オムロン株式会社イノベーション推進本部様では、社会的課題の解決に向け、データを活用した新規事業penguを展開しています。同事業本部初となるSaaSサービスのため、代理店開拓の相談をしたいと才流（サイル）にご相談いただきました。
才流では2023年2月から、代理店戦略立案の支援をスタート。以後、12月現在に至るまでWebマーケティング施策やカスタマーサクセスの運用など、事業成長に向けた幅広いご支援をしています。
才流のコンサルティングによって得られた成果について、同社の今江さん、金子さん、篠田さん、田代さんにお話を伺いました。
新規事業の拡販に向け、代理店開拓の必要に迫られる
－ご支援をした新規事業penguの誕生背景と、才流にご依頼いただく前の課題感を聞かせてください。
今江 当社では2016年から、データを活用した社会的課題の解決に向け、新規事業の開発をスタートしました。ものづくりの現場にヒアリングを重ね、現場のIT化が進まずに困っている企業様が多いことに気がつき、誕生したのがpenguです。penguは業務自動化ツールと、育成プログラムをセットにしたSaaSサービスです。
penguの広がりは社会的課題の解決につながるという考えのもと、2021年に社外への販売をスタートしました。1年ほどは直販で対応していたのですが、自社の体制やリソース、サービスの拡販を考えると販売パートナーが必要です。ただ当社はものづくりやシステム開発には一日の長がありますが、SaaS領域についてはまだまだ新参者と認識しています。良い相談相手を探すなかで、金子が見つけてきたのが才流でした。
金子 SaaSサービスの拡販方法について調べていたところ、直販は2割で代理店が8割という業界構造が説明された記事を見つけました。この記事を書いていたのが才流の桂川さん。当社が気になっていたポイントがまさに記事に盛り込まれていたので、すぐに問い合わせをし、才流とのプロジェクトがスタートしました。
多角的な支援で事業成長をサポート
－本プロジェクトでの取り組み内容を教えてください。
水落 プロジェクトは代理店を開拓したいというご要望から、2023年2月にスタートしました。
実際に動き始めると、penguの価値をどう社外に説明するか、コミュニケーション方法に改善の余地が見えてきました。そこでWebサイトの改善やWebマーケティングの施策立案もご支援しました。
6月からはカスタマーサクセス（以後、CS）の運用支援もスタート。pengu成長のエンジンとなる、継続利用・解約防止に向けた施策として、判断フローチャートの作成等を進めました。
9月からは事業成長のためのアドバイザリー支援を幅広く行っています。実行フェーズであがってくるさまざまな疑問や課題にアドバイスをしています。
今江 この8か月、多岐に渡る支援をしていただいたと改めて感じています。才流とのプロジェクトがスタートした時、栗原さんの書籍をいただいたんです。振り返ると、あの本をプロジェクトに関わる全員で最初に読んだことがすごく大きかった。
われわれが在籍するイノベーション推進本部には、オムロンの中でもスタートアップに意欲を持った人材が手を挙げて集まっています。セオリーを最初に提示していただいたことで目線が合い、議論の質が一気にあがった感覚がありました。成功事例は素早く吸収し、他社が失敗した道は絶対に通らない。皆の中にセオリーのベースができたことがすごく良かった。
金子 書籍は熟読し、要約したものを部署内で共有しました。改善施策はかけ算ですが、各ファネル毎に改善できる施策があり、かつ現実的に改善できる上限もある、という内容は印象的でした。
桂川 要約までしていただいたとは驚きました。素晴らしいですね。
水落 書籍は「共通言語を作る」目的で提供しています。皆さんがあらかじめ読み込んでくださったことで目線が合い、議論を早く進めることができました。
※代理店開拓の詳細については以下の記事で紹介しています。
関連記事：2か月で10社の代理店と合意！オムロンの新規事業、代理店開拓の舞台裏
Webサイト改善でバケツの穴をふさぐ！ CVRは10倍に
