freee会計をはじめとする統合型経営プラットフォームを開発・提供するfreee株式会社様。約2年前に、大手グループ企業の子会社を注力顧客とするグループシェアードチームを立ち上げました。大手グループのガバナンス強化を支えながら、同社におけるエンタープライズ領域の開拓をけん引する役割を担っています。
今回ご紹介するのは、グループシェアードチームに才流が伴走した半年間のプロジェクトです。中間管理職が不在のため、才流が「擬似マネージャー」として介在。マーケティング戦略の立案からLP(ランディングページ)、ホワイトペーパー、イベントの企画・設計を支援しました。結果、担当者が施策を回すマーケターから、戦略の整理を託される次期リーダーへと成長を遂げました。
一人でマーケティングを担い奮闘していた正田さんに、当時の葛藤や現場に起きた変化、自らの成長実感について話を伺いました。

プロジェクト概要
| 企業名 | |
|---|---|
| 会社概要 | 業種:ソフトウェア |
| ご支援内容 | BtoBマーケティング戦略立案の支援 |
| ご支援対象の商材 | freee会計 |
| ご支援期間 | 6か月 |
| ご支援前の状況 |
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| プロジェクトのサマリ |
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上場企業の子会社を支援する、グループシェアードチーム
ー正田さんが所属するグループシェアードチームはどのようなミッションを担う組織ですか。
正田 当社では、クラウド会計ソフトのfreee会計をはじめとする、統合型経営プラットフォームを開発・提供しています。「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、個人事業主や従業員300名以下の中小企業様を対象にビジネスを展開してきました。
私が所属しているグループシェアードチームでは、上場企業の子会社を重点的に支援しています。親会社は何万人もの従業員を抱える大企業であっても、傘下の子会社は従業員数が数百人から数千人ほどの、freee製品の価値を感じていただきやすい企業が数多く存在しているためです。
大企業では、データ形式の統一や業務の標準化を目的に、グループ子会社の間接業務をシェアードサービスセンター(※以下、SSC)に集約したり、グループ内の会計ソフトに統一したりするケースが増えています。しかし、親会社と同じ重厚で高額な基幹システムを導入するのは、コストや運用の面から現実的ではありません。
そこで親会社および主要グループ会社と、比較的規模の小さいグループ会社の会計ソフトを使い分ける「二層ERP」というアプローチを取り入れる企業が増加しています。私たちは、この二層目としてfreee会計を想起し、採用いただけるよう取り組んでいます。
具体的には、すでに当社のサービスを導入いただいているグループ企業様を起点に、未導入の子会社様も含めた、グループ全体への導入を推進しています。さらに人事労務や電子サインといった周辺領域にも支援を広げ、グループ全体のバックオフィス業務の生産性向上とガバナンス強化に寄与することをミッションとしています。
※シェアードサービスセンター(SSC):グループ企業や複数の事業部に分散する経理・総務・人事などの間接業務を一か所に集約することで、業務効率やコスト削減を図る専門組織

中間管理職の不在。施策実行に奔走する一人マーケターの孤独
ー才流にご相談いただく前は、どのような課題がありましたか。
正田 グループシェアード領域は、会社として注力領域に掲げており、攻略の方針を描いていました。しかし、方針を具体的なマーケティング戦略に落とし込み、施策を実行するための体制が整っていなかったのです。
マーケティング担当者は私一人で、現場を統括する専任のマネージャーは不在。直属の上司は部門長で、他領域と兼務しており多忙を極めていたため、業務の相談をする時間を十分に取ることが難しい状況でした。
さらに、マーケティング施策を実行するために必要なノウハウが不足している点にも、強い課題を感じていました。
私はもともと営業出身です。ホワイトペーパーを制作する際は、どうやって情報を拾い集め、ダウンロードしたくなるストーリーに組み立てたらいいのか。顧客向けのイベントはどのように体系立てて、計画を立てたらいいのか。ノウハウがなく、我流で進める難しさがありました。
相談相手がおらず、施策の型もないまま、とにかく効果の見込めそうな施策を手探りで量産する状況に、ジレンマと限界を感じていました。
上長と現場の間に立つ、擬似マネージャーとしてプロジェクトを設計
ーfreee様からのご相談を受け、才流ではどのような方針で支援を考えましたか。
小東 マーケティングの戦略設計と並行して、スムーズに施策を実行できる体制の構築を目指しました。
リソースが限られる状況を踏まえ、意思決定が必要な戦略のWho・Whatの部分は部門長とあらかじめ目線を合わせておく。そのうえで、具体的な施策のHowについては正田さんにしっかり伴走する。私が擬似マネージャーのように入り、両者の間を往復しながら進める方針を立てました。
また、部門長からは「正田を次期マネージャー候補として鍛えてほしい」とのご要望もいただいていたんです。そのためプロジェクト終了後も正田さんが自走できるよう、才流のメソッドや思考プロセスをしっかり習得いただきたいと考えていました。

