世界75カ国・地域に2200のオフィスを持つ人材サービスのグローバルカンパニー、マンパワーグループ様。国内では日本初の人材派遣会社としてスタートし、日本法人設立から55年以上の歴史と実績を誇る。
人材派遣事業では「仕事を探している求職者」と「人材を募集する企業」の双方が顧客となる。マンパワーグループ様では、求職者を集めるBtoCマーケティングの知見を有していたものの、企業の開拓や拡販においては営業パーソンによる活動が主体となっていた。
そこで新たにBtoBマーケティングの体制を築くべく2021年2月から才流によるコンサルティング支援を開始。今回は、同社ビジネスマーケティング部デジタルマーケティング課 課長の野木さん、同課 アカウントセールス主任の豊嶋さんに、才流の支援で得られた成果や率直な感想を伺った。
マンパワーグループ様との取り組み
【課題】
- 手探りのBtoBマーケティングだった
- スピード感を持って施策を実行したかった
【提案内容】
- 業界特有の顧客の行動を基にしたBtoBマーケティング戦略の立案
【成果】
- デジタル経由のリード数が前年比2.6倍
組織の立ち上げから1年でコロナ禍に突入
BtoBマーケティング施策のスピードアップが急務に
ー 才流に依頼する前のBtoBマーケティングのご状況について教えてください
野木 才流のコンサルティングがスタートしたのは2021年2月。当社が本格的にBtoBマーケティングに取り組み始めたのは、その1年程前の2020年1月です。
もともと求職者を集めるBtoCの領域では、デジタルマーケティングを取り入れていました。一方、BtoBマーケティングに関しては営業力が強かったこともあり、ほとんど何も着手できていなかったのです。
しかし現状以上に効率的に顧客開拓を進めていく必要があると考え、BtoBマーケティングを推進するチームを立ち上げることになりました。
ー BtoBマーケティングに着手したのが2020年というのは、コロナ禍の影響もあったのでしょうか。
野木 いえ、実はBtoBマーケティングに注力しようと予算を編成したのは2019年なんです。コロナ禍の影響で意思決定したわけではありませんでした。
ただ、結果的にこのタイミングでBtoBマーケティングを始められてよかったと思っています。
求人需要の低下に加えて、対面での営業活動が難しくなりましたから。もともと私たちの強みだった営業力を発揮しにくい局面で、早期にBtoBマーケティングを始められたのは大きな意味があったと捉えています。
ー なぜ、外部のBtoBマーケティング支援を受けようと思われたのですか。
野木 私たちにとってBtoBマーケティングは未知の領域でした。BtoBマーケティング関連の書籍を読んだり、セミナーに参加したりして、まさに手探りで進めていたんです。それこそ才流が発信するコンテンツも、参考にしていました。
自分たちなりに学んだメソッドを試すと、確かにサイトのCV(コンバージョン)も上がり、成果につながっていく手応えを感じていました。ただ、そんなときにコロナ禍に突入して…。社内的にも、もっと施策の実施スピードを上げていきたいと。そのためにはBtoBマーケティングを熟知し、しっかりと戦略を作れる専門家の協力が必要だと判断したんです。
ー 才流のことはどのように知りましたか。依頼の決め手は何だったのでしょうか。
野木 以前から才流が発信するコンテンツを拝見していましたから、社名は存じ上げていました。直接コンタクトをとるきっかけになったのは、才流のコンサルタントである小島さんが登壇したセミナー「人材、製造、医療…etc のデジタルマーケティング立ち上げ事例と、マーケティング課題別の解決事例」への参加でした。
才流に対してはもともと「BtoBデジタルマーケティングのプロフェッショナル」という印象がありました。セミナー当日、小島さんの講演を聞いて、その印象がさらに強くなって。直観的な話になってしまうのですが「この会社なら信頼してお任せできる」と感じて、それが才流に依頼する決め手になりました。
「サイト訪問の段階では、発注の意思決定は終わっている」BtoBマーケティング戦略立案におけるヒントとなった、見込み顧客の言葉
ー 才流が行ったマーケティング支援の概要を教えてください。
黒須 まずは3ヵ月をかけてBtoBマーケティングの戦略立案を行い、以降はサイトのCVR(コンバージョンレート)強化を目的とした施策の実施を伴走支援しています。
戦略立案でまず注力したのは、顧客の解像度を高めること。現場の最前線にいる営業の方々にヒアリングし、マンパワーグループ様としての強みやお客様が抱えている課題などを整理していきました。
