オフィスビル、商業施設、住宅など、多様な人が集まる「場」を提供する三井不動産株式会社様では、新規事業として2017年にシェアオフィス・レンタルオフィスの「ワークスタイリング」をスタート。以来、全国に約580拠点を展開し、契約企業数は約1,300社、会員数は約33万人と大きく成長を遂げています。
しかし、営業による顧客開拓を得意としてきた同社は、マーケティングによる集客の難しさに直面。戦略を絵に描いた餅で終わらせないために、実行までを支援するパートナーとして才流(サイル)にご相談いただきました。
利益に直結するマーケティングへの変革と、その過程で得られた成果について、プロジェクトメンバーの岸さん、若林さん、大野さんに伺いました。
プロジェクトの概要
| 企業名 | |
|---|---|
| 会社概要 | 業界:不動産 従業員数:1,928名※2025年3月31日時点 |
| ご支援内容 | 新規事業のグロース支援 |
| ご支援対象の商材 | シェアオフィス・レンタルオフィス「ワークスタイリング」 |
| ご支援前の状況 |
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| プロジェクトのサマリ |
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マーケ経験者0名で挑む、「三井不動産」注目の新規事業
ー「ワークスタイリング」はどのようなサービスですか。
若林 ワークスタイリングは、三井不動産が運営するシェアオフィス・レンタルオフィスです。すべてのワーカーに「幸せ」な働き方を、というパーパスを掲げて2017年に新規事業としてスタート。現在は全国に約580拠点を展開し、契約企業数は約1,300社、会員数は33万人にのぼります。
サービスの特徴として、三井不動産グループのデザイン会社と連携したハイクオリティな空間が挙げられます。快適に働ける空間づくりはもちろん、充実した貸し出し備品やリラックスコーナーなど設備やサービスにもこだわっています。
また、企業様が特に気にされるセキュリティ面の担保はもちろん、個室や会議室、大人数用のカンファレンスルームまで幅広く用意しており、ニーズに合わせて働き方や働く場所を選べる点も特徴です。

若林 ワークスタイリングは、三井不動産の基幹事業である法人向け賃貸オフィスを担う、ビルディング本部直下の新規事業です。社内最大規模の組織が取り組む、注目のプロジェクトであり、この事業を新たな中核事業へと進化させることが、私たちの重要なミッションです。

ー才流にご依頼いただく前、どのような課題がありましたか。
若林 ワークスタイリングは大手からスタートアップまで、多様なお客さまを対象としています。そのため、従来の不動産業で主流だった「対面営業による顧客開拓」ではなく、デジタルを含めたマーケティングで集客を最大化する必要性に直面しました。
岸 当社はジョブローテーションが活発で、新しい領域でも社員一人ひとりが主体的にキャッチアップし、形にしていく文化があります。ただ、マーケティングは専門性が求められる領域です。
さらに、2022年に黒字化を達成してからは、経営からの期待が一段と高まっていました。「失敗できない」「右肩上がりに成長させなければならない」というプレッシャーのなかで、確実に事業を成長させるには、プロフェッショナルの力が不可欠だと考えるようになりました。

ー才流に支援を依頼した経緯を教えてください。
若林 課題を整理するなかで、やるべきことの全体像は見えていました。ただ、それを正しい優先順位で効率的に進めるには、自分たちだけでは難しいと感じていました。
さらに、担当者が替わっても施策が止まらない、再現性のある仕組みづくりも急務でした。属人的な運用から脱却し、PDCAが継続的に回る体制を構築するうえでも、外部の力を借りることが最善だと判断しました。
数あるコンサルティング会社のなかから才流様を選んだ理由は、大きく3つあります。
まず、最大の決め手は、伴走支援の手厚さです。戦略の提案をいただいても、実行フェーズで私たちが動けなくては意味がありません。実行まで支えてくれる才流様のスタイルは、当社のニーズにマッチしていました。
2点目は、提案内容の具体性。そして3点目が、コンサルタントの雰囲気です。アウトプットや支援内容が明確で、担当の高野さんが私たちの心をがっちり掴んでくれました(笑)。
戦略設計から、メンバーの一員として伴走する実行支援まで
ープロジェクトはどのように進めましたか。
高野 今回のプロジェクトは、大きく3つのフェーズに分けて進めました。

