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オウンドメディアの成功事例を分析してわかった、共通点と意外な事実

BtoBマーケティング
イベントマーケティング責任者
轟 拓哉

BtoBマーケティングの支援事業に携わっていると、お客さまから「成果がでなくて、今の運営方針を続けていいかわからない」「運営してみたものの、リソースが足りずに動かせていない」といった課題を聞きます。

本記事では、「株式会社ホットリンク」「HubSpot Japan株式会社」「株式会社キーワードマーケティング」3社のオウンドメディアの成功事例を取材してわかった共通点と、意外な事実について解説します。

※関連記事:
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オウンドメディアの成功事例から見えた、4つの共通点

取材した3社のオウンドメディアを分析すると、4つの共通点が見えてきました。考察をくわえて解説します。

企業名事業内容運営しているオウンドメディア
株式会社ホットリンクSNSマーケティング支援事業THE SOCIAL MEDIA
HubSpot Japan株式会社CRMプラットフォームの開発、販売、
および関連サービスの提供
HubSpot日本語公式ブログ
株式会社キーワードマーケティング運用型広告の運用代行、
検索エンジンマーケティングの研究、教育事業
キーワードマーケティングのブログ

共通点1.読者の理解を徹底している

オウンドメディアを運営するにあたって、読者を理解することは重要です。3社の担当者も「読者の理解」を徹底していると取材時に語っています。

特筆すべきは、読者を理解するための具体的な取り組みを行っていることです。

株式会社ホットリンク

届けたい相手がどんな人なのか、どう発信すると態度変容が起きて目的達成につなげられるか。このドメイン知識の有無でコンテンツの成果は大きく変わります。 そのため商談に同席してもらったり、社内研修として課題図書を出したりと、育成にも取り組んでいます」(室谷氏)

HubSpot Japan株式会社

「検索トラフィックを向上させるためには、結局検索ユーザーがなにを求めているのか、つねに理解しようとする動きを止めないことが欠かせません。そのため商談の録画音声を聞いたり既存顧客にヒアリングしたりと、お客さまがいまどんな課題感を持っているのかしっかり拾うようにしていますね」(水落氏)

株式会社キーワードマーケティング

「また、もう一つ大事にしているのは『誰に向けて書くのか』です。新入社員に基礎的なノウハウを届けるのと、ベテラン勢に媒体のアップデート情報を届けるのとでは、説明の具合や言葉の使い方が変わってきますからね。まるで手紙を書くように、なるべく実在する人物を想定読者に設定しています」(瀧沢氏)

読者を理解するためには、7つの手法が有効です。

読者を理解するための7つの方法

※関連記事:BtoBマーケティングで重要な「顧客理解」を深める12の方法

読者を理解する手法によっても理解度に差が出るため、複数の手法を組み合わせるといいでしょう。

特に、読者の声を直接聞ける「読者インタビュー」は重要です。インタビュー以外の方法も重要ですが、実際にコンテンツを提供する読者に聞くことで、読者が求めている情報が明確になり、ニーズに合ったコンテンツを提供できます。

※関連記事:【コラム記事作成テンプレート】BtoBオウンドメディアの記事作成を効率化!

共通点2.コンテンツの発信に対する、明確な指針を持っている

取材した3社は、コンテンツ制作のチームで「明確な指針」を持っているという共通点もありました。

株式会社ホットリンク

「弊社は一方的にコンテンツを発信するだけでなく、人と人との対話を通じて関係性を築き、関係者集団にも影響を与えること、応援してくれる人たちを増やすことも重視しています。Appleのマーケティングをリードしたレジス・マッケンナ氏が提唱する『リレーションシップ・マーケティング』ですね」(室谷氏)

株式会社キーワードマーケティング

「弊社ではコンテンツ作りの三大方針として『わかりにくいをわかりやすく』『役に立つ』『面白い』を掲げています。Web上に山ほどあるコンテンツなかで目を留めてもらえているのは、この『わかりやすさ』が効いているのではないかと思います」(瀧沢氏)

参考までに、私のエピソードもご紹介します。

私が前職で立ち上げたオウンドメディアの編集部は、6人構成の部署で「月間約10万PV以上」「月間リード獲得数は数百件以上」と、成果を上げていました。

お客さまからも「御社のオウンドメディアで勉強しています」「Googleで検索するよりも先に、御社の記事を読んでいます」と言っていただき、質の高いコンテンツを発信できていたと自負しています。

