持続可能な社会の実現をめざし、多様な社会課題をITの力で解決するソリューションプロバイダーの株式会社日立ソリューションズ様。事業領域は製造、流通、通信など多岐にわたり、さらに350を超える多種多様な商材を提供しています。そんな同社のデジタルマーケティングを推進しているのが、デジタルマーケティング営業本部です。
同部署から「BtoBマーケティングのメソッドをインストールしてほしい」と依頼を受け、才流(サイル)では2023年7月から4回にわたるBtoBマーケティング研修を実施。その後も同年12月から2024年11月現在に至るまで、マーケティング全体に関して客観的な視点で行う評価(アセスメント)や改善に向けたご支援を継続的に行っています。
同社の西津さん、上保さん、大羽さんに才流の支援に対する感想や得られた成果について伺いました。
組織で体系的にマーケティングを習得すべく、まず研修を依頼
-才流にご依頼いただいた背景から聞かせてください。
西津 当社は業種を問わず、多様な課題をIT技術で解決するソリューションプロバイダーで、提供している商材の数は350を超えています。全社のデジタルマーケティングを担当しているのが私たちの部署です。
上保 私は2022年に、営業からの異動でデジタルマーケティング営業本部に配属されました。モビリティと呼ばれる領域で主に4つの商材を担当することになったのですが、マーケティング初心者で何から手をつけたらいいのかわかりませんでした。
マーケティングを体系的に学ぶ必要を感じ、インサイドセールス部門にいた大羽に相談したところ、紹介されたのが才流でした。
テーマ | 製品名 | 概要 |
---|---|---|
設計ドキュメント品質向上 | プロジェクト状況可視化システム (https://www.hitachi-solutions.co.jp/pjvsystem/) | AI+独自ルールで設計ドキュメントの不備を診断 |
開発プロセスの規格準拠 (Automotive SPICE® / ISO26262) | 自動車関連規格準拠支援ソリューション (https://www.hitachi-solutions.co.jp/aspice/) | プリンシパルアセッサーによる開発プロセス改善支援。 質問形式の自己診断ツールで準拠状況を把握 |
アプリケーションライフサイクル管理 (ALM) | PTC Codebeamer (https://www.hitachi-solutions.co.jp/codebeamer/) | 要件定義からリリースまでのトレーサビリティを実現 |
モデルベース開発の効果的な活用 | モデルベース開発ソリューション (https://www.hitachi-solutions.co.jp/mbdsolution/) | 開発実績豊富なコンサルタントによる導入・伴走支援 |
-才流のことはどのようにして知りましたか?
大羽 代表である栗原さんの本を読んで知りました。スタートアップに勤める友人からも、才流の支援がすごく良かったと聞いており。才流にBtoBマーケティングの基礎を教えてもらってはどうかと考え、4回の研修を依頼しました。
研修は「BtoBマーケティングの基礎と実践」をテーマに、LPやサイト改善、ナーチャリングについて教えてもらいました。
大羽 研修を通して、マーケターの一般的な動き方は理解できました。ただ自分たちが扱っている商材に当てはめて考えると、具体的に何をすればいいのか。まだ少しぼんやりとしていました。
そこで特定商材において私たちの置かれている状況を診断し、処方箋を出してほしいと伴走支援をお願いしました。
注力商材の包括的なアセスメントを実施し、課題を明らかに
-今回、ご支援したサービスの概要を教えてください。
上保 担当商材のなかでも「プロジェクト状況可視化システム」を注力商材と定め、支援をお願いしました。
プロジェクト状況可視化システムは当社の品質管理のナレッジを詰め込んだ自然言語AIを活用したドキュメント診断ツールです。ソフトウェアの開発を効率化するソリューションとして、2020年にリリースしました。
プロジェクトの状況確認や品質管理は属人化しやすい業務です。当サービスでは、プロジェクトの計画書や仕様書など、多様な成果物を自然言語処理AI診断とルール診断を組み合わせて自動で診断。これによってレビューに関わる負荷を大幅に低減できます。
横山 「1週間程度かかっていたドキュメントの確認が1日で対応可能(日立ソリューションズ試算値)」という導入効果もあり驚きました。ソフトウェア開発の現場にかなりのインパクトをもたらすサービスです。