－代理店戦略からスタートしたプロジェクトは、最初の3か月でWebマーケティングの施策立案へと広がりましたね。この間、印象的だったことはありますか？
今江 施策は多岐に渡りますが、優先順位を明示いただけたことが印象的でした。「バケツの穴をふさがないと、活動量をあげてもしょうがない」と、早々に手をつけたのがWebサイトの改善です。
金子 SaaSのサービスサイトに必要な要素・構成案を出していただきました。その後、デザイン会社との打ち合わせにも同席してもらい、3社でチューニングを進めました。
－どのような変更を加えたのでしょう。
金子 サービスの特長ページや価格ページを新設し、ページの構成も大きく変えました。
とくに大きな変更は、サービスのキャッチフレーズです。「自律型業務改善サービス」から「現場業務のIT化を支援する」へと変更しました。桂川さんと代理店開拓の施策を進めるなかで、「自律」という言葉が他社に伝わりづらいことが判明し、議論の末に変更しました。
われわれの想い自体は変わっていませんが、やはり「外部から見たときにどう見えるか？わかりやすいか？」は非常に重要です。そうした視点を才流とディスカッションできたのは良かったですね。
水落 penguは事前説明がとても大事なサービスで、最初にきちんと理解していただけるとその後の流れが変わります。だからこそ、自分たちが訴求したいことではなく、お客さまが知りたいことをどう訴求するかを意識して変更の提案をしました。
－Webサイトの改善効果はありましたか？
今江 サイトに来た方のCV率は10倍以上、増加しています。最近は展示会にも参加しているので母集団の差こそあれ、大きな効果がありました。
カスタマーサクセスの運用支援でアクティブユーザー率も向上
－6月からはCSの運用支援もしています。CSというテーマに取り組むに至った経緯を聞かせてください。
今江 penguの収益性、成長性を考えたとき、継続率をいかに上げるかは大事なテーマです。もともと解約率は決して高くなかったものの、更なる改善は顧客満足に繋がります。
解約を防ぎ、価値をしっかり届けて「N倍化」を早めるには何が重要で、何をKPIにおけばよいのか。クイックに回す仕組みを作り、顧客満足度向上につなげていきたいという想いがありました。
－支援プロセスで新たな気づきはありましたか。
篠田 現場視点での大きな気づきは、「解約防止において大切なのは、早く成功体験を積んでもらうこと」。他社がどのように解約を防止しているのか、調べていただいたからこそ気づけた視点で、ハッとしましたね。
penguでは3つのツールを提供しており、それぞれ難易度が異なります。たとえば、最初にユーザーが扱いやすいツールから提供し、早めに成功体験を積んでいただくなど、営業のアプローチを変えたりもしました。
水落 SaaS企業10社のCS担当にインタビューをしたところ、「契約を継続されるには一定の条件があり、その条件を踏んでいる場合は解約されない」という基準を各社持っていることがわかりました。その発想を取り入れて作成したのが「チャーン防止・N倍化のための判断フローチャート」です。
フローチャートによって、今まで一部の人しかできなかった判断を、現場ができるようになる。すると解約防止につながり、クロスセル・N倍化というステップに進めると考えました。
今江 フローチャートによって判断基準が明確になりました。この段階まできたら、こういうアクションをしましょうとルールをあらかじめ決めておく。ルールに基づいて皆が行動すればよいので立ち止まることが減りましたね。
－CS支援による成果を聞かせてください。
今江 penguは1年単位の契約なので、解約率に関する数値はこれからですが、アクティブユーザー率は明らかに増えている。お客さまに早く成功体験を積んでいただけるよう、CSのリソースを適切に配分できるようになったからこそ、と感じています。
篠田 新しいメンバーがCSに入ってきた際も、迷うことなく品質の高いサポートができており、フローチャートの成果を感じています。
実行フェーズの伴走で、日々の意思決定がスムーズに
－8月からは幅広いテーマの壁打ち役としてご支援していますが、どのようなサポートに価値を感じていますか？
