生産者の顔の見える電力を提供する「みんな電力」をはじめ、企業のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を支援する株式会社UPDATER様。
5年後に営業人員10倍の目標を掲げているものの、営業が型化されておらず、新人の育成に強い課題感を持っていました。
今回のプロジェクトで、才流はセールスイネーブルメント(※)の一環として「UPDATERらしさ」を言語化した営業マニュアルの作成を支援しました。完成したマニュアルは、新人が迷わず立ち上がれる仕組みとして機能し、育成にかかる工数を削減。さらにマニュアルの内容を学習させた商談振り返り生成AIを実装し、メンバーが自ら営業スキルを学べる自走化を定着させました。
SXセールス部を統括する坂本さん、新人育成を担当するチームリーダーの松岡さん、ハイパフォーマー営業としてプロジェクトに参加した遠藤さんに、プロジェクトでの気づきや、イネーブルメントが営業組織にもたらした変化についてお話を伺いました。
※セールスイネーブルメント:営業の効率化、営業パーソンの育成などにより継続的に成果を出す仕組みのこと

プロジェクト概要
| 企業名 | |
|---|---|
| 会社概要 | 業種:エネルギー、サステナビリティ支援 |
| ご支援内容 | セールスイネーブルメント |
| ご支援期間 | 4か月 |
| ご支援前の状況 |
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| プロジェクトのサマリ |
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モチベーションを起点にした、独自の営業アプローチ
ー 今回、ご支援したSXコンサル&イノベーション本部は、どのような部署ですか。
坂本 当社は、顧客がサステナビリティにあふれた会社となるように支援し、それを社会全体へ波及させることをミッションとしています。大切にしている価値観は、「面白くて、儲かる」。社会課題の解決やサステナビリティの取り組みを慈善活動で終わらせるのではなく、持続可能なビジネスとして成立させることを目指しています。
私たちの所属するSXコンサル&イノベーション本部では、生産者の顔が見える電力を供給する「みんな電力」をメインに、脱炭素コンサルティングや、その他のSX商材を総合的に展開しています。
※SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション):持続可能性を重視した経営へと転換すること

ー 顧客特性や営業スタイルについても教えてください。
坂本 これまでは、サステナビリティに取り組みたい企業さまからお問い合わせをいただき、商談を進めるスタイルがメインでした。
そもそも当社はインフラ業なので、どんな企業もターゲットになりえます。だからこそ、顧客をセグメントに分けたり、注力ターゲットを設定したり、ということはしていないんです。
当社の営業が大切にしているのは、営業担当者一人ひとりが「どんな企業と一緒に仕事をすると楽しいと感じるのか」という視点です。たとえば、ファッションやアパレルが好きな人なら、自分でアプローチしたいアパレル企業をリストアップして営業をするスタイルです。自分が一番モチベーションの上がるお客様に営業する、まさに「面白くて、儲かる」を営業活動にも落とし込んでいます。
個人商店化した営業組織が直面した、人員10倍への壁
ー 才流にご相談いただく前は、どのような課題がありましたか。
松岡 営業メンバーが少しずつ増え、私が育成を任されるようになったのですが、正解が見えていない状況でした。新人にどのように、どこまで教えたらいいのか。すべてが育成担当者に任されていたんです。
このままの状態では、採用を強化しても、継続的に売上を拡大していくのは難しいのではないかと感じていました。

遠藤 私は2025年に入社したのですが、松岡の言うとおり育成体制が未整備で、新人が自分から情報を取りにいかないと入ってこないんですよね。どこまでできたら一人前と言えるのか、どのような状態になれば活躍していると言えるのか。自分が進むべき道筋が可視化されていない状態に課題を感じていました。

