「お金の新しい選択肢をつくる」をミッションに、BtoC向けフィンテックサービスで成長を遂げてきた株式会社カンム様。次なる一手として、ビジネスポテンシャルの大きいBtoB領域に参入し、将来の売上をすぐに資金化できる「サクっと資金調達」のベータ版を、2024年にリリースしています。
パートナー経由の販路を拡大するにあたり、「パートナーの営業担当者が売りやすい状態をつくる」という課題に直面し、才流にご相談いただきました。
プロジェクトでは、パートナービジネス戦略立案に加え、サービスの価値を直感的に伝える新しいカテゴリー設計に取り組みました。結果としてパートナーの営業現場での提案しやすさが向上し、10社以上との提携検討が進んでいるといいます。
同事業を推進する宮尾さん、岡田さんに、プロジェクトを振り返っての感想や手ごたえを伺いました。

右:株式会社カンム 事業開発 岡田 芳典(おかだ よしのり)さん
プロジェクト概要
| 企業名 | |
|---|---|
| 会社概要 | 業種:金融 |
| ご支援内容 | パートナービジネス戦略立案の支援(前半) |
| ご支援対象の商材 | 将来売上の前払いサービス「サクっと資金調達」 |
| ご支援期間 | 6か月 |
| ご支援前の状況 |
|
| プロジェクトのサマリ |
|
創業以来初のBtoB事業「サクっと資金調達」で次の一手へ
ー「サクっと資金調達」は、貴社にとってはじめてのBtoB事業と伺いました。どのようなサービスなのでしょうか。
宮尾 当社は2016年に、アプリで発行できるVisaプリペイドカードの「バンドルカード」を展開し、着実な成長を遂げてきました。 しかし、事業規模が拡大するにつれ、売上の成長率が新たな経営課題となり、次の柱となる事業を模索してきたのです。
そこで目を向けたのが、BtoB領域でした。この10年、フィンテックのBtoC領域では、多くのサービスが生まれていますが、BtoB領域はまだまだこれから。大きなビジネスチャンスを感じていました。
さまざまな展開を模索するなかで、たどり着いたのがレベニュー・ベースド・ファイナンス(以下、RBF)※です。2024年にベータ版をリリースした「サクっと資金調達」は、RBFを活用し、中小企業向けのポジティブでスマートな資金調達の選択肢として展開しています。
※レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF):過去の売上実績をもとに将来発生する売上を予測し、その見込み額の一部をすぐに資金化して受け取ることができる資金調達の仕組み。すでに発生している売掛金を買い取るファクタリングとは異なり、売掛債権がなくても資金調達できるのが特徴。

成長を加速させるためには、パートナーサクセスが必要だった
ーパートナービジネスへの取り組みは、どのように進んできましたか。
岡田 2024年のベータ版リリース時から、同じMUFGグループの決済代行会社をパートナーとしてスタートしています。
転機となったのは2025年です。さらなる販路拡大を目指し、次の大きな提携が決まりかけたタイミングで壁にぶつかりました。
パートナーは当時2社でしたが、月1回のメルマガ配信程度のフォローしかできておらず、思ったように案件数が伸びなかったのです。
一方で、提携を進めているパートナーからは高い期待を感じていました。もし期待値を下回れば、先方の熱量は一気に下がり、プロジェクトは失速しかねません。すぐにでもスタートダッシュを切りたい。しかし、パートナーを通じてお客様に価値を届けるためのノウハウが不足している状態でした。

