TIPS|OEM契約は積極的に検討する

パートナーが自社ブランドとして販売するOEMは、紹介や卸( 再販)に比べてパートナーの「売りたい気持ち」を簡単につくれる契約形態です。積極的に検討しましょう。

紹介契約・卸(再販)契約・OEM契約の違い

紹介契約・卸(再販)契約・OEM契約には、それぞれ次のような違いがあります。

紹介契約卸(再販)契約OEM契約
メーカーの
人件費・固定費

大きい

小さい

小さい
メーカーの利益率
高い

低い

低い
パートナーの営業育成
容易

難易度が高い

容易
情報共有
容易

労力がかかる

容易
パートナーの営業の
売上利益評価

ネット計上や営業外収益

グロス計上

グロス計上
パートナーの営業の
モチベーション

グロス計上できないため
積極営業が見込みづらい
△〜◯
グロス計上できるため
営業の評価に直結しやすい

自社ブランドで
売れるためモチベー
ションが高くなる
商品・サービス名の
決定権
メーカーメーカーパートナー
価格決定権メーカーパートナーパートナー
カスタマーサポートメーカー基本的にパートナー基本的にパートナー
紹介契約・卸(再販)契約・OEM契約の違い

OEM契約は、とくに製造業においては昔からメジャーな契約形態ですが、最近ではSaaS企業でも成功事例が増えています。

商品・サービス名おもな取り組み内容・成果
セーフィーキャノンマーケティングジャパンやセコム、NTTグループにOEM提供。業界のリーディングカンパニーとの資本提携で、セーフィーの知名度を上げた
AI insideAI OCRをNTT西日本などにOEM提供
NTT西日本RPA、OCR、セキュリティサービスなどをOEMで二次提供
クラウドサイン「クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート」をNTT東日本にOEM提供。開発行為をせず、サービス名称の変更で対応
OEMで成功しているSaaS企業の例

OEM契約がもたらす効果

パートナーが自社ブランドとして商品・サービスを販売できる状況がつくれると、次のようなメリットが得られます。

  1. パートナーの営業担当者のモチベーションが上がる
  2. パートナーが商品・サービスを担ぐ理由づくりが不要になる

1.パートナーの営業担当者のモチベーションが上がる

まず、パートナー独自の商品・サービスとして販売することにより、同じ商品・サービスを扱う他の販売パートナーとは、直接的な競合関係ではなくなります。

これは、複数のパートナーが同じメーカーの商品・サービスを販売していた場合でもOEM 契約によって自社ブランドの商品・サービスとして提供することで、他社との差別化が可能になるためです。

次に、紹介契約では収益が営業外収益として計上されるのに対して、OEM契約では売上を総額で計上できる点も、営業担当者にとって大きな動機付けになります

2.パートナーが商品・サービスを担ぐ理由づくりが不要になる

OEM契約を結ぶことで、パートナーが提供する商品・サービスは、パートナー固有のものになります。

これにより、その商品・サービスは数ある取り扱い商材の一つという位置付けから脱却し、パートナーの営業担当者は商品・サービスについてより深く理解し、熱心に販売することが求められます。

結果、メーカーはパートナーに自社の商品・サービスを担いでもらう理由を提供する必要がなくなり、より効率的にパートナービジネスを推進できるようになるのです。

OEM契約を検討するときのおもな論点

OEM契約を検討するときのおもな論点は、次の7つです。

1.個別開発(カスタマイズ)を受け入れるか

基本的に個別開発を受け入れると、メーカーが検討すべき項目は増加します。

個別開発はメーカーとパートナーのアライアンスを強固にする一方で、開発サイドの工数や管理・保守のコストが大きくなるというデメリットがあるのです。

たとえば独自の商品・サービス名(商標)の付与だけを許諾する契約内容にすれば、メーカーは負荷を減らせます。個別開発を受け入れる場合は、カスタマイズ内容、カスタマイズ部分の成果物の権利の帰属、カスタマイズ部分の対価の有無、品質基準を定めましょう。

2.最低買い取り目標を設定するか

最低買い取り目標を設定するかどうかは、個別開発の有無や個別開発時の価格設定によります。

個別開発を行わない場合は、買い取り目標の設定を契約書で定めずに事業計画書の提出とするケースもあります。

3.契約期間をどうするか

パートナービジネスの立ち上げ時は、契約期間を短くしておくのが望ましいです。

4.契約締結の適合基準を設定するか

契約締結の適合基準とは、契約を締結するために満たすべき条件や基準のことです。つまり、この基準に合致するかどうかをチェックすることで、契約を締結することが適切か判断します。

設定する場合は、販売目標数や事業計画書の提出、財務状況、過去の実績などの観点で検討しましょう。

5.競合他社の商品・サービスの取り扱いを制限するか

商品・サービスによっては、競合他社の商品・サービスの取り扱いを制限するケースがあります。

ただしパートナーにとっては、顧客への提供価値の一つとして「ニュートラルな立場」があるため断られるケースも少なくありません。折衷案として、競合の商品・サービスを取り扱う場合は書面による事前届出を求めることもあります。

6.著作権の帰属・使用許諾の範囲をどうするか

帰属、および使用許諾内容を明確にしましょう。

また1.でも説明したとおり、個別開発を受け入れる場合はカスタマイズ部分の権利の取り扱いをどのようにするのかを明確にしておく必要があります。

7.品質基準をどうするか

個別開発を行う場合は、品質保証の範囲や不具合時の対応、責任の所在、アップデートとサポート内容を明確にしておきます。

そのほか、次のような契約書に記載する一般的な項目も検討しておきましょう。

  • 紛争解決
  • 守秘義務
  • 反社会勢力の排除
  • 契約解除

契約書を作成する際は、必ず社内の法務部門や顧問弁護士に相談しながら進めてください。

次の記事では、積極的にOEM契約を進める弁護士ドットコム株式会社の事例をお読みいただけます。

※関連記事:パートナーの営業が「売りたい」と思う理由をつくる 、 クラウドサインのパートナービジネス

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