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法人営業

多様な営業をひとつの「型」に。森永乳業が明文化した、営業が迷わないための道しるべ

森永乳業株式会社

業種

食品

従業員数

5,000名以上

森永乳業株式会社様では営業の生産性を向上させ、限られた人員で成果を最大化すべく営業の型化に取り組みたいと考えていました。しかし、同社の営業は小売向けの家庭用商材、業務用の食品素材、パートナー営業やDtoC(一般消費者への直接販売)など、扱う商材や対峙する顧客がさまざま。さらに、アプローチからアフターフォローまでを一人の営業担当者が担っており、ひとつの「型」に落とし込む難しさがありました。

そこで才流では、3か月のプロジェクトで30名を超える営業担当者にインタビューを実施。どの営業担当者にも共通する重要なエッセンスを抽出し、営業マニュアルづくりを支援しました。

プロジェクトを主導した戦略推進グループの長谷川さん、甲木さん、そして営業現場でプレイングマネージャーを務める橋本さんの三名に、型化の難しさやプロジェクトでの気づき、完成した営業マニュアルの反響についてお話を伺いました。

森永乳業株式会社 国内営業本部 営業企画部 戦略推進グループ マネージャー 長谷川 亮輔さん、国内営業本部 営業企画部 戦略推進グループ リーダー 甲木 嵩大さん、国内営業本部 食品素材統括部 広域営業部 マネージャー 橋本 修平さん

プロジェクト概要

企業名

森永乳業株式会社

会社概要

業種:食品

従業員数:連結7,345(2026年3月時点)

ご支援内容

セールスイネーブルメント

ご支援期間

3か月

ご支援前の状況
  • 理想の営業像がバラバラで、明文化された指針がなかった
  • OJTによって新人教育が属人化していた
  • ベテラン社員の高齢化が進んでおり、その知見を組織の資産として残す必要があった
プロジェクトのサマリ
  • 営業担当者にアンケートを実施。そのうち30名を超える方に営業活動の実態をヒアリング
  • シチュエーションが異なっても活用できる、考え方のよりどころとなる心構えや判断の基準を定義し、営業の型としてマニュアル化
  • マニュアルを定着させるための理解度テストも作成
  • 若手や販売責任者である部長陣からも喜ばれる普遍的な営業マニュアルが完成

組織が目指す理想の営業像を明文化したい

― 今回の取り組みでは、営業の「型化」を進められたとのことですが、なぜ型化が必要だったのですか。

長谷川 当社では現在、社をあげて営業改革に取り組んでいます。スローガンは、「売る」を超えて「つなぐ」。顧客志向で未来を共に歩むパートナーです。商品を買っていただく営業から、顧客の経営課題を共に解決するパートナーへの変革を目指してスタートしたプロジェクトです。

しかし、顧客志向の営業とはどういう営業なのか、パートナーとはどんな存在なのか、目指すべきゴールのイメージが人によってバラバラでした。組織として一枚岩になるには、当社が目指す「理想の営業像」を明文化したほうがいい。全員が解像度高く理想の姿をイメージできるよう、営業の型化が必要だと考えていました。

森永乳業株式会社 長谷川 亮輔さんのインタビューカット
森永乳業株式会社 長谷川 亮輔さん

甲木 営業現場では、限られた人的資源でいかに成果を最大化するか、生産性に課題がありました。少数精鋭で高いパフォーマンスを発揮するには、新入社員を早期に戦力化する必要があります。これまでのようなメンター制度を設けて、OJT(実務を通じた指導)でじっくり時間をかけて教育する方法だけではなく、数か月で独り立ちできる教育体制を構築したいと考えていました。

OJT方式による教育には、属人化の問題もありました。担当する先輩社員の教え方や、新入社員との相性によって、成長速度が変わってしまうのです。社員の高齢化も進んでおり、ベテランの知見を組織に残したいという思いもありました。