高野 フェーズ1が、現状分析と戦略設計です。集客状況の分析や、どのような方に販売していくべきか、ペルソナの整理を行い、今後取り組むべき施策の抽出と絞り込みを行いました。
続くフェーズ2は、施策の実行と伴走支援です。Webサイトへの集客自体は競合他社と比較して大きく劣後している状況ではなかったものの、訪問後の受け皿には改善の余地がありました。そこで、ダウンロードコンテンツの整備や問い合わせフォームの改修など、コンバージョンにつながりやすい施策から優先的に着手し、一緒に動かしていきました。
そして現在、フェーズ3として引き続き施策の伴走支援を行っています。ワークスタイリング事業では、その事業規模に対してマーケティングの担当者が少ないという、リソースの課題を抱えておられます。私たちが施策の企画・制作の一部を専門領域として受け持つことで、三井不動産様が戦略の検討や意思決定に集中できる体制づくりを支援しています。
ー多くの企業を支援されてきた高野さんから見て、このプロジェクトの特徴はどこにありますか。
高野 率直に言って、難易度の高いプロジェクトだと感じています。ワークスタイリングはペルソナが13パターンほどあり、さらに拠点ごとに利用者の特性が異なるため、ターゲティングの掛け合わせが膨大になります。
本来であれば施策を絞り込み、リソースを集中投下するのが理想ですが、事業の成長を止めるわけにはいかない。その理想と現実のバランスをどう取るかが、常に問われるプロジェクトです。少人数の体制でこの複雑さに向き合っている皆さんは、本当に難しいことに挑戦されていると思います。

ターゲットの明文化が、現場の「確信」を生んだ
ー現状分析やペルソナの整理を行ったことで、どのような変化がありましたか。
岸 ワークスタイリングはお客さまの層が幅広く、誰に何を訴求すべきか、認識がバラバラになりがちでした。ターゲットが明文化され、共通認識ができたことで、進むべき方向に対する一体感が醸成されました。
ー実際に、営業現場や社内コミュニケーションに変化はありましたか。
岸 ありました。出社回帰に伴うニーズの変化がその一例です。コロナ禍でオフィスを縮小した結果、足りなくなった会議室の代替としてワークスタイリングを活用いただく、新しい兆しが見えてきました。
こうした層をペルソナの一つとして定義したことで、「彼らはどこにいるのか」「どうアプローチすべきか」と論理的にブレイクダウンして考えられるように。結果、営業がお客さまに「こういうニーズはありませんか?」と問いかけ、潜在的な需要を掘り起こせるようになったのです。
「このターゲットに営業するのは間違っていない」と確信を持って営業推進できるようになったのは、大きな変化でした。

営業とマーケティングの融合で利益を生み出す組織へ
ープロジェクトではさまざまな施策に取り組んでいますね。どんなサポートが役立ちましたか。
若林 多くの施策があるなか、どこからやるべきか優先順位をつけ、なぜやるべきなのかロジックを整理していただけたのは、すごくありがたかったです。社内への説明がしやすく、納得感をもってプロジェクトを推進できました。
また、施策の進め方についても知らないことが多く、ゼロからレクチャーいただけたので助かりました。
ーWebサイトの改善で、印象的だった点を教えてください。
若林 Webサイトは、それまでリブランディングに合わせたデザイン改修を行ってきました。そこに才流様が加わり、「いかにコンバージョンを生むか」というマーケティング視点へと切り替わったことが、ひとつの転換点だったと思います。
大野 今でこそ、私たちマーケティングチームは営業組織に属していますが、当初はブランディング組織に属していて、営業との接点があまりなかったんです。才流様とやり取りを重ねるなかで、営業との連携が進んだ背景があります。

高野 そうでしたね。プロジェクト初期に、営業とマーケティングの距離感に課題を感じていました。せっかく素晴らしいサービスをつくっているのに、横の連携がないのは勿体ないなと。
マーケティングは現場の声を拾うことが何よりも大切なので、営業の意向を汲み取る体制にできないか、と提案しました。
ー組織改変後、どんな変化がありましたか。
若林 マーケティング施策に対する営業側の理解が進み、マーケから営業への依頼がしやすくなりました。また、逆に営業経由でお客さまの声が日々情報として入ってくるので、顧客解像度もぐっと上がって、マーケティング業務も一段レベルアップしたように思います。
岸 確かに、組織改変によって「マーケティングは戦略の一つ」と認識されるようになりましたよね。
ブランディングチームにいた時は「ブランド価値を高めて見え方を良くする」側面が強く、問い合わせは「自然に来るもの」と捉える人も多かったように思います。
それが営業直下になったことで、問い合わせは「戦略的に取りに行くもの」と認知されるようになった。マーケティングが営業利益に直結する事業戦略として認識されるようになったのは、非常に大きな収穫でした。
実行支援に才流が入り込み、攻めのリソースを創出
ー現在は施策の実行を重点的に支援しています。どのような効果を感じていますか。
若林 フェーズ2で納得感のある施策を固めたものの、いざ形にしようとすると、多岐にわたる事業者様との調整に想定以上に時間を奪われてしまいました。
そこでフェーズ3では、各事業者様とのやり取りを才流様中心で行うことに。才流様がアウトプットの方向性を整理し、他の事業者様への具体的なディレクションまで一貫して行うことで、施策のスピード感と質が格段に向上しました。
おかげで、私たちは限られたリソースを戦略の検討やデータ分析といった業務に割けるようになっています。

