業界構造を分析し、パートナー候補を見つける

自社がパートナービジネスに取り組む目的が明らかになったら、ターゲットとする顧客の業界構造を分析します。

ポイントは、顧客起点で分析すること。次の2つを明らかにし、ターゲットとする顧客の窓口部門とグリップが強い企業を特定します。ここで特定された企業こそが、自社のパートナー候補です。

  1. 顧客へのラストワンマイルのタッチポイントを制しているのは誰か
  2. 顧客は、誰から購入するのか

ちなみに厚い顧客基盤を持っているパートナーは魅力的に見えますが、これはよくある落とし穴です。確認すべきは、顧客のどの部門に窓口があるか。たとえば経理部門とのパイプが強いパートナーに、人事向け商材を担いでもらっても望む結果にはつながりにくいでしょう。

ここからは業界構造を分析するときのプロセスについて解説します。上の2つのポイントについて、次のステップを踏んで明らかにしましょう。

  1. 顧客セグメントの特定
  2. 業界関係者へのインタビュー
  3. 競合調査
  4. 商流図の作成

ステップ1.顧客セグメントの特定

まずはパートナービジネスに取り組む目的にあわせて、ターゲットとする顧客セグメントを特定します。企業の特性や部署を軸に検討しましょう。

具体的には、次のような軸で検討するとよいでしょう。

  • 業界、業種
  • 従業員数
  • 売上高
  • 設立年数
  • 部署・職種
  • 競合他社が注力している市場
  • 過去の商談や受注の分析結果
  • 潮流(法改正やトレンドなど)
  • 自社の強みがいきる
  • 自社のシェアが低いエリア

ステップ2.業界関係者へのインタビュー

顧客セグメントを特定したら、業界エキスパート、見込み顧客、自社の既存顧客でかつ、パートナービジネスで狙う顧客セグメントに属している顧客にインタビューを実施します。インタビューを通して、ターゲットとする顧客の業界構造やプレイヤーの解像度を高めましょう。

主要プレイヤー、商品・サービスを選定する際に誰がキーパーソンになるのか、関係者はどのような力関係になっているのかを把握します。

また見込み顧客・既存顧客へのインタビューは、商品・サービスをどのように使っているかを理解することを目的として実施しましょう。商品・サービスの使われ方がわかると、どうやって購買しているかの仮説が立てられるようになります。

もしインタビューを依頼できる業界エキスパートや見込み顧客がいない場合は、さまざまなビジネス領域の経験者に対面や電話で相談できるサービス「ビザスク」やクラウドソーシングサイト、ビジネスSNSで探したり、依頼したりするとよいでしょう。そのほか、展示会に出展している企業へのヒアリング、代理店や商社へのインタビューも有効な手段です。

インタビュー対象者質問例
業界エキスパート業界構造、主要プレイヤーについて教えてください
主要な代理店、商社、導入支援企業について教えてください
それぞれのプレイヤーの特徴、強み、すみ分け、商圏(エリア)について教えてください
エンドユーザーからよく求められる情報について教えてください
見込み顧客・既存顧客誰に相談することが多いか教えてください
誰から購入しているか教えてください
納期、価格の情報をどこで確認しているか教えてください
導入後のサポートは、誰に相談しているか教えてください
インタビュー対象者と質問のイメージ

<例>商品が業務用プリンターの場合

【分析結果】
顧客へのインタビューから、業務用プリンターは工場のラインで自動貼り付け器と連携して使用されていることがわかった

【仮説1】
自動貼り付け器やもっと上流のシステムを売っているベンダーに選択権があるかもしれない
→上流を抑えているベンダーがパートナー候補として考えられる

【仮説2】
組み込みではなく、単純に連携しているだけなら、業務用プリンターだけを入れ替えるかもしれない
→顧客に出入りしている会社がパートナー候補として考えられる
→直販の可能性も考えられる