第二新卒・マーケティング未経験者のみの編集部が、質の高いコンテンツを制作し、発信できた理由は、編集部に「明確な指針」があったからだと思います。

立ち上げ当時の編集部では、コンテンツ発信の指針を、お客さまの「わかる」「できる」「かわる」を手助けすること、として掲げていました。意味は「分かりやすく、実行に移せるコンテンツを提供することで、お客さまが成果を出す手助けをする」です。

「わかる」「できる」「かわる」という覚えやすいフレーズも相まって、編集部全員に浸透していました。

実行に移せない抽象的な表現には、指針にのっとってコメントが入り、「この表現はお客さまに伝わりづらいのではないか」や「この段落は図解で表現したほうが伝わりやすいのではないか」といった「わかりやすさ」に対する議論も活発でした。

編集部の明確な指針がメンバーの意識や行動を変え、コンテンツの質を担保していたと考えています。

共通点3.意思決定者がコンテンツに投資する覚悟を決めている

オウンドメディアの成功事例を紐解くと、3社ともコンテンツに投資する覚悟を決めていました。

企業名内容
株式会社ホットリンク「Twitterマーケティング」で認知を取るために、
大量のメディア露出と書籍出版を行う
HubSpot Japan株式会社月に30-40本の記事を公開するために約50人体制を敷く
株式会社キーワードマーケティング年間100本の記事を投稿する

才流のコンサルティングサービスでは、「オウンドメディアで成果を出すためには、まずは記事を100本作りましょう」とお伝えしています。1年間で100記事を発信する場合、毎月8〜9本の記事を制作する必要があります。

しかし、1か月に1人で約8~9本の記事を企画・制作し、発信することはなかなか難しいです。

オウンドメディアの立ち上げ期は記事の制作を外注したり、社内で編集部を立ち上げる必要があるため、意思決定者はコンテンツに投資する覚悟を決め、必要な予算とリソースを確保しましょう。

編集者、ディレクター、デザイナーの人件費も別途必要ですが、執筆を外注する場合は、1記事約5万円と計算し、「年間で約500万円以上」を目安に見積もるといいでしょう。

「1記事5万円は高い!」と思うかもしれませんが、「安かろう悪かろう」では、コンテンツへの投資が無駄になってしまいます。

共通点4.徹底的にコンテンツ発信の戦略を立て、やりきる

取材した3社ともコンテンツ発信の戦略を立て、やりきっています。

企業名戦略の内容
株式会社ホットリンク「Twitterマーケティングといえばホットリンク」というブランド連想をとる戦略を立てて、
コンテンツの発信をやりきっている
HubSpot Japan株式会社インバウンドマーケティングという思想を体現するべく、
「トピッククラスターモデル」という戦略を50名体制でやりきっている
株式会社キーワードマーケティング「年間100記事を投稿すること」と「経営者がオウンドメディアに投資すること」を決め、
やりきっている

コンテンツ発信の戦略において、「やりきること」は重要であり、難しいポイントでもあります。

「最初こそ勢いよく始めたものの、思ったよりも継続が大変で、挫折してしまった」という話はよく聞きます。オウンドメディアの運営を軌道に乗せるまでは苦労しますが、流入がない立ち上げ期を乗り越えることで、やりきることに繋がります。

私自身2回にわたり、オウンドメディアを立ち上げていますが、2回とも立ち上げから軌道に乗せるまで苦労したのを覚えています。オウンドメディアの立ち上げから2〜3か月は、検索エンジンからの流入がほとんどない状態が続き、誰からも読まれません。

担当者の多くは「この方向性で本当に合っているのか」「この記事はきちんと評価されるのか」「これだけ時間とお金をかけて、まったく成果が出なかったらどうしよう」の不安と戦いながら、オウンドメディアを運営していることでしょう。

オウンドメディアの戦略があれば問題はありませんが、戦略がない場合は不安な時期を過ごします。オウンドメディアをやりきることが、いかに「言うは易く行うは難し」ということがわかるでしょう。

オウンドメディアの運営をやりきる3つの工夫

オウンドメディアをやりきるための3つの工夫をご紹介します。

1.成果が出るまでに時間がかかることを、意思決定者に認識してもらう

オウンドメディアは、質の高いコンテンツを半年〜1年間ほど発信し続けて、成果が現れるため、時間がかかります。

意思決定者が成果を出すまでの期間を見誤ると、担当者がプレッシャーを感じるばかりか「早々に撤退する」という事態に陥りかねません。担当者はオウンドメディアの運営を始める前に、意思決定者と期待値、KPIのすり合わせをしておきましょう。