また中途社員の場合は、そもそもOJT担当がつきません。業界や商品の基礎知識をインプットするための教育マニュアルはあったのですが、「森永乳業の営業」を定義しきれておらず、不安の声もあがっていました。そこで、育成に活用できる営業マニュアルをつくりたいと考えていました。

森永乳業株式会社 甲木 嵩大さんのインタビューカット
森永乳業株式会社 甲木 嵩大さん

― 才流には、どのような経緯でご相談いただいたのでしょう。

長谷川 当社のグループ会社が営業改革に取り組んでおり、才流さんの支援を受けていました。プロジェクトで完成した営業マニュアルを見せてもらったところ、私たちが思い描いていたアウトプットに非常に近かったため、支援を依頼しました。

30名超のインタビューから導いた、森永乳業の「営業の型」

― 森永乳業様からのご相談を受けて、才流ではどのようにプロジェクトを進めましたか。

山本 営業を型化するには、営業担当者が行っている業務を詳細に把握する必要があります。才流では通常、商談に同席したり、商談の録画を拝見したりして理解を深めます。しかし今回は難しいということで、定量アンケートを行ったうえで個別にインタビューを実施することにしました。

30名を超える幅広い年次の方に、営業活動の実態や課題についてくわしくお話を伺いました。具体的には営業プロセスや注意点、若手が感じている教育上の不足点、ハイパフォーマーの行動習慣、マニュアルに盛り込むべき要素などです。みなさんが現場で行っている工夫をしっかりマニュアルに反映できるよう、整理して資料に落とし込んでいきました。

株式会社才流 シニアコンサルタント 山本 瑞人が話をする様子
株式会社才流 シニアコンサルタント 山本 瑞人

― 「森永乳業の営業ならでは」の特徴は、どんなところにありましたか。

名生 関わるステークホルダーが多岐にわたり、営業担当者が担う役割の幅が広い点が特徴です。

たとえば、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの小売店を対象とする営業の場合、アプローチ先は「本部」と「店舗」の二層構造になっています。本部のバイヤーに提案して終わりではないんです。店舗のバックヤードも含めた、いろいろなステークホルダーと密にコミュニケーションを取り、信頼を積み重ねながら話をまとめていく必要がある。

さらに、他業種であれば分業されることが多い受注後の需給トラブルの対応など、カスタマーサクセスも営業担当者が担っています。関係者の多さと責任の広さから、高度な顧客理解と調整力が求められ、その複雑性と難しさを痛感しました。

また、インタビューを行うなかで、最も印象的だったのが顧客志向の精神です。単に商品を買っていただくだけではなく、「この提案はクライアントのためになっているか」「相手はどんな思いでビジネスをしていて、自分たちはどう関わっていけるか」を追求する姿勢が現場に根付いている。こうした姿勢はまさに森永乳業の営業ならではであり、強みだと感じました。

株式会社才流 シニアコンサルタント 名生 和史が話をする様子
株式会社才流 シニアコンサルタント 名生 和史

顧客も課題も違う、多様な営業をひとつの「型」にする難しさ

― プロジェクトを通じて、どのような気づきや発見がありましたか。

橋本 「商品を売るのではなく、クライアントにどう関わるかが大切」という教えは、これまで社内でも語り継がれてきたことで、私自身もメンバーに伝えてきました。ただそのやり方は、本当に人それぞれなんですよね。だからこそ、ハイパフォーマーを見ても「あの人は可愛がられるタイプだから」と、キャラクター特性として捉えてしまったり、表面的なテクニックだけをまねしようとしたり……。ノウハウを言語化、平準化して組織に落とし込む難しさを感じていました。

そこを今回、才流さんがしっかりと型化してくれて、「自分たちがやってきたことは、こういうことだったのか」と気づきがありました。

もちろん、マニュアル制作はゴールではなくスタートにすぎません。内容を一通り学んだうえで、どう応用していくかは、営業担当者がそれぞれ知恵を絞る必要があります。それでもスタートラインで知っておくべき営業の型や、トラブルがあったときの対応方法など、押さえておくべきことが網羅されたことで、メンバーに説明しやすくなったと感じています。