宮尾 課題を解決する手がかりを探るなかで、「パートナーサクセス」というキーワードに行き着きました。パートナーにしっかりと価値を提供し、メーカーである当社とパートナー双方の事業が成長するよう取り組むべきという考え方を知り、これだと思いましたね。
パートナーサクセスを目指すために、知見をもつプロに伴走してもらったほうがいいと判断し、才流にお声がけしたんです。
ー才流とのプロジェクト開始前、とくに力を入れて取り組みたいと考えていたことはありますか。
岡田 大きく2点ありました。1つは、パートナーの営業担当者が動きやすい状態をつくること。現場の動きを最適化するのが大事だと感じていました。
もう1つは、パートナー戦略の解像度を上げることです。当時は決済代行会社との連携を進めていましたが、金融機関をはじめ、ほかにもパートナーの選択肢はたくさんあります。本当に攻めるべきセグメントはどこか。今、優先すべきパートナーはどこか。具体的な優先順位を見極めたいと考えていました。
パートナービジネス戦略の見直しと新カテゴリーの設計に着手
ーカンム様からのご相談を受け、才流はどのような支援を行いましたか。
亀井 今回のプロジェクトは、前半3か月でパートナービジネス戦略立案のご支援、後半3か月はカテゴリー設計やマーケティング施策のご支援を行いました。
パートナーの営業担当者がお客様に自信を持って提案するために、まずお客様の解像度を上げる必要があります。どんなにセールスツールを整備しても、そもそもターゲットがずれていては成果が出ないからです。そこで、お客様の分析やインタビューを行い、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成しました。
また、お客様が困ったときに誰を頼るのかを徹底的に掘り下げたうえで、プロダクトパートナーフィット(PPF)※を実現できる適切なパートナーを見定めていきました。


亀井 さらに、既存のパートナーへのインタビューから、営業担当者がぶつかる「想起の壁」があることが見えてきました。
「RBF」自体が比較的新しい仕組みのため、課題が起きたときに「RBFなら解決できる」と想起できるお客様は多くありません。パートナーの営業担当者は、その状態からお客様に説明をしなければならないのです。お客様が知っているものを売るよりも、知らないものを売るほうが、難易度は高くなりますよね。
そこで、お客様がすぐにイメージできるような言葉を組み合わせて、カンム様独自の定義をしようと考えました。「〇〇といえばこのサービス」という第一想起ポジションを獲得するための、カテゴリー設計です。
これには、まずユーザーインタビューや商談で、お客様がよく使う言葉や反応する言葉をリスト化しました。リストをアンケート調査でお客様にあててみて、さらに8つのカテゴリー候補に絞り込み、meta広告でABテストを実施。反応を検証していきました。
結果、最もお客様に響いた「将来売上の前払い」というカテゴリに決定し、Webサイトやコンテンツに反映していきました。

「まだ言語化できていない課題」を問い続けた6か月
ープロジェクトの6か月を振り返り、とくにリソースを割いたことは何でしょう。
岡田 才流さんに「いかに質の高いインプットをするか」という点は意識的に取り組みました。
週に一度のミーティングでは、事前に才流さんに共有した「課題の論点」を整理した状態でスタートします。才流さんがリードしてくれるので、どんどん前に進む感覚がありました。
だからこそ、私たちがやるべきなのは、本当に解決すべき課題を洗い出すことです。まだ言語化できていない課題をどう吸い上げ、どの優先順位で共有すればいいのか、常に考えていましたね。

テックタッチの方針を捨て、「電話」で突き止めた離脱の原因
ープロジェクトを進めるなかで、ターニングポイントとなった瞬間はありましたか。
宮尾 私たちは当初、人を介さずにシステムで完結するテックタッチのサービスを想定していました。でも、オンラインで資金調達のシミュレーションをした後、審査のプロセスで多くのお客様が離脱、滞留してしまうことがわかったんです。
そのとき桂川さんから、「原因を突き止めるため、今すぐお客様に電話をかけたほうがいい」とアドバイスをもらいました。

岡田 電話という選択肢がなかったので、正直、最初は戸惑いました。ただ、桂川さんから「今すぐかけるべき」と、このプロジェクトで一番の熱量で迫られまして(笑)。
宮尾 「このままではまずい、やるしかない」と言われたこと、私もよく覚えています(笑)。
岡田 桂川さんに「まだ電話できていません」とは、口が裂けても言えなかったですね(笑)。
桂川 その後、すべての施策をいったん止めて、岡田さんが翌日から電話をかけてくださいましたね。素晴らしい行動力でした。

