2012年、「The End of Solution Sales」(ソリューション営業は終わった)という衝撃的なタイトルの論文がHarvard Business Reviewに掲載された。
論文には以下のように記されている。
The hardest thing about B2B selling today is that customers don’t need you the way they used to.(※you=営業担当者)
つまり、“インターネットの普及により、顧客が自ら課題の設定や情報収集、業者選定を行えるようになったことで、「営業」という職種のあり方が変わっていく”ことを示唆している。
あれから、6年以上。購買行動の主導権はますます顧客が握るようになっている。
マーケティングとテクノロジーが営業の役割を奪う
今時、企業がなんらかのツールやサービスを導入しようと思った時、Webで大体の情報は調べられる。セミナーやイベントに参加すれば、先進企業の取り組みやキーポイントを知ることも難しくない。
かつて営業職が担っていた役割を、マーケティングとテクノロジーがものすごい勢いで飲み込み始めているといえる。
表にするとこんなイメージ。
この状況を予期していた企業は、顧客自らが情報収集、業者選定、意思決定をできるよう、料金表や競合比較、活用方法の提案、懸念事項への回答等を、すでにWeb上で発信している。
商談日程の調整も、オンライン予約システム上で行なう企業(SmartHRやRakSulのハコベルなど)も現れ、Webだけで申し込みまで完結できるサービスも増えている。支払いはクレジットカード決済か、月末に自動で請求書がPDFで送付されるものが多い。
こうなると、営業を持たない会社も増えていくのではないだろか。
営業職ゼロで400億円を売り上げる、オーストラリアのソフトウェア企業『Atlassian』のCEO スコット・ファークァー氏は
できるだけ多くのソフト開発者にリーチするには、営業マンが1人1人電話をかけていては間に合わない
とインタビューで語っている。
高度化する営業スキル、求められる人材
この状況下で、営業パーソンの役割として残りそうなものを考えると、ぱっと4つほど思いあたる。
- 顧客すら気付いていないインサイトを見つける力
- 顧客の要望を、自社と顧客の双方にとって適切な要件に落とし込む力
- 外部ツールやパートナーを組み合わせて、最適な提案をするプロデュース力
- 話して楽しいといった情緒的な面
上記はいずれも、専門的なスキルや自社に対する深い理解、人的ネットワークが必要になり、高度人材で無ければ成し遂げることが難しいだろう。
時々「いい営業が取れない」「営業が育たない」という話を聞くが、そもそも現代の営業に必要なスキルが高度化しているのではないだろうか。もちろん、高度なスキルを持つ営業パーソンにとっては、これまで以上に活躍できる時代が到来したといえる。
あくまで机上の議論ではあるが、「営業攻勢をかけるために、薄給の営業を大量採用する」より「マーケティングとテクノロジーに投資し、高度人材の営業をごく少数、高給で雇う」方が、今後合理的な戦術になっていく気がする。