森永乳業株式会社 橋本 修平さんが話をする様子
森永乳業株式会社 橋本 修平さん

甲木 私は大きく2つの気づきがありました。1つは、営業のみなさんが感じている課題は、年次や役職、担当企業によってかなり異なるということ。営業の型をつくる目的でスタートしたプロジェクトですが、型としてまとめるにはカバーしきれないほど、課題が多岐にわたることがよくわかりました。

もう1つは、営業活動そのものよりも、社内手続きや成約後の需給調整に必要な物流の理解といった課題を感じている方が多いということです。営業活動を円滑にすることが私のミッションなので、今後どんな手を打てば営業のみなさんのお役に立てるのか、新たな課題が見つかったのも予想外の気づきでした。

― プロジェクトを進めるなかで、難しさを感じた瞬間はありましたか。

長谷川 甲木も言っていたとおり、営業担当者一人ひとり、クライアントも扱う商材も違うので、型としてひとつのマニュアルにまとめる難しさを感じました。

新人や中堅、ベテランと年次や立場によってマニュアル化に求めるテーマも、まるで違ったのです。若手は細かいhow toを求めていましたが、中堅以上は「置かれた状況に応じて、答えは自分で導き出すもの」という前提で、how toよりも心構えを中心にしたほうがいいという意見でした。

営業現場や才流さんとコミュニケーションを重ねながら、最終的には当社の営業が共通して持っておくべき心構えや判断の基準を中心にまとめていきました。営業活動の前提となるよりどころをしっかり示したうえで、最後に答えを導き出すのは営業担当者それぞれであることを伝える内容になりました。

若手も部長陣も喜ぶ営業マニュアルが、組織の強固な指針に

― プロジェクトによる成果を挙げていただくとしたら、どんなことがありますか。

長谷川 今はまだ、営業マニュアルが完成した段階なので、成果が生まれるのはこれからです。ただ、私たちが目指すべき「ありたい姿」を言語化できたこと、そして営業全員の共通認識となる強固な指針ができたことは、組織にとって大きな前進だと感じています。

甲木 何よりうれしかったのは、作成中のプロトタイプをいろいろな部門の若手に見せたときの反応です。「いいね」というレベルではなくて、「ものすごくいい」「まさに、こういうものを求めていた」と、ポジティブなリアクションをたくさんもらったんです。

現場で本格的に展開するのはこれからですが、この内容ならつくって終わりにならず、しっかり浸透させることができると確信しました。

橋本 私も若い世代の反応がものすごくポジティブだったことに、大きな手応えを感じています。マニュアルを「押し付けられたルール」ではなく、「現場を助けてくれるツール」として歓迎してくれている。今後の定着を考えると、これは大きな成果だと思います。

長谷川 若手に加えて、販売責任者である部長クラスからも「すごく良い資料」「今後の育成に積極的に活用していきたい」と、うれしいフィードバックが届いています。営業全体がひとつの指針を軸に、一枚岩となって動き出せる土台をつくれたことは、プロジェクトによる成果です。

正直なところ、プロジェクトスタート時は、たった3か月でアウトプットが出せるものなのかと半信半疑でした。ところが蓋をあけてみると、きっちり3か月でマニュアルが完成しました。これは、つまずいたときにすぐに代案を出してくれる、才流さんの進行のたまものです。

たとえば商談に同席いただくことが難しいとわかったときも、すぐに営業関係者へのインタビューという代案を提示してくれました。引き出しが多いので立ち止まることがなく、限られた時間でしっかりとアウトプットしていただき助かりました。

森永乳業の3名が並んでおり、真ん中に座っている長谷川さんが話をしている。二人は真剣に耳を傾けている様子

妥協なきインタビューが生んだ、支持される営業マニュアル

― 才流のコンサルタントから見て、プロジェクトで印象的だったことを教えてください。

名生 既存顧客向けの営業というと、ある程度決められたオペレーションをこなしていくものと想像しがちですが、森永乳業様はまったく違います。営業担当者一人ひとりが、お客様と向き合いながら、工夫を重ねている点が非常に印象的でした。