オウンドメディアの運営開始から1年間は、コンテンツ発信の本数をKPIにすることがおすすめです。

2.ワンソースマルチユースを意識する

ワンソースマルチユースとは1つのコンテンツを、「新入社員のオンボーディング資料」「営業提案資料の補足用途」「サポートQAの工数削減用途」といった複数の用途で活用することです。

コンテンツを作っても、すぐにリード獲得や認知拡大にはつながらないため、ワンソースマルチユースできるコンテンツの制作を心がけましょう。

3.読者の声を積極的に聞きに行く

オウンドメディアの制作チームは「記事を読んだ読者のリアルな感想」がなかなか手に入らないため、担当者自ら読者の声を聞きに行く必要があります。

読者の声を聞きに行くことは、読者を理解する他にも、自社のオウンドメディアに対する感想もわかるため、担当者の励みにつながります。

日頃お客さまと接点のある営業部門やカスタマーサポート部門にも、読者のフィードバックをいただけるよう協力を依頼しましょう。

オウンドメディアの成功事例から見えた、3つの意外な事実

オウンドメディアの記事制作では、「SEOに関連する検索キーワードや検索ボリュームを軸にオウンドメディアの記事を企画する」というセオリーがあります。

オウンドメディアを運営している担当者は、検索キーワードや検索ボリュームが「オウンドメディア成功のための必須要件」と捉えていますが、オウンドメディアの運営に成功している企業を分析すると、違ったセオリーで成功を収めていることがわかりました。

1.「検索キーワードや検索ボリューム」は企画の必須要件ではない

成功事例を紐解くと、検索キーワードや検索ボリュームだけがオウンドメディアを成功させる道ではないことがわかりました。

キーワードマーケティング社は、検索エンジンからの集客を想定しつつも、記事を企画・制作する際には、検索キーワードや検索ボリュームを軸にテーマを決めていません。テーマの軸はあくまで、「お客さまから聞かれたこと」「お問い合わせ内容」「読者インタビュー」といった読者の一次情報にしていると語っています。

ティネクト株式会社が運営するBooks&Appsは、SNSからの流入を増やす方針でオウンドメディアを運営した結果、SNSからの流入数がオーガニック検索数とほぼ同数になりました。

※出典:ティネクト株式会社「オウンドメディアが、検索ではなくSNSからの読者を増やすべき理由と、そのための手法。

検索キーワードや検索ボリュームを意識せず書いた記事が、読者を獲得できるのは、以下の理由が考えられます。

・Googleから記事が評価された結果、予期せぬキーワードで上位表示される
・TwitterやFacebookなどのSNS、またはSlackやTeamsのようなダークソーシャル(※)で拡散される
・検索ボリュームの少ないキーワードが、トレンドの変化によって数多く検索されるキーワードになる

※ダークソーシャル:SlackやChatwork、Twitterの鍵アカウントなど、外部からアクセス不可能なSNSの総称。ダークソーシャルからのアクセスはアクセス解析ツールで可視化できず、「ダークトラフィック」と呼ばれる。

重要なポイントは検索キーワードや検索ボリュームではなく、「読者ニーズを捉えること」です。読者ニーズを捉えた記事であれば、読者はもちろん検索エンジンからも評価されます。


「検索キーワードがないと何をテーマに書けばよいのか分からない」という方はキーワードマーケティング社のように、「一次情報となるお客さまの声」を軸にした記事制作がおすすめです。

以下を参考に、テーマを考えてみましょう。

・営業部門やサポート部門がよく聞かれる質問
・お問い合わせ内容
・インタビューによって明らかになった課題

製造業の某オウンドメディアでも「お客さまからのFAQリスト」を作成し、リストのすべてを記事にした事例もあります。

お客さまの声をテーマに企画すると、読者の役に立つ記事を制作できます。SEOに頼らず、営業シーンでも活用できるため、ワンソースマルチユースが実現しやすいというメリットもあります。