宮尾 電話を通じて離脱の原因が浮き彫りになり、プロダクト自体の改善につながりました。単なるファネルの改善にとどまらない、事業そのものをブラッシュアップする大きな転換点になりました。
岡田 この取り組みがきっかけとなって、現在は専任担当者を採用してインサイドセールス体制を拡張する流れにまで発展しています。
パートナー商談の合意率やWebサイトのCVRも向上
ープロジェクトを終え、当初取り組みたいと思っていたことは実現できたと感じますか。
岡田 調査を通じて「パートナーとして金融機関が重要」という示唆が得られたので、アプローチを開始したところです。
パートナーの営業担当者が動きやすい状態をつくるという点は、土台が整い、まさにこれから動き出すフェーズです。
武器となる、営業資料やWebサイトの改善もできました。パートナーの解像度が上がったことで、訴求ストーリーが整理され、金融業界以外の方でも理解しやすい内容に仕上がったと感じています。
驚いたのは、お客様向けに作成した営業資料が、パートナー開拓の商談でも有効に機能していることです。提携合意までのリードタイムが短縮し、合意率も向上しました。現在、10社を超えるパートナーと包括的なアライアンスに向けた検討が進んでいます。
Webサイトの改善では、コンバージョン率が大きく向上しました。主要指標である、資金調達見込み額のシミュレーション実行率が、オーガニックで1.5倍、広告経由では2倍に跳ね上がり、手応えを感じています。
宮尾 実はリリース当初は、自社でのマーケティング施策には消極的な立場でした。金融ビジネスゆえに「Web集客は回収リスクが高い」「CPAが合わないのでは」などの仮説があって足踏みしていたんです。
しかし、パートナー経由の集客が軌道に乗るまで想像以上に時間がかかるため、2025年から取り組みはじめ、いま想像以上の成果につながっている。トライして本当に良かったと感じています。

ー定性的な変化はありましたか。
岡田 ポジショニングやペルソナなどマーケティング戦略が明文化、体系化されたことで、さまざまな施策を動かす際の基盤ができたと感じています。外部パートナーとの広告制作やWebサイト刷新の打ち合わせでも、まとまった資料があることでピントの合った議論ができています。
宮尾 社内の暗黙知が整理され、共通言語ができたと感じます。才流さんに作成してもらった資料は、関係者の認識合わせに大いに役立っています。
今回のプロジェクトで見つけられた「将来売上の前払い」という言葉によって、パートナーの営業担当者からは、「お客様にシンプルに価値を伝えやすくなった」という声がありました。
従来の「資金繰り支援」という見せ方だと、どうしても「財務状況が苦しい企業の支援」というネガティブなイメージを持たれがちでした。しかし、私たちが目指しているのは、事業拡大のための前向きな投資支援です。そういう意味でも、自信を持って売れるものになったと思います。
桂川 まさにリフレーミングの効果ですね。意味づけを変えることでパートナーやお客様の認知負荷が下がります。パートナーサクセスの重要なポイントになりましたね。
宮尾 認知負荷の軽減は、本当に重要ですよね。パートナーには本業があるからこそ、いかに簡単に説明できるかは、拡販の肝になります。マーケティング文脈で第一想起を狙うことは、パートナーサクセスにも直結するのだと感じています。