坂本 私たちは5年後に、営業の人員を今の10倍にする目標を掲げています。そのためには、育成体制の構築は必須でした。
生成AIを活用し、最初は自分たちでセールスイネーブルメントに取り組もうとしたのですが、「UPDATERの営業とは」という定義が言語化されていないことには、生成AIに適切な指示も出せません。
そこで、UPDATERの営業をしっかりと定義し、新人向けのオンボーディングマニュアルをつくるために、支援してくれる会社を探しました。
才流さんを知り、セールスイネーブルメントに強い課題感を持っていた松岡が社内を説得して、決裁を通しました。
ー 松岡さんの想いが強かったんですね。
松岡 前職の大手企業では、誰がどこに配属されてもオペレーションが回るように育成が体系化されていたんです。だからこそ「この状況を改善したい」と強く感じていました。
才流さんの存在を知って、コンサルタントのおふたりと話をしたとき、私たちが求めていることを120%実現してくださると感じて、社内を説得しました。
坂本 営業を型化したいという松岡の課題意識はもっともですが、一方で、マニュアル化し過ぎると自由度がなくなり、営業が面白くなくなる可能性もありますよね。どこまでを型化し、どこに自分たちらしさを加えるのかを検討し、UPDATERのカルチャーを浸透させた独自の型づくりを目指したいと思いました。
独自の営業スタイルを言語化し、マニュアルに落とし込む
ー プロジェクトは、どのように進めましたか。
原口 「UPDATERらしさ」を分解すると、マインドや行動など多岐にわたります。ゼロベースで言語化していく難しさはありますが、だからこそ、私たちがみなさんと向き合えば、唯一無二のアウトプットができるだろうと感じました。
プロジェクトは最初の1か月半で大石社長、役員のみなさん、営業のメンバー全員にインタビューを実施しました。2か月目は、どんな考えのもとでどう行動するのがUPDATERらしい営業と言えるのか、みなさんと認識をすり合わせ、営業マニュアルの制作に取り組んでいきました。


原口 UPDATER様の営業をするためには、電力の仕組みや業界知識も欠かせません。そこで、営業マニュアルのほかに、業界理解を深めるためのコンテンツも厚めに作成。育成に必要な93問の知識テストや、5段階のロープレシナリオ、評価表など、ツール一式も作成しました。

徹底的な問いかけから見えてきた、「UPDATERらしさ」
ー プロジェクトを通じて、気づきや新しい発見はありましたか。
松岡 新人育成に必要な営業の型をつくろうとスタートしたプロジェクトですが、新人を育てるためには、会社としてどのように全体像を組み立て、資産として残すべきかを検討しなければなりません。視野を広げられたのは、才流さんとの壁打ちがあったからです。
遠藤 私は原口さんから受けた「営業活動に関するインタビュー」が強く印象に残っています。質問の鋭さがもう、半端じゃないんです(笑)。私たちが何気なく使っている、抽象度の高い表現に対して「詳しくはどういうことですか?」と、回答に悩むような深い質問がどんどん飛んできました。
気合いを入れて臨まないといけないプロジェクトだと、改めて感じました。
原口さんが深く向き合ってくださったからこそ、表面的な言葉に逃げず、「UPDATERらしさ」をしっかり言語化できたのだと思います。
坂本 同感です。
もうひとつ、プロジェクトを通じて改めて気づいたのは「営業のモチベーションは、必ずしも営業数字だけではない」ということでした。
当社で営業がモチベーションを強く感じるのは、お客様のところにすぐに会いにいけたり、お客様と一緒にイベントを企画したりといった体験にこそある。そうしたモチベーションを高められるよう、会社側で準備すべき環境を言語化し、マニュアルに落とし込みました。再現性のある仕組みとして順序立てて言語化できたことは、大きな収穫でした。
ー プロジェクトを進めるなかで、難しさを感じたシーンはありましたか。
松岡 高い熱量でつくりあげた営業マニュアルだったので、ページ数が増えるにつれ「すべての内容を新人にしっかりインプットしてほしい」と思っていました。ところがいざ新人に渡すと、「見ておきます」と返事がある程度。なかなか現場に浸透しない苦労がありました。
こうした壁を乗り越えられたきっかけが、知識テストとカリキュラムのサンプル導入です。
知識テストは、マニュアルの内容理解度を測定すべく用意されたテストで、全93問で構成されています。
カリキュラムのサンプルは、新人が配属されてから3か月で戦力化するまでに、誰が・いつ・何の順番でマニュアルを教え、インプットすべきかを可視化したカレンダーのひな型です。
教え方がわからない育成担当者には、これらがガイドとして機能しました。そして学ぶ側にも、学習の全体像や到達すべきゴールが可視化され、マニュアルが現場で活用される実践的なツールになりました。