横山 ただ今回のプロジェクトでは、商材単体の成長はもちろん、1商材でのアセスメント、評価を通じて、他の商材にも転用できるマーケティングノウハウを習得したいというご要望でした。
プロジェクト状況可視化システムは、上保さんからすると担当する4つの商材のうちの1つです。違う商材に当てはめたときにどう考え、どう動けばいいのか。インプット中心ではなく、アウトプットを中心に、伴走を通してマーケティングノウハウの習得を目指しました。
-プロジェクトの内容について、具体的に教えてください。
横山 はじめに、プロジェクト状況可視化システムの現在のマーケティング状況について、包括的なアセスメントを行いました。
具体的には、
- 今、事業はどのフェーズにあり、どのような課題設定を行うべきか
- その判断はどのような基準で行うべきか、その根拠は何か
- 今後やるべきことは何か、その優先順位付けはどのように行うか
以上について客観的な視点から整理し、Webサイトやメルマガの改善方法など、各施策単位の細かなメソッドをご提示しました。
もちろん、ただ整理してご提案するだけでは成果につながりません。「絵に描いた餅」を着実に実行いただけるよう、横断組織であるがゆえの制約条件を理解しながら一緒に優先順位付けを行いました。その後は毎週の定例で状況や課題感を共有いただきながら、伴走支援を行いました。
また、定例内外で大きく活用いただいたのが質問管理表です。みなさんからのご質問に対して、押さえておくべきメソッドや、課題解決のポイントをお伝えしました。3-4か月で37個もの質問をいただき、社内にノウハウが蓄積されるよう一つひとつ確認していきました。
水落 3-4か月で37個の質問はだいぶ多い。みなさんの学ぼうという姿勢、才流のメソッドを積極的に吸収しようとする姿勢がすごく印象的でした。
事業と顧客理解が深まり、1つ上の視点で打ち手が見えるように
-プロジェクトで印象的だったことを聞かせてください。
上保 プロジェクトの初期に作成した「売れるロジック」が印象的でした。
上保 売れるロジックは、再現性を持って売るためのコミュニケーション設計です。売り方については当社でもペルソナを設定していましたし、ある程度確立できているつもりでした。
しかし、いざ売れるロジックの型にはめて言葉にすると、顧客の抱える課題や課題が起きる要因、解決策を正確に言語化できていないことに気づいて。改めてお客様の声を集めるきっかけになりましたね。
また、施策のフローチャートも印象的でした。
上保 事業目標を達成するために何の施策を、どんな優先順位で実行すればいいのか。フローチャートによって施策の全体像が見える化され「打ち手はWebだけではない」と視野が一気に広がりました。
横山 組織のミッションを考えると、「デジタルマーケティング」という視界で施策を考えるのはある意味当然のことです。ただ、顧客が限られる商材はインバウンドではなく、アウトバウンドで仕掛けにいくことが大事なケースもあります。
一歩引いた視野で見ると「Webサイトをつくっても、検索されない可能性がある」と気づくことができる。みなさんがデジタルマーケティングという手段ありきではなく、事業・顧客の理解を起点として施策を俯瞰して捉えられるといいなと思い、お話ししていました。
西津 私たちの組織も以前はセールスプロモーション全体を担っていたんです。そこから広告担当、セミナー担当……と役割が細分化されたことで施策をつなげる発想が途切れてしまった。施策をつなげるビジネスオーガナイザーとして、しっかり機能しなければいけないと改めて気づかされましたね。
定量成果に加え、事業部との信頼関係が一層強化された
-プロジェクトによる定量的・定性的な成果を聞かせてください。
上保 定量的な成果は問い合わせ数の増加です。プロジェクト状況可視化システムはこの1年で4倍に、私が担当する他の2つの商材では3倍になりました。
大羽 問い合わせから受注にもつながっています。ある商材では大手自動車メーカー様からWeb経由で問い合わせをいただき、受注に至りました。確実に変化が起こっています。
上保 定量的にもしっかり成果が出ているのですが、現場視点では定性的なインパクトが大きいように思います。事業部側とのコミュニケーションが大きく変わってきたんです。
以前は、横断組織ということもあって「Webサイトのデザインに対して意見をください」といった、専門領域に関するアドバイスを求められるケースがほとんどでした。しかし今は「そもそもの目標設定をどうすべきか?」「施策はどういった優先順位で考えるべきか?」と、相談の内容がまるで違ってきています。