今江 新規事業は1つ壁を乗り越えると、また新しい壁が現れます。才流のおふたりはpenguを深く理解し、何でも相談に乗ってくれるのはもちろん、取り組むべきことの優先順位まで提示してくれるので助かっています。
金子 私たちよりもSaaS業界で多くの経験を積み、ノウハウを蓄積してきた才流から「セオリー的にはこう」「penguの状況を踏まえるとこう」とアドバイスをいただけるので、無駄なことを考える時間が減り、かなりの時間節約につながっています。
また「このテーマ以外はやりません」というスタンスではないので、penguの成長に関わることであればどんなテーマでも相談に乗ってくれます。いつもクイックに、メソッドを提供してくださいますし、メソッドのないテーマには「才流内で確認しました」とクオリティを担保してアウトプットしてくださるのですごくありがたいです。
桂川さんは現場の声を聞きたいと商談に同席してくれたり、水落さんは広告代理店との打ち合わせに同席してくれたり。提案のクオリティを上げるため、コミットしてくださるのも嬉しいです。
篠田 私は現場に寄り添ったサポートにすごく価値を感じています。CSは仕組みを考えるところからスタートし、現在は実行・運用フェーズに突入しています。
運用フェーズでは日々、新しい課題が出てきます。実際に解約が出た際に理由をどう聞けばいいのか、どんな質問を投げかけたらよいのかなど、運用フェーズで出てくる相談事に対してスピーディーにメソッドを提供いただけるので助かっています。
何か相談をした際、資料ベースでメソッドがまとまっているのも才流ならでは。現場ですぐに活用できるので重宝しています。今後は一緒にメソッドをつくるような取り組みができたら理想的ですね。
田代 私は代理店開拓を担当しています。2月からの3か月で大きな戦略を立て、現在は実行フェーズです。
実行するなかで代理店さんから思わぬ反応があった時、「それは戦略レベルから見直して新しくサービスを考えましょう」とか、「それは交渉ごとなので、現場で頑張りましょう」とか……。知見をもとに都度アドバイスいただけるので非常に助かっています。
お陰様で意思決定がすごく早く、そして有機的なものになっていると感じています。
桂川 田代さんからは商談前に注意すべきポイントの質問を投げかけていただいたり、商談のメモを都度共有いただいたり。圧倒的な行動力と密なコミュニケーションで、非常に有意義な取り組みができたと感じています。
※代理店開拓の詳細については以下の記事で紹介しています。
関連記事：2か月で10社の代理店と合意！オムロンの新規事業、代理店開拓の舞台裏
短期間で効率よく結果が出せたのは、専門家の知見があったから
－外部の支援会社を入れる価値をどのようなところに感じていますか？
今江 専門家によるサポートがあるかないかには、雲泥の差があります。費用はかかりますが、それを上回る価値は間違いなくある。逆にサポートなしでどうやってここまでくるのか想像がつかないほどです。
代理店開拓では「三方よし」のプログラムを作ることができ、2か月で10社近いパートナーと合意し、40社で商談が進んでいます。短期間でここまで効率よく結果が出せたのは、専門家の力があってこそ。
－最後に、才流のサービスを他社に進めるとしたら、どのような課題感をもつ企業にフィットすると思いますか？
今江 大手企業の新規開発部門には間違いなくフィットするのではないでしょうか。とくにSaaSやBtoB領域に取り組んでいる企業や、戦略に改善の余地を感じているところ、立ち上げフェーズで大小様々な課題をお持ちのところにおすすめしたいですね。
金子 付け加えると、早く大きく事業を成長させたいニーズにマッチすると思います。大きく成長している事業は何をやっているのか。メソッドを取り入れ、最短ルートを行きたい企業におすすめしたいです。
今江 penguは今後もさまざまな課題に直面すると思います。まだまだ大変なステージは続きます。現場のIT化が進まず、悩んでおられるお客さまは本当に多いので、社会の役に立つ大きな事業になれるよう、引き続きご支援をお願いします。
（撮影／植田 翔 取材・執筆・編集／藤井恵）
