名古屋を拠点に、中京広域圏を放送対象地域とする中京テレビ放送株式会社さま。企画・制作している番組『ヒューマングルメンタリーオモウマい店』は、日本テレビ系列各局で放送され高い人気を得ています。
今回、中京テレビさまが注力している4つの新規事業について、「PMFまでの現在地を知りたい」と才流にご相談をいただきました。
才流は2023年4月から、PMF達成に向けた戦略立案と施策実行の伴走支援を実施。プロジェクトを振り返り、どのような成果があったのでしょうか。ビジネス開発を担当する部門の中村さま、奥村さまに伺いました。
PMF(ピーエムエフ)とは、Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット)の頭文字を取ったものです。商品が顧客のニーズを満たし、その商品を欲しがる顧客がたくさんいる市場に提供されている状態を指します。
新規事業の営業・マーケティングに関する知見が不足していた
― 新規事業に注力しはじめた背景を教えてください。
中村 テレビ局を取り巻く環境は大きく変化しています。これまでと同じことをやっていてもだめだと、どのテレビ局も考えるようになっていますよね。
私と奥村が所属しているビジネスプロデュース局は、放送事業外の収益を生み出すことを目的に新規事業に取り組んでいます。
中村 現在、メタバースを活用したDXサービス「エブリバース」、ドローンスクール「そらメディア」、子ども向けプログラミングスクール「codopo」、デジタルアート美術展「出現画廊」の4事業を展開しています。
ただ、われわれはテレビ局なので、営業の方法が特殊なんですよね。広告代理店が大手広告主から取ってきた案件が多く、私のこれまでのキャリアの中では、直に顧客のニーズを吸い上げて具現化することはほとんどやってこなかった。
ですから、顧客一人ひとりにむけたビジネスでの知識は、ほとんどない状態からのスタートでした。どんな訴求をすればいいのか、どうやって売っていけばいいのか。手探りで進めてきたんです。
4事業の状況もバラバラで、今後どう進めていけばいいか、迷っている状況でした。
― そこで、才流にご相談をいただいたわけですね。
中村 社内の者が新規事業について調べていたところ、わかりやすくPMFについて解説した才流の記事を見つけたことから、問い合わせをしたそうです。
「PMFを目指すうえで、4事業がどのくらいの位置にいるのか?」現在地を知りたいというのが、当初ご相談したことでした。
奥村 事業の成功という目的はありましたが、才流からマーケティングや営業に関するノウハウを吸収し、自走できる体制を作りたいというのも、裏テ―マとしてありました。
1か月目は、4事業のPMFに対する現在地を探る調査・分析
― プロジェクトでは、具体的にどのようなことを行いましたか。
細田 最初の1か月で、4事業の現在地を明らかにするために、調査・分析を行いました。
見込み顧客や業界エキスパート、事業責任者など、複数のかたにインタビューを実施。
・見込み顧客にはどんな課題があるか
・バーニングニーズはあるのか
・提供するソリューションで本当に課題を解決できるのか
などを、フィットジャーニーに沿って探っていきました。
細田 分析を進めていくと、4つのなかでもドローンスクール「そらメディア」がもっともPMFに近いことが見えてきたんです。
そこで、まずは「そらメディア」でPMFを目指し、成功体験を作ろうと決定。2か月目からは「そらメディア」の戦略立案に絞ってご支援したという流れです。
同時に、「この新規事業をそもそもなぜ、中京テレビがやるのか」という部分を、中京テレビさまのビジネス的な視点だけではなく、お客さまの視点でどうとらえるのか。実際にお客さまに話を聞きながら、中京テレビさまが取り組む意義をまとめてご提案させていただきました。
2か月目からは「そらメディア」のPMFに絞り、戦略立案
ー ドローンスクール「そらメディア」では、これまでどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。