また、人材派遣会社に発注経験のある経営者へのインタビューも5名以上、実施しました。情報収集の方法や発注理由、検討段階で人材派遣会社のサイトをどのように活用しているかなどを丁寧に伺い、顧客心理や行動パターンを見極めていったんです。
最終的にはマンパワーグループ様の顧客ターゲットを複数パターン定義し、それぞれに対してどのようなメッセージを打ち出し、どんな施策を実施するべきかを提案しました。
野木 振り返ってみると、自分たちだけでBtoBマーケティング施策に取り組んでいたときには、戦略やベストプラクティスが明確になっていなかったんですよね。黒須さんに丁寧に市場や現状分析をしていただいて、そのことがよくわかりました。とくに顧客理解では私たちが見落としていたポイントが多々あり、非常に興味深かったです。
豊嶋 私が印象に残っているのは、インタビューに協力してくださった経営者の方が「コーポレートサイトを見る段階では、すでに発注の意思決定が終わっている」とおっしゃったこと。“人手が足りない”という状況は、今すぐにでも解決したいニーズです。そのため、意思決定のスピードが、私たちの想定以上に速かったのです。
それらの顧客理解が、最短コースで申し込みを完了できるようにフォームをファーストビューに表示したり、記事とフォームを一体化させたりといった改善につながりました。
黒須 ニーズの発生から情報収集、意思決定までの「検討期間の短さ」は、人材派遣業界ならではの特徴だと感じました。顧客がパッとあらわれて、すぐに検討して、ふっと消えてしまうようなイメージなんです。
ですから、サイトに訪れたお客様がなるべく迷わずに行動できるような仕掛けをどんどん追加していきました。また「人材ニーズが発生した直後の顧客といかに接触するか」について、よく話し合っていましたよね。
野木 これも黒須さんからご提案いただいたのですが、顧客をニーズごとにセグメントして、それぞれのニーズに合わせてLPの種類を増やしました。見込み顧客インタビューの結果、早い段階で顧客ニーズが明確化されているとわかったからです。 単純にセグメントをすればいいというわけではなく、需要のボリュームを見ながらにはなりますが、結果的にCVRは2倍近く上げられました。
経営陣や営業部門から評価の声も
コロナ禍で市況が冷え込む中、リード数は前年の2.6倍に
ー 今回のプロジェクトで得た成果を教えてください。
野木 戦略立案から施策実施まで支援いただき、CVR強化に取り組んだ結果、数値としても非常に高い成果が出ています。2021年8月までのデジタル経由のCV数は前年の2.6倍。コンテンツサイトのPVも大幅に増加しました。
社内でも経営陣や営業部門から評価いただく声が多くなりました。
2021年の前半は、市況的には求人数が激減していましたが、その中でも当社のコーポレートサイト経由での問い合わせは途切れず、むしろ増えている状況でした。BtoBマーケティングチームに期待されていた成果を出せたと感じています。
そして「BtoBマーケティングにどう取り組んでいくべきか」の道筋が見えたこともまた、何よりの成果です。競合や顧客分析を踏まえ、どのマーケティング施策を実施すれば、よりスピーディに成果を出せるのか。施策ごとのインパクトや優先順位も理解できました。
ー 才流との仕事で「依頼前の想定と違う」などギャップを感じたことはありましたか。
野木 そうですね。実は当初は、セミナーでお会いした小島さんにコンサルティングをお願いしていたんです。正直なところ、担当コンサルタントが黒須さんになったのは想定外でした(笑)。
小島さんと黒須さんってタイプは違うのですが、才流として目指すことは同じですし、才流メソッドはコンサルタント全員が共通して持ち合わせているものなのだと、あらためてわかりました。
私から見た黒須さんは「嘘のない人」です。得意領域ではないことは正直にそう伝えてくださるので、かえって安心して相談できます。また、これまで培ってこられた知識や実績が豊富ですよね。才流共通のメソッドに、黒須さんの色を付け加えてコンサルティングしてくださっていると感じ、「黒須さんにお願いできてよかった」と心から思っています。
ー 最後に才流に期待することについて教えてください。
野木 マンパワーグループは総合人材サービス企業です。取り扱っているサービスは人材派遣のみならず、多岐にわたります。
現在は人材派遣事業におけるBtoBマーケティング支援を依頼していますが、商材が違えば、市場や顧客特性も異なり、戦略や施策も変わってくるでしょう。今後はぜひ、人材派遣以外のサービスにおいても、ご支援いただきたいと考えています。
(撮影/矢野 拓実 取材・文/猪俣 奈央子 編集/森 駿介)