大幅に短縮できるのが今回ご紹介した顧問活用施策です。ABMなどエンタープライズ企業へのアプローチを進めたい企業は、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

岩田さん、ありがとうございました。

※関連記事:ABMとは?基本的な進め方【アカウントプランのテンプレート付き】

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