中村 「そらメディア」は、とある高校の校長先生から相談を受け、3年ほど前に生まれた事業です。その高校では、高校生がドローンに触れる活動を実施していたのですが、資格をとる場所がないとお困りでした。
そこで、スクールを作り、資格取得をサポートしようと考えたんです。われわれは空撮の技術を持っていますし、系列局にドローンの操縦指導もしていたので、ノウハウは持っていました。
ただ、高校生向けということもあり、価格は低めに設定し、地域貢献的な要素が強かったですね。
中村 事業として大きくしていくためには、高校生向けだけでなくターゲットを広げる必要があります。そこでリサーチをはじめ、次に注目したのが、建設業における産業ドローンの活用です。どうやらニーズがありそうだ、というところまでわかってきたところで才流に入っていただきました。
ターゲットをより明確にしていく、細分化していく部分を進めていただきましたね。
細田 そうですね。われわれとしては、まずはフラットにさまざまな業界における可能性を調査し、やはり建設業のお客さまをメインターゲットにしていくのがいいだろうと確認できたんです。
そこで、建設業の見込み顧客にお話を伺ったり、全国のドローンスクールの活動を調査したり。お客さまのニーズがどこにあり、どんな訴求メッセージがささるのか、一つひとつ確認をしていきました。
また、建設業のお客さまはオフラインの接点を重視する傾向があるので、オンラインによるナーチャリング強化に加えて、オフラインのFAXによるDM施策やテレアポも強化していくことをご提案しました。
顧客の検討段階や利用するチャネルに応じたコミュニケーション設計も非常に重要です。これまではDMで接点を持ったり、Webサイトに訪問したりするとすぐに「申し込み」というCTAを用意していたのですが、お客さまからするといきなり申し込みをするのはハードルが高いんですよね。
無料説明会やセミナーなどで、申し込みにつながる階段を一歩ずつ登ってきてもらう階段設計がポイントでした。
野田 建設業のお客さまには、企業に所属している人もいれば、個人事業主、いわゆる一人親方もいらっしゃいます。企業に所属している人であれば社内で稟議にかけるという工程がありますが、一人親方はWebサイトを見て、そのまま受注というケースもあるんです。
ですから、企業のお客さまには階段設計で「資料請求」という出口を、一人親方のお客さまには「申し込み」という出口を、それぞれ用意する必要がありました。建設業界をターゲットにする際の、特徴的な部分だったと思います。
受注見込みは2倍以上、営業チームに根付いた顧客視点
ー プロジェクトを振り返り、どのような成果がありましたか。
奥村 全体像を俯瞰して見る部分と、細かい改善の部分。両方を同時に進められたことは非常に大きな成果だと思います。
担当者としては、両方重要だと思ってはいるものの、どうしても手が回り切らない部分があったんです。そこを才流がすべて整理してくださった。最速で必要なことに着手でき、私自身もやるべきことに集中できました。
それから、才流が壁打ち相手になってくれたことは、とても心強かったです。
マーケティングを進めるうえで、一人ですべての意思決定をしていくというのは、とても心細いものなんですよね。すぐに成果が出る施策ばかりではないですし、確実に成果が出るとも言い切れない。そんなときに、才流が「これは優先度が高い」「これをやれば成果が出ます」と言い切ってくれた。チャットや定例でいつでも相談できる状況を作っていただけたのも、ありがたかったです。
いま、数字の成果も出てきているので、やってきたことは正しかったんだと思えます。会社から結果を求められているなかで、一人だったら心が折れていたと思いますね(笑)。
中村 はじめてお客さまから申し込みをいただいたのが2023年の2月。DMだけに頼った一本足打法の施策から脱却するため、4月から才流とのプロジェクトをはじめ、少しずつお問い合わせや申し込みが増えてきました。
「そらメディア」には国家資格を取得できるコースがあるのですが、9月の受注見込みは7月の2.7倍になっています。テレアポや問い合わせに対する営業を改善していただけたことが、非常に効いていると思います。