マニュアルを学習した生成AI活用で、新人が商談を自己改善
ー プロジェクトによる成果について聞かせてください。
松岡 直接的な成果は、新人にかける育成時間が大幅に短縮されたことと、内容の標準化ができたことです。
先日、新卒の育成担当としてアサインされたのが、初めて指導を任された入社1年未満のメンバーでした。従来であれば育成方法を私が伴走して一から教える必要がありましたが、イネーブルメントが型化されたことで、レクチャーがスムーズに進みました。
育成にかかる工数が大幅に減り、管理者側の手が空くようになったのは大きな成果だと感じています。
ー 営業が型化されたことで、商談現場やメンバーの動きにはどのような変化がありましたか。
坂本 「UPDATERらしいアプローチとは何か」を各営業が意識して、商談に臨めるようになりました。提案の型が定まって、資料作成にかける時間が短縮されたことで、より多くの商談に時間を割けるようになっています。その結果、以前は何とか達成していた週当たりの目標商談数を、難なくクリアできるようになりました。
また、営業が扱う商材の幅も広がっています。これまで1商材しか販売してこなかったメンバーが、電力以外のSX商材を組み合わせ、多様な案件を獲得できるようになりました。
さらに、自分の商談が本当にUPDATERらしい商談だったのか、生成AIを活用して振り返る習慣も浸透しています。生成AIに営業マニュアルを学習させて、「商談振り返り先生」というツールを制作。商談を録音して文字起こしデータをインプットするだけで、生成AIが営業マニュアルの評価基準に沿って改善点をフィードバックしてくれます。営業担当者が自分で活動を振り返れるようになったのは、大きな進歩です。
原口 イネーブルメント用の営業マニュアルを有効活用し、定着化に向けて取り組んでいるんですね。上司を介さずに、自ら振り返りができるのは素晴らしいと思います。
坂本 上司から細かく指摘されるより、生成AIから指摘されたほうが気持ちも楽で受け入れやすいようです(笑)。ただ、おおもととなる営業マニュアルがないことには、精度の高い振り返りツールはつくれません。確固たる基準をつくれた意義は大きいと感じています。
遠藤 私はその後、別の部署へと異動したのですが、異動先でもこのマニュアルを活用しているんですよ。マニュアルで定義した「UPDATERらしい営業手法」には、業界における自社の立ち位置を明確にし、顧客に価値を感じてもらうための本質的な要素が凝縮されています。SX商材であれば十分に応用がきくため、活用幅はとても広いと感じています。
松岡 「当社が大切にしていることや営業への理解が深まり助かった」と、広報などの他部署からもすごく喜んでもらえました。営業を起点に、社内の共通言語ができたのは予想外の収穫でした。
社長からも、「想像以上にいいものができた」と言っていただけました。

若きリーダーの強い当事者意識が、プロジェクトをけん引
ー 本プロジェクトは、松岡さんが主体となって推進されたと聞いています。坂本さん、遠藤さんは、松岡さんの成長をどのようにご覧になっていましたか。
坂本 4か月で本当に大きく成長し、頼もしい存在になってくれました。
プロジェクトのスタート時は「営業活動をより良くする」という視界だったのが、だんだんと「どうすれば会社をもっと良くできるか」「あるべき姿へと組織をどう導くか」へと広がり、格段に視座が高まったと感じています。
遠藤 20代で、自分で決裁を通してプロジェクトを推進する。こうした経験を通じて、人は大きく成長するんだなと、松岡の働きを見て実感しました。
とくにプロジェクトの終盤では「そもそもゴールはどうあるべきか」「そのために何が必要か」と、上位レイヤーの議論がしっかりできるようになったことが印象的でした。
松岡 私が思っている以上に、成長を感じてもらえて嬉しいです。UPDATERに入社後は坂本さんの営業を間近で見せてもらいながら、自分との圧倒的な差分をどうすれば埋められるのかわからず、葛藤する毎日でした。
だからこそ、何とかしてこの状況を変えたいという想いが人一倍強くあったんです。プロジェクト期間中は、坂本さんのように視座高く考えるにはどうしたらいいかを、常に意識していました。才流のおふたりの力も借りながら、壁打ちを必死に積み重ねたことが成長につながったのかもしれません。

