STEP5.表彰制度を設計する

表彰制度は、パートナーのモチベーションを高めて良好な関係を維持・強化する手段として有効です。パートナーにとっては、表彰実績をマーケティング面で活用できるメリットもあります。

ここでは実態調査の結果と各メーカーの事例を交え、表彰制度がもたらす効果と設計例を紹介します。

表彰制度はパートナーにとって「あるとうれしい支援」

「代理店(パートナー)ビジネスの実態調査」では、パートナーが実際に受けている支援で満足度が高いものとして、「相談したいときにメーカーとすぐに連絡が取れる」「営業資料などのセールスツールが充実している」「導入後のアフターサポートが充実している」が上位に。

そして、あるとうれしい支援は「モチベーションを高める表彰制度」が最も多い結果となりました。

パートナー経由での売上比率が高い企業は、共通して表彰制度を整えています。表彰制度はパートナーやパートナーの営業担当者のモチベーションを向上させるだけでなく、パートナーに箔がつく効果もあるのです。

図版:パートナーが実際に受けている支援で満足度が高いものは?という質問に対する回答の横棒グラフ

次の記事では、「売上だけではないパートナー活動も注目されるような評価制度が必要」と語るサイボウズ株式会社の事例をお読みいただけます。

※関連記事:「kintoneを売る」ではなく「kintoneを軸としたエコシステム」の拡大へ – サイボウズのパートナービジネスの真意に迫る

おもな表彰基準は7つ

パートナーの表彰制度における評価基準は、おもに次の7 つです。

  1. 販売実績
  2. 顧客満足度
  3. 当該年度加入パートナーの販売実績
  4. ユーザーの活用促進
  5. 新規顧客開拓数
  6. 成長率
  7. ソリューション開発

評価基準を販売実績だけに絞ると上位のパートナーが毎年同じ顔ぶれになってしまう懸念があるため、新たに契約したパートナー向けに新規顧客開拓数・成長率、ソリューション開発といった基準を設けて表彰しましょう。

なお、これらの評価基準はパートナーが目指すべき方向性やモチベーションを高めるために設定し、自社の戦略や市場の動向に応じて適宜変更するものです。

パートナーの数が増えてきたら、エリア別、大企業や中小企業といった企業規模別でカテゴリーを分けることを検討します。なお、パートナービジネスの立ち上げ初期においては、表彰制度の検討は必須ではありません。ただし、p.34で紹介したパートナー立ち上げ5ステップStep.4をクリアしたらトップラインを伸ばすために表彰制度の導入を検討しましょう。

売上・シェア拡大の観点

売上・シェア拡大を目的とするときの表彰制度の例

目的表彰基準対象補足
トップラインの成長販売実績企業年間の販売額や売上高、販売数など、具体的な販売成果に基づいて表彰する
シェア拡大新規顧客開拓数、成長率企業前年度などでの成長率が高いパートナー、新規顧客の獲得数や獲得に関する貢献を評価する
継続率の向上、解約率の低下顧客満足度企業顧客からの評価が高い企業、顧客満足度を向上させた取り組みを評価する
売上・シェア拡大を目的とするときの表彰制度の例

エコシステム構築の観点

エコシステム構築を目的とするときの表彰制度の例

目的表彰基準対象補足
新市場の発掘・開拓ソリューション開発企業独自のソリューション開発や革新的なアプローチ、新しい市場への展開を評価する
新規加入パートナーのモチベーション向上当該年度加入パートナーの販売実績企業年間の販売額や売上高、販売数など、具体的な販売成果に基づいて表彰する。当該年度に加入、または加入2年目までのパートナーを対象とする
エバンジェリストの育成個人の取り組み個人ユーザーコミュニティやイベントを通じて、サービスに関する知識と経験を多くのユーザーと共有し、活用促進に貢献した個人を表彰する
エコシステム構築を目的とするときの表彰制度の例

