ソフトバンクグループとして、決済事業を担うSBペイメントサービス様。オンライン決済、店舗向け決済、支払い代行など幅広い領域に展開し、取扱高は2022年度実績で6.5兆円以上、国内シェア上位に位置しています。
同社では、2023年度のマーケティング方針を作るにあたり、カギになるのは「大手企業向けアプローチの強化」であると考えていました。戦略を立て、組織の実行体制をスピーディーに整えるために、外部の知見を取り入れたいと考えたそうです。
才流では2023年2月から2か月間、大手企業とのコミュ二ケーションプロセスを設計するためにご支援を行いました。SBペイメントサービスの坂西様、木村様、岡本様にプロジェクトの率直な感想や成果を伺いました。
大手獲得強化のために、組織として戦略や実行体制を整えたい
ー これまでのマーケティングの状況と課題をお聞かせください。
木村 もともと、営業がアウトバウンドの架電をしたり、グループ会社やパートナーのルートをいかしたリード開拓をしたりする手法が中心でした。
木村 そこから、さらにリード獲得を広げるために、再現性のあるWebマーケティングに本格的に注力し始めたのが2015年です。個人に依存せずノウハウがたまりやすく、PDCAによる改善がしやすいと考えたんです。
立ち上げ初期はとにかく手探りで、改善を繰り返して、どうにか再現性のある方法を確立するために走り回ってきた感じです。
ここ数年でようやく形になり、Web経由のリードが十分にとれる状態が作れたと思っています。
ただ、WEBマーケティングの特性上、SMB中心(スモールトゥミディアムビジネス)のリードが多いため、再現性のある大手企業の施策を模索すべきだと考えていました。
坂西 大手企業に対するアプローチも行ってはいたのですが、短期的な案件に注力しすぎて、なかなか中長期的にアプローチをする体制が作れていなかったというのが実情です。
その課題を解決するためにも、2022年後半に組織再編を行いました。組織として改めて戦略を練り直したうえで、アプローチしていく仕組みが必要だと認識していたのです。
スピーディーに来期の方針を立てるために、才流に依頼
ー 才流のことは、どのような経緯で知ったのでしょうか?
坂西 前職の知り合いに「BtoBマーケで大手へのアプロ―チを強化するために、どこかいいコンサルないかな?」と聞いてみたんです。そうしたら、「BtoBの専門でやっている、才流という会社がある」と教えてもらいました。
その後、代表栗原さんの書籍『BtoBマーケティングの戦略と実践』を読んで感銘を受けたんです。当社にあてはめてみたら、課題や対策が可視化できました。
実際に才流にお話を伺ったのが、2023年の1月です。
22年度の予算内で、23年度の具体的なアクションプランを立てたいと考えていましたが、2月から動きだすとしても、期末まであと2か月くらいしかない状況でした。
本来ならば3か月でご支援されている内容を、無理を言って2か月で進行していただけるかご相談したところ、快く受けてくださいました。
他社にも話は聞いたのですが、われわれが望むスピード感で、核心を突いたコミュニケーションをとっていただけるのは才流でした。
Web経由からのリード獲得だけでなく、ABMの実装をご提案
ー プロジェクトでは、具体的にどのようなことを行いましたか。
山本 もともと、大手企業の獲得を強化したいという明確なオーダーがありましたので、スタート時点でやるべきことは見えていました。
最初の1か月は「やるべきことが間違いないか」根拠となる事実を洗い出すために、想定見込み顧客のインタビューや社内の営業インタビュー、市場調査、競合調査などを実施しました。
これをもとに、現在まで築いてきたLBM(リードベースドマーケティング)を活用しつつ、ABM(アカウントベースドマーケティング)の実装が必要だということが見えてきたんです。
ABMとは、定められたターゲット企業に対して、契約獲得までのプロセスを最適化する手法です。
山本 当時とれていたインバウンドリードには、もちろん大手企業も含まれていました。しかし、リード獲得後の適切なアプローチが十分にはできていなかったんです。
また、営業チームのほうで大手企業の対象リストはお持ちだったのですが、アプローチ手法が個人に委ねられており、改善点も見えてきました。
そこで残りの1か月では、ABM戦略を来期から組織として実行していくために、具体的なディスカッションを進めましたね。
坂西 もともと、Webマーケで大手獲得を強化することを考えていたので、想定していたこととは違いました。「ABMの実装」というご提案を受けて、半信半疑な部分もあったんです。
でも、いくつか関連書籍を読み、セールスへのインタビュー結果を見たり、才流からのご提案を受けたりする中で腹落ちできました。
戦略的に組織に実装すれば、確実に成果が出るだろうと思えました。
山本 SBペイメントサービス(以下、SBPS)様の場合、マーケティングとセールスの距離が近く、各チームの連携がとれていると感じます。坂西様が統括する営業戦略部の中にマーケティング課があるのも、その表れですよね。