2.外部パートナーも含めた運営体制を構築

オウンドメディアの運営体制は、「内製・兼任」「内製・専任」「外注・兼任」「外注・専任」の計4パターンに分類できます。取材した3社の運営体制を表にまとめました。

企業名運営体制
株式会社ホットリンク「内製・兼任」
兼任として3名が運営
HubSpot Japan株式会社「外注・専任」
オウンドメディアの専任担当者がコンテンツを設計、
ディレクションしながら、外部パートナーに記事制作を依頼
株式会社キーワードマーケティング「専任・内製」
すべての記事を専任担当者が内製
取材企業3社の運営体制

運営体制のパターンによって、それぞれメリット・デメリットがあるため、自社にあった運営体制を選びましょう。

内製外注
専任メリット
・記事の質を統一しやすい
・メディアのポリシーを反映しやすい
デメリット
・立ち上がりに時間がかかる。スケールしづらい
・教育や採用コストが大きい
メリット
・パートナーを増やすほど、制作速度を早められる。スケールしやすい
デメリット
・記事のクオリティを統一しづらい
・専任ディレクターに高い専門性が求められるため、
外部パートナーの採用難易度が高い
兼任メリット
・別業務と兼任することで、業務ノウハウが手に入り、記事制作にシナジーが期待できる
・配置転換にならないため、既存社員をアサインしやすい
デメリット
・業務量によっては、記事制作がおざなりになる可能性がある
・オーナーが不在になると、オウンドメディアが放置されがち
メリット
・社内負荷をもっとも抑えることができる
デメリット
・外注コストが大きくなる
・社内にナレッジを蓄えづらい

HubSpot社は、アメリカ本社では内製、日本法人においては内製と外注を活用する方針を取っており、ホットリンク社では、内製かつ兼任の体制を採用しています。

3社のオウンドメディアの成功事例をみても、運営体制の考え方はさまざまであり、いずれのパターンでも成功を収めることは可能です。

いずれの組み合わせにおいても、採用とオンボーディングが課題になります。必要なスキルセットの言語化や、オンボーディング資料の作成を準備しておきましょう。

3.業界未経験者が編集し、成果が出せるケースも

今回取材した3社の例でみると、執筆者や編集者の業界経験は必須ではないようです。

株式会社キーワードマーケティング

「広告運用経験のない自分だからこそ『素人目線』を大事に編集しています。僕自身が読んでわからなかったことは、きっと読者のみなさんもわからないだろうな、と。そのためちょっとでも疑問が浮かべば『この文章ってこういう解釈で合っていますか?』と執筆者とコミュニケーションをとり、どんどん肉付けするようにしています。時間はかかりますが、こうした地道なブラッシュアップでわかりやすさが増しているのではないかと思いますね」(大久保氏)

書き手が専門家の場合、どうしても内容が専門的になることがありますが、未経験者の目線を持った編集者が入ることで、読者視点のわかりやすい記事に仕上がります。

業界未経験者が執筆から編集までオウンドメディアを運営しているチームは、経験者に監修してもらうことで、記事の質を担保できます。

ここまでの内容を整理すると、業界未経験者のチームが成果を出すパターンは、以下の3パターンです。

1.業界未経験の編集者+業界経験者の執筆者
2.業界経験者の編集者+業界未経験の執筆者
3.業界未経験の編集者+業界未経験の執筆者+監修者

業界経験者や、専門家が一切関与しないチームだと、記事の質を担保できなくなってしまいます。「執筆者」「編集者」「監修者」のいずれかのポジションには、業界経験者をアサインしておきましょう。

まとめ

本記事では、オウンドメディアの成功事例を分析してわかった、共通点と意外な事実について解説しました。

オウンドメディアの運営を成功させるための「共通点」は4つです。

1.読者理解の徹底
2.コンテンツ発信における明確な指針の保有
3.意思決定者のコミット
4..徹底的にコンテンツ発信の戦略を立て、やりきる意志

一方で、オウンドメディアの記事制作における「意外な事実」は3つです。

1.SEOにまつわる検索ボリュームや検索キーワードは記事を企画・制作する際の必須要件ではない
2.外部パートナーも含めた運営体制を構築している
3.業界未経験者が編集し、成果が出せるケースもある

オウンドメディアの運営に迷っている方の参考になれば幸いです。
「コンテンツマーケティング探訪」シリーズについて知りたい方は、以下URLからご一読ください。

※関連記事:
ユニークで緻密な、ホットリンクのコンテンツ戦略
「インバウンド」なマーケティングの体現者であれ。HubSpotブログの裏側
業績258%UPに貢献した「キーワードマーケティングのブログ」が凡事徹底する5つのこと

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