(参考)表彰制度の事例

参考として、いくつかのメーカーの表彰制度を紹介します。

社名アワード名おもな表彰カテゴリー
SalesforceSalesforce Japan Partner Award・年間成約金額
・ビジネス成長率
・Salesforce認知度向上の推進
・契約から3年以内の優れた業績
・カスタマーサクセスの実現
・パートナーコミュニティのリード
※製品、企業規模、エリアごとにわけている
サイボウズCYBOZU AWARD・年間販売金額(PARTNER OF THE YEAR)
・セールス部門賞(販売進捗で顕著な実績)
・インテグレーション部門賞(SI分野で顕著な実績)
・アライアンス部門賞(独立サービスで顕著な実績)
・エクステンション部門賞(拡張機能を提供するサービス)
・特別賞(先進的な取り組み)
・ニューウェーブ賞(当該年度に新規パートナー契約で顕著な実績)
・エリア賞(各地域ごと)
・パーソン・オブ・ザ・イヤー(提案や販促活動における個人実績)
オービックビジネスコンサルタント奉行AWARD・販売実績(OBC Partner of the Year)
・地域優秀賞
・サブスモデルの販売実績(Cloud Business Award)
・導入事例の協力(Promotion Award)
・認定資格の合格者数(Implementation Award)
・デジタルを活用した取り組み(Digital Marketing Award)
NTT DATANTT DATA RPA Partner AWARD・販売力部門 Best Partner of the Year
・Customer Success部門 クロスセル賞
・Customer Success部門 他部署展開賞
・Customer Success部門 グループ間展開賞
・新規ユーザー開拓部門
・技術力部門
・更新率部門
トレジャーデータTreasure Data Partner Award・契約獲得賞(The Best Contract Partner)
・新規契約パートナーにおける功績(The Best Rookie Partner)
・エコシステムの強化(The Best Data Partner)
・ビジネス成長率(The Best Growth Partner)
・新機能の導入(The Best New Function Partner)
・認定資格数(The Best Academy Growth Partner)
AI insideAI inside Partner Award・販売実績(Best Sales Award)
・ビジネス変革(Best Project Award)
・製品ごとにわけている
ウイングアーク1stWingArc Partner Award・実績(WingArc Partner of the Year)
・クラウド契約の実績(Cloud Partner of the Year)
・大規模プロジェクト
・認定資格数(Certified Expert of the Year)
・新規契約パートナーにおける功績(Rookie of the Year)
メーカー各社の表彰制度
※2024年2月時点の情報です

(参考)パートナーランクとベネフィットの設計例

パートナーのランクごとに支援やインセンティブなどのベネフィットは異なります。パートナーに上位ランクを目指してもらうことで、ビジネスの伸長を目指すことが狙いです。

内容を検討する際の参考として、よくあるパートナーランクとベネフィットの設計例を紹介します。

SilverGoldPlatinum
ランク維持条件・窓口担当者の設置
・事業計画の共有と合意
・プロダクトの自社導入
・窓口担当者の設置
・事業計画の共有と合意
・プロダクトの自社導入
・年間○億円以上の売上
・認定セールス〇名以上
・事例公開〇社以上
・窓口担当者の設置
・事業計画の共有と合意
・プロダクトの自社導入
・年間○億円以上の売上
・認定セールス〇名以上
・認定エンジニア〇名以上
・事例公開〇社以上
教育支援オンライン・リアルオンライン・リアルオンライン・リアル
営業支援電話、メールサポート電話、メールサポート、商談同席電話、メールサポート、商談同席
マーケティング支援セミナー登壇セミナー登壇、販促支援セミナー登壇、発注支援
開発環境提供開発検証環境の提供開発検証環境の提供
パートナー向けイベント参加可能参加可能参加可能
インセンティブ目標達成時に○%の報奨
パートナーランクとベネフィットの設計例

なお、パートナーランクは管理コストがかかるため、立ち上げ時に必ず導入する必要はありません。パートナーのモチベーションを向上させる必要があるフェーズがきたら、検討しましょう。

その際の論点は次のとおりです。

  • ランクごとのベネフィットは一度導入すると簡単には変更できないため、導入は慎重に検討する
  • ベネフィットは、教育・情報提供・マーケティング支援の観点で検討する
  • 掛率のベネフィットは管理コストが増大するため導入は慎重に検討する
  • リセラーとディストリビューター、EC 販売会社を同じランク制度に入れるのか、別にするか検討する
  • ランク条件は適宜見直す前提で設計する。ポイント制を取り入れると、ポイントの重み付けの 変更で対応できるため、運用しやすい

次の記事では、ウイングアーク1st株式会社のパートナープログラムの詳細についてのインタビューをお読みいただけます。

※関連記事:ウイングアーク1stの最新パートナービジネスを大公開:営業活動をデータで支援。パートナーとの協業が加速するパートナープログラムの設計方法

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