その相談に対して「才流のナレッジを踏まえると、こう考えた方がいい」と会話ができるようになり、事業部側と共通認識を持って進められるようになりました。結果としてこれまで以上に信頼してもらえるようになったと感じています。
大羽 上保の言うとおり、事業部側とのコミュニケーションは確実に変わりました。以前は依頼を受けて、広告を出稿したりサイトを改善したり。事業部側からすると、「事業部側でプランした施策の実行・改善を担う組織」といった認識に近い位置づけだったように思います。
ところが才流と対話をするうちに、上保が「商材やその先にいる顧客を理解しないと、自分たちの仕事は成り立たない」とはっきり認識し始めて。事業部側にいろいろと質問するようになったんです。
そして「こういう商材なら、売り方もこう変えた方がいい。なぜなら才流からこんなメソッドを聞いて…」と話すようになった。すると次第に事業部側から「事業・顧客視点での提案がもらえるなら、より詳しい一次情報も伝えたうえで一緒に考えてもらおう」という形で、これまで以上に信頼される存在になっていったのだと思います。
西津 事業に貢献できるようになり、事業部から一層期待される存在になった。お互いに事業を成長させる仲間として見てもらえるようになったと感じています。
事業開発からマーケ、営業とフルスタックで支援してもらえた
-才流のコンサルタントのコミュニケーションはいかがでしたか。
上保 いつもレスポンスが早く、情報量が多いので助かりました。私の視野が狭まっているときは全体を俯瞰したアドバイスをもらえるので、目的に立ち返ることができました。
西津 素晴らしい提案をされても実行できないと意味がありません。その点、才流はこちらの状況を踏まえ、寄り添ったコンサルティングをしてくれるところも良かったですね。
大羽 スピード感を持ってさまざまなインサイトをくれるところに本当に満足しています。メソッドの量が多いので、何か質問をすると、すぐに資料を送ってもらえる。それを確認した上で、自社に当てはめたケースの質問ができるので、スピード感が全然違うんです。
また質問の範囲が限定的にならない点にもすごく価値を感じています。デジタルマーケティングだけではなく、事業開発からマーケ、営業まで総合的な観点で答えてくれるので。
水落 才流のコンサルタントはバックグラウンドがさまざま。フロントの私たち2人が答えられない質問があっても、社内で聞くと誰かしらが答えてくれるんです。
大羽 コンサルティング会社にとってケイパビリティでもあるナレッジを、ここまで大規模に公開し、惜しむことなく提供してくれるのは才流くらいではないでしょうか。
毎回の定例は学びが多く、いつも上保と「今日もいい時間だったね」と話しているほどです(笑)。
-才流のサービスを他社におすすめするとしたら、どんなフェーズの企業や課題感を持った組織にマッチすると思いますか?
上保 まさに、マーケティング組織に着任したばかりの上保のように(笑)、何から手をつけたらいいのかわからない、スキルを高めたい方や組織におすすめしたいです。
上流の戦略はもちろん、実務に対しても商材に即した具体的なアドバイスをもらえます。マーケティング組織を新設した企業に、これほどおすすめのところはないと思います。
-最後に、担当商材や組織の今後の展望について聞かせてください。
上保 プロジェクト状況可視化システムはリードが4倍になり、そこから受注も生まれています。導入事例の取材もできそうで、着実に良い兆しが見えています。まずは私自身が担当する商材でしっかりと成果を出し、才流から教わったメソッドを他の商材にも横展開していきたいです。
西津 組織としては、今後も全社のマーケティング・プロモーション活動を牽引し、より多くの案件創出に貢献できればと考えています。そのためにはメンバー、一人ひとりの成長が欠かせません。マーケティング戦略を理解し、プロモーションの戦術設計に落とすことができる人材育成が成功要因として重要と考えているので、今後も才流の継続支援に期待しています。
横山 本日はありがとうございました。お話をお伺いして、本プロジェクトの成功背景には、上保さん・大羽さんをはじめとする現場の方々の強い危機感と情熱があったと改めて感じました。
みなさんの所属するデジタルマーケティング営業本部が、才流のような外部のコンサルティング企業に依頼した前例はほとんどないと聞いています。マーケティング組織が変わらなくてはいけないという健全な危機感、積極的に組織内外とコミュニケーションをとる情熱あっての成果です。
最終的に描かれている理想はまだまだ先ではありますが、今後もその危機感と情熱を前に進める力に変えられるよう、ご支援させてください。引き続きよろしくお願いします。
(撮影/植田翔 取材・執筆・編集/藤井恵)