パートナービジネスを推進する体制

パートナービジネスを推進するための体制として、次の3つを整備する必要があります。順番に解説していきます。

  1. 経営層のコミットメント
  2. 評価制度
  3. パートナーセールスのチーム体制

1.経営層のコミットメント

「パートナービジネスでよくある3つの失敗」でも説明したとおり、パートナービジネスは即効性のある取り組みではなく、軌道に乗せるまでに数年は根気よく続けなければなりません。

これは実際に業務を担う現場のメンバーにとっては、非常に過酷です。立ち上げ時はチームの人数が少ないゆえに成果が出るまでは孤独な状態であることも多く、つい目の前にある直販の案件を追うような行動をとってしまうケースもあります。

そこで必要になるのが、経営層のコミットメントです。全社会議で大体的にコミットメントを示したり、経営会議でパートナービジネスの活動内容に定期的に触れたりするとよいでしょう。

経営層が自ら契約交渉に関与するのも効果的です。経営層と現場のメンバーとでスクラムを組んで、パートナービジネスを推進していきましょう。

2.評価制度

活動を推進するための評価制度も必要です。

せっかくパートナービジネスに取り組んでも、担当者が損をするような評価制度になっている、あるいは評価されない状態では担当者が前向きに取り組むのは難しいでしょう。とくに次の2 つは担当者からよく聞く悩みです。

  • 成果が出るまでに時間がかかるが、プロセス評価がないので不安を感じる
  • 会社方針の新規パートナー開拓に注力した結果、既存パートナーの成長にリソースをかけられず、直近の営業目標達成が厳しい

担当者がこのような悩みを抱えるのを防ぐには、やることをやればしっかりと評価される制度が必要です。担当者が不利益を被らない評価設計やプロセス評価の導入を検討しましょう。

このあとのパートナー戦略の策定「ステップ4 KPI設計」で詳しく解説しますが、たとえばパートナー開拓のフェーズでは交渉数や契約率といった指標で評価することが挙げられます。

3.パートナーセールスのチーム体制

マーケティング部門がリード獲得、インサイドセールス部門が商談化、そしてフィールドセールス部門が商談を担う、分業型の体制で営業活動を行う企業が増えています。

しかし、パートナービジネスではパートナー開拓、リレーション強化、成長支援の3つを軸に体制を構築します。本ガイドでは、これらを行う営業担当者のことをパートナーセールスと呼びます。

パートナー開拓リレーション強化成長支援オペレーション
イン・アウトバウンド、アライアンス、外郭団体活動、パートナー制度などオンボーディング、定例会・勉強会、ビジネスレビュー、多拠点・部門開拓など商談支援、マーケティング支援、事業成長支援など契約、受発注・請求など
責任者
ビジネスレビュー
パートナーセールス①
パートナーセールス②●商談支援、セミナー、プロモーション企画
直販営業●商談支援
マーケティング●イベント企画
営業支援●専用サイト運用
パートナーセールスの業務と体制

大切なのはパートナー開拓とリレーション強化の兼任は避けること。営業担当者は目の前の数字を達成することを最優先するため、もしも両方を担うと既存パートナーばかりに意識が向いてしまうからです。

また、アウトバウンドでパートナー開拓していく狩猟型の営業と、リレーション強化がメインの農耕型の営業では、スキル・特性も異なります。両方を併せ持つ人は少ないので、それぞれ適した人材を配置するのが理想的です。

成長支援においては、商談支援の担当者として直販の営業担当者をアサインするケースもあります。直販とパートナーの商談がバッティングしたときの社内調整が複雑化しない、商談のクロージングスキルを均質化できるといった観点で直販の営業担当者が担うほうが理にかなっているからです。

マーケティング担当者は、成長支援として表彰やパートナー会といったパートナー向けのイベント企画、協業セミナーのコンテンツ制作支援などを行います。マーケティングや営業企画の経験を持つ人が適しているでしょう。

パートナーセールスのおもな実務

パートナーセールスの具体的な業務には、次のようなものがあります。これらの業務にリソースを割けるようにしておきましょう。

項目内容
チャネル戦略パートナー開拓提携先の選定、提携候補企業との交渉など
パートナーとの成長戦略事業開発パートナーの事業をかけ合わせたプランニング
販売戦略の策定・実行パートナーのマネージャー・経営層との戦略策定
共同マーケティングイベント企画共催セミナーの企画、パートナー主催イベントなどの企画・実行支援
通常業務リレーション強化定例会、勉強会など
商談支援商談同席、提案支援など
見積もり・問い合わせ対応見積もり作成、問い合わせ対応など
パートナーセールスのおもな実務

なお、見積もり・問い合わせ対応は日々発生するものの、ほかの業務に比べると重要度は高くありません。仕組みを整備して、効率化を図りましょう。

次の記事で、パートナービジネス専任チームを立ち上げて目標に対して140%の成果を出したThinkings株式会社の事例をお読みいただけます。

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