ー具体的に、どのような実行支援が有益でしたか。
大野 現在、新規拠点の開業が続いており、それに伴う膨大なプロモーション業務も支援してもらっています。開業告知のメルマガも、0から作成するとかなりの時間を要しますが、才流様がたたきをつくってくれることでスムーズに業務が進んでいます。
萩原 ワークスタイリングではビジネスモデル上、オープンしただけでは利益は出ず、使っていただいて初めて売上になるので、開業販促はとても重要な取り組みです。ただ実際に支援をしてみて、その業務量に驚きました。
メルマガを1本配信するにしても、社内チェックや修正のやりとりが何往復も発生します。1拠点でも大変な作業を、何拠点分も……。皆さまが細かな実務に追われることなく、本来注力すべき意思決定にリソースを割ける環境をつくること。それがフェーズ3での私たちの介在価値だと考えています。

黒須 私がWeb周りの支援を担当して印象的だったのは、三井不動産様の軸の強さです。実行フェーズではどうしても手段(HOW)を優先しがちですが、皆さまは常に「顧客は誰か」「メッセージを届ける最適な施策は何か」と本質を問い直し、論理的に施策へ落とし込みます。
その一方で、スタートアップが選ぶようなアグレッシブな提案も、やると決めたら受け入れる。大企業ならではの盤石な土台と、ベンチャーのような挑戦心を高い次元で両立させている。そのバランス感覚こそが、この組織の強みだと感じています。

一番に選ばれるサービスを目指す、事業戦略としてのマーケティング
ープロジェクトによる成果を教えてください。
若林 部内全体で、マーケティング業務や実施している施策への理解が深まり、共通認識を得られたことが何よりの成果です。データから得られる示唆をもとに打ち手を考える、データドリブンなマーケティングが徐々に根付いてきていると感じています。
岸 ワークスタイリングという事業は、お客さまが必要を感じた時に来ていただくことが大切で、だからこそマーケティングの視点が欠かせません。部内にその認識が浸透し、問い合わせの件数やそこからの成約を定量的に見れるようになったのは大きな成果です。
ー才流のコンサルタントは、どんな存在でしたか。
若林 私は昨年4月にこちらの部署に異動し、マーケターとしてはゼロからのスタートでした。高野さんは基礎的なことも教えてくれて、頼りになる先生のような存在でした。いつも臨機応変に、幅広いテーマの相談にのってもらえたので助かりました。
岸 私が印象的だったのは、第三者としての説得力の強さです。他社事例も多く共有いただき、施策に踏み出す際の大きな判断材料になりました。自社だけでは知り得ない、外の成功事例を知れたのは貴重でした。
大野 私にとっては、もう一人のメンバーのような存在でした。フェーズ2で感じた、思うように施策が進まないもどかしさが、フェーズ3で一気に解消し、本当に助けられました。
ー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
若林 現在進行中の施策も多く、定量的な成果が目に見えてくるのはこれからです。才流様と共につくり上げてきた戦略をベースに、引き続き精度の高いマーケティング施策を展開し、より多くの方に使っていただくサービスへと成長させていきたいです。
岸 私たちが目指すのはシンプルに、一番に選ばれるサービスになること。「導入することが会社のためになる」と確信してもらえる事業でありたいですし、それが最終的なゴールだと思います。
サービスを継続し、広げていくうえで収益の追求は不可欠です。マーケティングも新規拠点の開業も、すべては地続きでつながっています。選ばれるサービスになるために、引き続き邁進していきたいですね。

(撮影/関口 達朗 取材・文/ 藤井 恵 編集/ 河原崎 亜矢)