井出 松岡さんの「現状を変えたい、営業を強くしたい」という想いと当事者意識の強さは、私たちから見ても半端ではなかったです。
会社からやらされている仕事ではなくて、熱意をもってプロジェクトを引っ張ってくださった。推進する側の熱量が高かったからこそ、ここまでの大作ができあがったのだと感じています。

業界理解、言語化、スピード感。3つの壁を乗り越えた達成感
ー 才流のコンサルタントから見て、プロジェクトで印象的だったことを教えてください。
原口 難易度の高いプロジェクトだったからこそ、みなさんと一緒にやり遂げられた、強い達成感があります。
振り返ると、乗り越えなければならない壁は大きく3つありました。
1つ目は、電力業界を理解する難しさです。消費者として捉える電気と、事業者として提供する電力の間にはかなりのギャップがあります。業界ならではの複雑な仕組みやルールを理解し、自分が営業できるレベルまでインプットすること。ここに大きなエネルギーを注ぎました。
2つ目は、「UPDATERらしさ」という抽象的な概念を、みなさんが心から納得できる言葉としてマニュアルに落とし込む難しさです。松岡さんと何度も目線を合わせ、粘り強く言語化を重ねていきました。
そして3つ目は、UPDATERの圧倒的なスピード感についていくこと。プロジェクト期間中も生成AIを取り入れようとしたり、新しいイベントをつぎつぎに企画したりと、常に新しい動きをしているんです。変化が速いベンチャーだからこそ、未来を見据えたときにマニュアルに何を基準として残すべきか、判断に難しさを感じることが多くありました。
しかし、みなさんの熱意があったからこそ、3つの壁を乗り越えて、ベストなマニュアルをつくりあげることができました。一般的な電力営業のマニュアルだけだったら、ここまでのボリュームにも、これほどユニークな内容にもならなかったはずです。UPDATERらしさを追求したことで、「これも入れよう」と要素が次第に増え、そのプロセス自体がとても楽しく、コンサルタントとしても本当にやりがいのあるプロジェクトでした。
井出 松岡さんの熱意にお応えできたことを、嬉しく思っています。今回はとにかく詰めるべき要素が多くありましたが、みなさんがヒアリングに真摯に協力してくださったからこそ、しっかりとアウトプットに落とし込むことができました。
また、大石社長にヒアリングさせていただいたことも、個人的には印象深かったです。会社トップの営業スタイルは最も属人化しやすく、ノウハウを現場に展開するのは難しいものがあります。しかし今回は、社長の営業ノウハウをかみ砕き、どの要素を現場に落とし込むかまで議論することができた。会社にとって価値のあるものを一緒につくれたと感じています。

変化の激しいベンチャーで、作った型を更新し続ける覚悟
ー 最後に、今回の取り組みをどのように発展させていきたいか、今後の展望について聞かせてください。
松岡 これまで抽象的な会話が多かった当社の営業組織において、独自のノウハウや会社の歴史が精緻に言語化され、全社で共通認識を持てたことは大きな収穫です。
ただ私たちのようなベンチャー企業では、短いスパンで状況が変わっていきます。今回のマニュアルをつくって終わりにするのではなく、変化に応じて継続的にブラッシュアップし、私たちの手で進化させていきたいです。
また今回、20代の私が数百万の決裁を通してプロジェクトを推進させてもらった経験が、ほかのメンバーにも良い刺激として伝わったように感じています。新しいことに挑戦しようとするポジティブな波が、営業を起点にさらに広がっていくのではないかとワクワクしています。
坂本 今回は新人の即戦力化に特化したマニュアルでしたが、組織が拡大するにつれて、今度は管理者がいかにメンバーをマネジメントするか、という新たな課題が出てくるはずです。次はマネジメント層向けのイネーブルメントにも挑戦し、営業力を底上げしていきたい。そのフェーズがきたら、また才流さんにお力添えいただきたいと思っています。
そして松岡の言うとおり、組織の置かれている状況は常に変化しています。今回つくった仕組みを形骸化させず、絶えずアップデートすることが、これから先の急拡大を支える鍵になると確信しています。

撮影:関口 達朗
取材・執筆・編集:藤井 恵