ABMは営業部門単体で取り組む話ではなく、事業戦略の話なんです。ですから、部門間に壁があるとうまくいかないことがあります。
SBPS様の場合は、土台はすでにできあがっていましたね。
第三者からのフィードバックは、自社の施策を磨くきっかけに
ー プロジェクトで印象に残っていることはありますか。
岡本 これまでは社内メンバーのさまざまな知見を持ちより、施策の実行と改善を繰り返してきました。ただ、それがベストな施策なのかというと、確証が持てないところもあったんです。
ですから、第三者の専門的な観点で意見をいただけたのは良かったと思います。
岡本 やってきたことが間違いではなかったと、たしかめられた部分もありますし、気づいていなかった改善点も見つかりました。
木村 われわれは普段、自社のデータを見てPDCAを回しているので、どうしても自社のデータに頼り切っている部分があったと思うんです。外にどんなに有益なナレッジがあっても、情報収集する時間ってなかなかとれないんですよね。
才流に入っていただいたことで、自分たちの取り組みをさらに磨くことができた。良いきっかけをいただけたと思っています。
坂西 私は、一番印象に残っているのは才流のレスポンスの早さですね。
山本さんのようなテンポがいいレスポンスやコミュニケーションは、なかなかできないと思うんです。われわれのオーダーしたことに対して、次の定例を待たずに動いてくださるスピード感も素晴らしかったです。
岡本 いろいろなことを相談させていただいて、その場ですぐ回答いただけるのはとてもありがたかったですね。
定例以外にもミーティングを設定していただき、KPI設計、評価、今後の認知拡大のための相談などをさせてもらいました。
木村 ロジカルで的確でわかりやすい、無駄のないコミュニケーションでしたね。
とはいえ、こちらから聞いて教えてくれるだけじゃなく、能動的に「こうじゃないですか」と導いてくれる。本当に頼りがいがありすぎました(笑)。
ABMの重要性を社内で認識してもらい、来期への道筋ができた
ー このプロジェクトの一番の成果は何だと思いますか?
木村 社内でABMの重要性を認識してもらえて、きっかけが作れたのは非常に大きな成果だったと思います。
才流からの最終報告には、重役2名も出席してもらったんです。
「ABMを実装し、成果を出すまでには時間がかかるかもしれない。でも、これだけ必要なことだ」ということが、重役にもしっかりと伝わるご提案でした。
岡本 大手獲得強化について、これまでやってみたほうがいいと思うことはたくさんありましたが、足元の業務を優先してしまって、なかなか取り組めていない状態でした。
今回、しっかりと優先度を提示していただけたので、実行に向けた道筋ができました。
また、ABMについて、これまで体系的にインプットしたことがなかったので、全体像を提示しながら教えていただけたこともありがたかったです。
坂西 私は、 23年度の大きな方向性を決められたことが一番の成果だと思います。これまで現場任せで、属人的だった営業体制を戦略的に作っていける。その道筋が立てられました。
木村 外部の方の支援だからこそ、できることがありますよね。
たとえば競合調査は、自社の名義ではアプローチできないような方にインタビューをしてもらえましたし、そこから得た気づきもたくさんありました。コンサルティングを入れた価値があったなと思いました。
坂西 他社の事例なども、これまでの実績の中から適切なものを、素早くご提示いただける。自分たちで収集するには時間がかかってしまうので、とても価値があるなと感じました。
1年後、現場レベルでABMが浸透している状態を目指す
ー才流の支援は、どのようなフェーズの会社、どのような課題を持っている会社にフィットすると思いますか?
岡本 どんなフェーズでもフィットするとは思います。マーケティングの立ち上げで何をしたらいいかわからないという会社は、メソッドによって効率的で成果が出る進め方ができると思います。
逆にわれわれのように、ある程度自社で施策を進めている会社であれば、全体最適の視点でご提案をいただけるので、より良い進め方がわかると思います。今回それを実感しました。
坂西 私も同意見で、フェーズや内容は問わないと思いますね。ただ、戦略を立てていただいても実行するのが難しいと思うので、実行フェーズで入っていただくのもいいかもしれないですね。われわれも、引き続き才流にご支援をいただくことが決まっています。
せっかく立てていただいた方針を、現場でしっかりと実装していき、半年後、1年後には現場レベルでABMが浸透している状態を作りたいと思っています。
そのためには、才流だけに頼っていてもだめで、当然内部からも現場を巻き込んでいかなくてはならないと思います。
山本 ここからが肝なので、きちんと成果を出せるようにこれからもご支援して参ります。
(撮影:関口 達朗、取材・執筆・編集:安住 久美子)