そうした工夫をインタビューで明らかにできたことが、森永乳業らしい営業マニュアルの作成につながったと感じています。

山本 営業担当者によって顧客特性や商材が大きく異なるなか、共通項として導き出されたのが「心構え」の部分でした。

スローガンである「売る」を超えて「つなぐ」。顧客志向で未来を共に歩むパートナーとはどんな存在なのか。AIが台頭するなか、営業が足を運んで果たすべき役割は何なのか。営業組織の前提となる指針をしっかり言語化したことで、普遍的なコンテンツをみなさんと共につくりあげることができたと感じています。

最終的に現場から支持されるアウトプットができた背景には、30名を超える営業のみなさんへのインタビューがありました。調整だけでもかなりのボリュームでしたが、より良いアウトプットのためにご尽力いただいたことを感謝しています。

才流2名と森永乳業の方がL字型のテーブルで対している様子。

変化の早い時代に必要なのは、組織をまとめる「道しるべ」

― 今回の取り組みをどのように発展させていきたいか、今後の展望を聞かせてください。

長谷川 まずは完成した営業マニュアルを全員に配布して、目を通してもらう方針です。ただボリュームがかなりあるので、中堅以上に向けた短縮版も制作したいと考えています。新入社員には必ずフルバージョンを読んでもらい、理解度テストも実施する予定です。

営業マニュアルは今後も中身をバージョンアップしたり、その年の方針を加えたり、定期的に更新をして、毎年必ずチーム内で見てもらいたいと考えています。

また、今回つくりあげたマニュアルは私たちが目指す指針となっています。今後も私の組織では営業活動を支援すべく、ナレッジの蓄積やシステム導入などさまざまな施策を行いますが、この指針を軸に、一貫性のある仕組みをつくっていきたいです。

― 最後に、営業の型化に課題を感じている企業に、メッセージをお願いします。

橋本 自分たちが「当たり前」と捉えている営業活動にこそ、独自のこだわりや属人化が隠れています。今回、才流さんに「他社と比較した際、自分たちはどうなのか」「今のやり方は本当にベストなのか」という第三者の視点を提示していただき、自分たちの営業活動を俯瞰する良い機会になりました。自社を外から客観視するプロセスは、型化において必要だと感じています。

甲木 同感です。今回の営業マニュアルづくりは当社としても初めての取り組みだったので、「何から手をつけるべきか」「本当にこれでいいのか」と細かな不安が常にありました。そこに対して才流さんはいつも豊富な知見で答えてくれたので、大きな安心感がありました。

自社だけでもマニュアルはつくれるかもしれませんが、やはり自分たちの常識にとらわれてしまいます。ほかの営業組織との客観的な違いや、それによって生じている弊害を第三者に指摘・整理してもらうことは間違いなく有用です。これから型化に挑む企業はぜひ、外部の知見を頼ってみてはいかがでしょうか。

長谷川 「型化」という表現から、「画一的で柔軟性に欠ける」といったネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。でも変化が早い時代だからこそ、迷わないための「道しるべ」が必要だと思います。道しるべがないことには、個人が思い思いに動いて、組織の力が分散してしまうからです。変化に立ち向かうには、型としての指針が欠かせないと考えています。

ただ、もちろん型はつくって終わりではありません。時代やお客様に合わせてしっかりアップデートしていくこと。また、型をベースに営業一人ひとりが、自分で最適な答えを見つけて動ける力をつけること。お客様と共に未来を歩めるように、これからも一丸となって理想の営業を追求していきたいです。

森永乳業3名が向き合って談笑する様子。チームの良い雰囲気がうかがえる

撮影:西村 法正

取材・執筆・編集:藤井 恵

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