まずはパートナーの契約形態を決めましょう。
本ガイドの冒頭でも触れたとおり、一口にパートナーといっても、その契約形態と呼称にはさまざまなものがあります。
検討するときのポイントは、まずパートナーに何をしてもらいたいのかを整理すること。そこから逆算して、自社に最適な契約形態を決定します。もちろんパートナーが利益を得られる契約形態でなければなりません。
つまり、メーカーにとって販売力が最も高くなり、パートナーが利益を得られる契約形態を探します。
一般的な呼称 | 特徴 | おもな企業 |
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ディストリビューター | 一次パートナー。メーカーから商品・サービスを仕入れ二次パートナー(リセラー)に卸す。リセラーとは厳密には異なる。国内では同義語として語られることも多い | ・ダイワボウ情報システム ・SB C&S ・TD SYNNEX(旧テックジャパン) |
リセラー、パートナー、特約店、代理店、セールスパートナー | メーカー、またはディストリビューターから商品・サービスを仕入れて顧客に販売する。仲介(エージェント)方式、再販売方式がある | ・大塚商会 ・事務機商社 |
ソリューションパートナー、システムインテグレーター | メーカーから仕入れた商品・サービスを自社の商品・サービスと組み合わせて顧客に提案する | ・富士通 ・NEC |
OEMパートナー | メーカーの商品・サービスを自社ブランドとして販売する | ・NTT 東日本 ・NTT 西日本 |
コンサルティングパートナー | コンサルティングを担う。システムインテグレーター(SIer)が兼ねる場合もある | ・アクセンチュア ・アビームコンサルティング |
テクノロジーパートナー、プロダクトパートナー | 技術支援のほか、メーカーの商品・サービスの機能拡張や連携する商品・サービスの開発を行う。販売はしないケースが多い | ― |
紹介 | 取次 | 卸(再販) | |
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パートナーの心理 | 手間をかけたくない。紹介するメリットが欲しい | 商品・サービスを顧客に導入するメリットが欲しい | 顧客と口座を開きたい、売上をグロス計上したい、顧客が流出するのを防ぎたい、自社商材と組み合わせてセット提案をしたい |
パートナーの役割 | 案件紹介 | 案件紹介・契約獲得 | 案件紹介・契約獲得・契約締結、顧客サポートの一次対応 |
パートナーに求められるスキル | なし | 商品・サービスを理解し、課題解決型の販売ができること | 左記に加え、顧客サポートの一次対応 |
報酬金額(例) | 月額料金の10〜20%(ショット、数か月〜数年) | 月額料金の10〜20%(契約期間中) | 月額料金の20〜30%(契約期間中) |
ベンダー(例) | 多くのSaaSベンダーが採用 | 一部のSaaSベンダーが採用 | フリー、インフォマート、サイボウズ・セーフィー、AI inside、オービックビジネスコンサルタントなど |
パートナー属性(例) | ITコンサルティング、地域ITベンダー | 会計事務所・法律事務所(顧問先ビジネス) | 大手事務機商社、ディストリビューター、地域ITベンダー、SIer |
基本的には自社の状況や商品・サービスにあわせて、最も販売力が高くなる契約形態を選択します。
たとえば商品・サービスが複雑でパートナーに提案すべてを任せることが難しい場合は、顧客紹介だけを任せる紹介契約が適しているでしょう。一方、パートナーのネットワークや販売力をいかしたい場合には、商品・サービスの販売活動すべてを任せる取次契約や卸契約がよい選択となります。
このようにまずパートナーに何をしてもらいたいかを整理し、そこから逆算して役割と契約形態を決定しましょう。
契約形態を検討する際の参考として、契約形態ごとのインセンティブの目安をまとめました。おもなチェックポイントは、次の3つです。
- インセンティブ金額・率をどうするか
- 事業PL上、問題がないか
- 競合他社と比較して遜色がないか
紹介 | 取次 | 卸(再販) | |
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報酬金額の例 | 受注時に一律 XX 万円、月額料金の 10〜20% × ○か月 | 受注時に一律 XX 万円、月額料金の 10〜20% × ○か月 | 月額料金の 10〜30%(仕切り率 70〜90%) ※ディストリビューターの場合は二次店の利益を勘案し設定する |
支払い機関の例 | 単発、○○か月 | 単発、○○か月 | 契約期間中 |
パートナー属性の例 | ITコンサルティング、地域ITベンダー | 会計事務所、法律事務所などの顧問料ビジネス | 大手事務機商社、ディストリビューター、地域ITベンダー、SIer |