才流では、質問事項をまとめたテンプレートを用意しています。インタビュー相手に応じて、次の記事からダウンロードしてご利用ください。ダウンロードに個人情報の入力は不要で、どなたでもお使いいただけます。

※関連記事:
見込み顧客へのデプスインタビューの効果を高める26のチェックリスト~ビザスク活用編~
パートナービジネスで解像度を高めるための「パートナーインタビュー」テンプレート付き
既存顧客へのインタビュー項目シート。契約に至るプロセス・ユーザーの情報収集方法まで

ステップ3.競合調査

顧客や顧客の業界構造への理解が深まったら、競合調査に取り組みます。

競合他社を理解することは、業界構造の把握だけでなく自社の優位性やポジショニングを明確にするうえでも役立ちます。競合他社が提携しているパートナーの属性、契約形態、動向などを調査しましょう。

調査の目的調査項目記入例
業界構造の把握パートナー属性事務機商社、ITコンサルティング
おもなパートナーの社名●●●株式会社、▼▼▼株式会社
パートナー制度の契約形態紹介・取次・再販
競合優位性を見出すための調査IR資料でのパートナービジネスへの言及パートナー売上比率nn%、◎◎業界を狙う
パートナービジネスにおける過去1年の動き■■■を目的に△△△と業務提携
商品・サービスの価格設定初期費用XXX円、月額XXX円
商品・サービスの特長□□□ができる、nn社以上の導入実績
導入顧客の傾向中小製造業、経理部
競合調査の目的とおもな項目

ステップ4.商流図の作成

業界関係者、および競合調査から得た情報をもとに、商流図を作成します。

商流図とは、業界構造を図示したもの。チャネル開拓やパートナーを選定する際の優先順位の検討などに利用します。商流図の作成を通して、代理店、商社、インテグレーターなどのプレイヤーを洗い出します。同時に、当該業界における主力企業も整理しましょう。

なお、業界構造はターゲットとする企業規模や業界によって異なるので注意してください。

商流図のサンプル

図版:AWSの商流図のサンプル。自社であるAWSから中間プレイヤー、エンドユーザーへと矢印が向いている
商流図の例(AWSの場合)
図版:ITサービスの商流図のサンプル。デジタルツール・SaaS提供事業者から比較サイト、ディストリビューター、士業、地域ITベンダー、コンサル会社などのパートナー、これらのパートナーから中小企業・小規模事業者、大企業にそれぞれ矢印が伸びている。パートナーを介さずに直販として伸びている矢印もある
商流図の例(ITサービスの場合)

商流図を作成するときの3つのポイント

商流図を作成したら、登場するおもなパートナーの特徴を整理し、自社と相性のよさそうなパートナーのあたりをつけておきます。具体的な候補の探し方はこのあとの「パートナーの開拓」で説明しますが、商流図を作成するときは次の3つのポイントを押さえましょう。

ポイント1.売上を伸ばすために注力すべきチャネル、主要企業

ターゲットとする業界や企業規模にアプローチするために有効なチャネルはどこか。組むべき企業の具体的な候補。

ポイント2.ターゲットに対して直販が可能か、中間プレイヤーと組むべきか

直販だけでアプローチできないターゲットについて、どの中間プレイヤーと組むのが有効か。また売上比率が高いのはどの企業か。

ポイント3.直接販売しないが、影響力があるので組むべき相手

直接販売以外のプレイヤーはどの企業か。また必要な支援内容は何か。

※上で紹介したITサービスの商流図のように、士業やコンサルのように販売はIT商社経由、顧客への販売は別のプレイヤーというケースがある

才流では商流図のテンプレートを用意しています。次の記事で作成方法も解説しているので、ぜひご覧ください。テンプレートをダウンロードするのに個人情報の入力は不要で、どなたでもお使いいただけます。

※関連記事:業界のビジネスモデルを商流から理解する方法【商流図テンプレート付き】

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