改善前は、電話で問い合わせを受けても、ただ聞かれたことに答えるだけのような状態でしたが、いまはこちらから積極的に質問をしてお客さまの話を聞こうとしています。メンバーの意識が変わり、「お客さまの話を聞こう」という文化が生まれつつあります。
また、展示会のノウハウを教えていただいたことも、大変勉強になりました。展示会では、事業の広がりを感じさせる出会い、未来を見据えた出会いがありました。
プロジェクトに参加した横澤さまのコメント
「顧客や市場理解に向けたリサーチ活動、KPIの設定などのプロセスが大変参考になりました」 横澤 義貴さま/中京テレビ放送株式会社 ビジネスプロデュース局 副部長
「自分たちの思いを形にしただけでは、PMFはできない」
ー PMFに向け、手応えはいかがでしょうか。
奥村 いま、ようやく商材として成り立ってきたという実感があります。才流がやってくれたさまざまな調査やインタビューから、われわれが提供できる価値や強み、勝ち筋が見えてきたからです。
「ドローンスクールは、どこで受講しても同じ」というところから、「中京テレビだから、ここで受講したい」とお客さまに思ってもらえる部分を確認できたので、自信を持って売れる状態になりました。
ブラッシュアップは必要ですが、着実にPMFへのステップを進んでいると思います。
中村 そうですね。まだまだドローン自体の認知を広げていく必要がありますし、ソリューションとしても作り上げていかなければなりません。
PMFを目指すためには、自分たちがいいと思うもの、思い描いたものを形にするだけではだめで、「お客さまありき」で作っていかなくてはいけない。このことを、改めて実感しています。
われわれはテレビ局なので、取材活動には慣れていますし、これまでもお客さまに話を聞く機会はありました。しかし、それをソリューションやWebサイトに反映できていなかった。顧客視点でアウトプットできていなかったんですよね。
いままさに、顧客視点で施策を改善・実行しているフェーズです。いまやっていることを下期に型化し、事業成長を加速していきたいです。
第三者視点のアドバイスが、実行スピードを上げる
ー 才流とのプロジェクトを経て、「外部の支援会社を入れる価値」をどのように感じていますか。
中村 さまざまな業界の知見や事例をもとにアドバイスをいただけるのは、価値だと思います。特にテレビ局というのは、ある意味特殊な業界ですから。われわれが知りえないことを、才流の幅広い支援経験から教えてくださるのはありがたかったです。
われわれはクライアントなので、才流からすると指摘しにくいこともあったかもしれませんが(笑)、ときには言葉に詰まりながらも、さまざまなアドバイスをいただきましたね。
奥村 第三者視点で、社内の事情や感情論に左右されず、事業を成功するために必要なことを言ってもらえる。これが外部の支援会社を入れる一番の価値だと、才流の支援を受けて感じました。
また、私が社内で「この取り組みが必要」と言ってもすぐには通らないかもしれませんが、上司が同席する場で才流が直接言ってくれると、通ることもある。実行スピードも変わってきます。
ー 才流の支援は、どのような会社にフィットすると思いますか。
奥村 売りたい商品・サービスは決まっているけれど、なかなか売れない状態の新規事業ってたくさんあると思うんですよね。そういう会社が、たとえば「この1年で結果を出したい」というときに、才流に支援をいただくと良いと思います。本当に売れるのか、売れないなら撤退するかどうかも含めて、見極めたいという場合ですね。
中村 私は、やはりノウハウがない企業におすすめしたいですね。
たとえば、「お客さまに話を聞くのは大事だとわかっていても、方法がわからない」「この商品を、どう営業したらいいかわからない」とか、そういった会社はたくさんあると思うんです。才流にご相談をすると、事業成長のスピードが上がると思います。
才流には、そらメディア以外の事業についても引き続きご支援をいただいています。目標達成に向け、実行スピードをあげていきたいと思います。
(撮影/関口 達朗、取材・執筆・編集/安住 久美子)