ープロジェクトでは実際にどのようなことを行ったのでしょうか。
小東 最初の2か月は、freee様が立てた方針を再確認しながら戦略設計に注力しました。ターゲットとなる財務部門やデジタル推進部門の担当者に見込み顧客インタビューを行い、グループ企業に会計ソフトを導入する際のリアルな課題を確認。その結果から、顧客がシステム導入の検討を始めるきっかけとなる文脈、カテゴリーエントリーポイントを設計しました。
さらに受注実績の分析や競合分析も行い、どういった顧客層に対し、サービスをどう訴求すべきかを固めていきました。
3か月目から行ったのは、戦略を施策へと落とし込むこと。正田さんと毎週1時間の定例ミーティングを設け、壁打ちをしながらコンテンツをつくっていきました。メルマガやホワイトペーパーなど、才流のメソッドを共有しながら、正田さんが手を動かして形にしていく流れです。
またプロジェクトの中盤からは既存顧客の深耕についても支援のスコープに入れ、既存顧客向けのイベントをいつ、どのようなテーマで開催するかを設計。年間計画も策定しました。
※関連記事:BtoB企業のカテゴリー設計入門|「○○といえばうちのサービス」の作り方

ターゲットの再定義で、施策の優先順位がクリアに
ープロジェクトを通じて、正田さんのなかで新しい発見や、マーケターとしてのマインド変化はありましたか。
正田 最も大きかったのは、グループシェアードチームが対象とする「Who」に関する本質的な気づきです。
これまで私たちは、SSCをターゲットと考えていました。ところが今回、才流さんとの壁打ちを通じて、真に狙うべきは「SSCかどうかにかかわらず、グループ会社の会計システムに決定権を持つ法人」であることが見えてきたんです。
ターゲットの解像度が高まったことで、施策のピントがずれなくなり、担当業務をより俯瞰して見られるようになりました。
ー難しさや壁を感じた瞬間はありましたか。
正田 難しさを感じたのは、組織改変のタイミングです。プロジェクト中に直属の上司が変わり、私が進めている施策の背景や内容を新しい上司にゼロから説明し、理解してもらう必要がありました。多くの仕事を抱えながら、伝わる形の資料に落とし込むのは時間もパワーもかかります。
その点、小東さんには本当に助けられました。マーケティングの全体戦略と私の取り組みをあっという間に資料に落とし込んでくれたんです。私と上司の間に立つ翻訳者になってくれたことで、上層部との意思疎通が円滑になりました。
ー壁を乗り越えて、やりがいを感じたのはどのような瞬間でしたか。
正田 ずっとやりたかった世界が、目の前で実現していく手応えを感じられた瞬間です。
私は前職で営業をしていて、リードの質が重要だと身をもって感じたことから、マーケティング業務に関わるようになりました。freeeに転職したのは、マーケターとして経験を積みたいと思ったからです。
ただ入社してからは、メンバーが私一人ということもあり、やりたいことばかりがどんどん積み上がっていく状況でした。あれもやりたい。これもやりたい。でも優先順位と工数を考えると、着手できるのは来期以降……。やりたい施策を消化しきれない状況に、悔しさやもどかしさを感じていました。
でも才流さんに支援いただいて、状況は変わりました。
まず、毎週の定例で壁打ちをしてもらったことで、一人で調べたり考えたりして作業が止まる時間が格段に減りました。疑問を感じて業務がスタックしそうになったときは、いつでも相談に乗ってくれる。我流で進めてきた施策は、才流さんのメソッドを教えてもらったことで、スピードも精度も大幅に向上しました。
小東さんが一緒に手を動かしてくれて、やりたかったことが次々と形になり、大きなやりがいを感じることができました。