「将来売上の前払い」という新しいカテゴリーへの確信
ーコンサルタントから見て、プロジェクトで印象的だったことを教えてください。
亀井 お二人とも私たちに多くの情報を提供してくださり、プロジェクトに本気で取り組む姿勢が伝わってきました。コミュニケーションを深めやすい環境をつくってくださったので、当初はスコープ外だったWebサイトの改善や、インサイドセールスによるファネル改善まで取り組めました。
とくに印象深いのは、サービスの新しいカテゴリーを創出したプロセスです。カテゴリーやネーミングは意見が割れがちですが、今回はアンケート調査とABテストで裏付けを取りました。結果、全員一致で「これがベスト」とスムーズに意思決定ができた。こうした意思決定のスピード感こそが、このチームの強さだと感じます。
桂川 アドバイスをすぐに行動に移して、形にしてくださるので、私たちもそのスピード感にあわせて伴走させていただきました。
一方、支援の過程で頭を悩ませたのは、短期的な成果と、中長期的な投資のバランスです。目先の数字をつくるサイト改善は極めて重要です。同時に「このカテゴリーといえばサクっと資金調達」という第一想起を獲得するための種まきも、このタイミングでしかできない不可欠な挑戦でした。
リソースが限られるなか、何をどこまで追求すべきか。才流の社内でも何度も議論を重ね、みなさんと共に悩みながら答えを出していきました。最終的に導き出した「将来売上の前払い」という新しいカテゴリーには手応えを持っています。

岡田 プロジェクト中、才流さんのスピード感には助けられました。たとえばWebページの刷新でファーストビューの方向性に迷っていたところ、翌週には具体的なビジュアル案を提示してくださって。あれがなければ、予定していたローンチには到底間に合っていませんでした。
また、実務面での細やかな支援も心強かったです。オンライン広告やLP制作会社との打ち合わせにも同席し、直接やりとりをしてくれました。結果としてアウトプットの質が高まり、その後のやりとりもスムーズに行うことができました。
宮尾 私は才流さんの臨機応変さが印象に残っています。新規事業は状況がめまぐるしく変わりますが、その都度「今はこうすべき」と柔軟に軌道修正を提案してくれました。お二人が事業会社での経験をお持ちだからか、決して頭でっかちではない。いい意味で、コンサルっぽくないんですよね。
亀井さんは金融業界の経験も豊富で、業界特有の難しさも理解したうえで、同じ目線で話してくれるので話が早い。新規事業の立ち上げで浮上するさまざまな課題を、一つひとつ的確に打ち返してくれました。新規事業のトップラインを伸ばすための伴走支援をしてもらったと感じています。
とにかく引き出しが多くて、同じことをできる会社は、そういないのでは?と感じています。プロジェクトの途中からは、「困ったら何でも才流に相談しよう」という空気になっていました(笑)。
融資に代わる、当たり前の選択肢を目指して
ー最後に、「サクっと資金調達」の今後の展望をお聞かせください。

宮尾 「サクっと資金調達」は中小企業にとって、融資の次に選ばれる、当たり前の選択肢になりうるポテンシャルがあると確信しています。ですから、まずはしっかりと認知を広げていきたいですね。
今、社内ではAFaaS(Alternative Finance as a Service/アファース)というコンセプトをキーワードに掲げています。 大企業が持つ、中小企業との商流やサプライチェーンに、私たちのファイナンスサービスを黒子として埋め込んでいく。そのような、従来の融資とは異なるかたちのファイナンスサービスを、as a Serviceとして提供したいという想いを込めています。
RBFという枠を超えて、会社としてさまざまなBtoBファイナンスサービスを提供し、より強固なお客様基盤を築いていきたいです。
岡田 私はベータ版リリース後の間もない時期に、悔しい思いをしたことがあります。以前、サービスを利用いただいたお客様から「全然サクっと調達できない」と厳しい声をいただいたことがあったんです。
今では、才流さんの支援もあって、スムーズにご利用いただけるようになり、同業他社と比べても審査が早い、簡単などとお褒めのお言葉を多くいただけるようになりました。
どんなお客様にとっても、本当にサクっと資金調達できるように。サービス名に恥じないように、多くのお客様にサービスを届けていきたいです。
撮影:関口 達朗
取材・執筆・編集:藤井 恵
編集:安住 久美子