施策の実行者から、事業全体を見渡すマーケターへ
ープロジェクトによる成果について聞かせてください。
正田 グループシェアード領域におけるマーケティング戦略が言語化され、資料として視覚化されたことで、社内のコミュニケーションが円滑になったことは大きな成果です。皆に共通言語ができ、組織改変で上長や関係者が変わった際も、スムーズに認識を合わせられるようになりました。
また、定期開催しているオフラインイベントに加えて、LPや5本のホワイトペーパーを制作し、ストック型のマーケティングアセットを整えることができました。既存顧客と中長期的に関係性を構築するための受け皿をつくれたのも、プロジェクトの収穫です。
ープロジェクトスタート時、部門長からは「正田さんを次期マネージャー候補として鍛えてほしい」と要望をいただいていました。ご自身の成長実感はいかがですか。
正田 プロジェクトを通じて、一人前のマーケターとして成長できた実感があります。
これまでも自分なりに成すべきことを考え、実行してきましたが、リソースや推進体制の問題があり、着手しきれないことが多くありました。小東さんが支援に入ってくださり、それらを前に進めることができたと思います。
また、以前よりも事業を俯瞰して見られるようになったと感じています。
最近ではマーケティングが追うべき目標についても、事業の成長に直結する指標があるのではないかと、思考をめぐらせています。たとえば既存顧客向けのイベントで考えるなら、単なる参加者数や満足度ではなくて、イベント参加企業と非参加企業でチャーンレート(解約率)やARR(年間経常収益)の伸び率にどれだけの差があるのか。あるいはイベントによって、競合とのコンペを回避した指名での商談率はどれだけ上がるのか。
マーケティングによる本質的な成果を可視化して、目標そのものを自ら設計したいと、SQL(※)の勉強を始めました。データベースからデータを引っ張って分析し、置くべき指標を提案したいと考えています。
※SQL:Structured Query Languageの略で、データベースを操作するためのコンピューター言語

部門横断プロジェクトを先導し、戦略の整理を託される存在に
ーコンサルタントから見て、プロジェクトで印象的だったことを教えてください。
小東 freee様のマーケティングチームにどう資産を残せるかを意識して進めたプロジェクトでした。才流のメソッドが組織に根づき、今も正田さんを中心にPDCAが力強く回っている様子を知ることができ、とてもうれしく感じています。
正田さんの成長を象徴する、印象的なエピソードがあります。
2026年に入ってから、組織改変に伴い、営業とマーケティングが一体となって、共通の目標設定をするための部門横断プロジェクトが立ち上がりました。その部門を超えた議論の先導役に正田さんが抜てきされたんです。営業6名に対し、マーケは正田さん一人という構図でしたが、見事にプロジェクトを引っ張っておられました。
その活躍ぶりを見て、部門長とも「これからは正田さんに任せて大丈夫ですね」とお話ししていました。
ー正田さんが短期間で大きくステップアップできた要因は何でしょうか。
小東 「責任感」と「主体性」だと思います。
正田さんは、実働一人という状況で、LPからホワイトペーパーの制作、セミナー、イベントと本当にフルスタックでやり遂げました。
私に対しても、受け身の姿勢ではなく、積極的にコミュニケーションをしてくださいました。よくある「コンサルタントが先生で、クライアントが生徒」という関係ではなく、当意即妙なレスポンスでお互いに背中を預け合いながら、プロジェクトを推進できたのも正田さんのおかげです。

攻略すべき市場を見出し、戦略を描けるマーケターを目指して
ー最後に、正田さんご自身がこの先取り組みたいことや今後の展望について聞かせてください。

正田 これまでの私は「グループシェアード領域のこの数字、この施策を攻略せよ」と、具体的に与えられた指示やタスクに取り組んできました。それがこの半年で、「グループシェアード領域をどう攻略するか」という、一段も二段も高いミッションを自ら買って出られるようになったと感じています。
市場のどこに伸びしろがあって、そのためにどのような施策を打てばいいのか。領域への理解も深まり、勝ち筋がだんだんと見えてきました。
今後は自分で戦略の絵を描き、できることをやりきりたい。そしてゆくゆくは言われた領域を攻略するだけでなく、自らの手で攻略すべき場所を見つけ出せる、より上位レイヤーの戦略が描けるマーケターに成長したいです。
今回のプロジェクトで得られたナレッジをほかのセグメントへと横展開し、さらに多くの企業様の課題解決に貢献していきたいです。
| <部門長からもコメントをいただきました> 今回のプロジェクトでは、グループシェアード領域のアプローチを型化し、来年度に向けたマーケティングプランの全体像をおおむね完成させることができました。また、計画作成のみならず、そのプランやアプローチの型を現場へしっかりインストールし、メンバーの成長を促してくれたことも大きな成果だと感じています。 現場はどうしても「セミナーをやろう」「LPをつくろう」と打ち手ありきな思考に陥りがちです。しかし才流さんが擬似マネージャーとして間に入り、伴走してくれたことで、「誰の、どのような課題を解決するための施策なのか」と戦略ベースの思考へと補正されました。 正田さんはこの半年で大きく成長を遂げてくれました。顧客理解を起点にマーケティング全体を俯瞰できるようになり、次期リーダーとして自走するためのスキルがしっかりと身についたと感じています。これからの活躍が本当に楽しみです。 |
撮影:関口 達朗
取材・執筆・編集:藤井 恵