パートナービジネスで戦略を立てる前に、最初にやるべきこと。それはパートナー(代理店)に対する理解を深めることです。「パートナー解像度を高める」と、才流では呼んでいます。
- パートナーがどうすれば自社の商品を売ってくれるのか?
- どんな情報があれば、売りやすいのか?
- そもそも、パートナーの営業体制はどうなっているのか?
これらの疑問は、すべてパートナー解像度が低いことが原因なのです。
そこで打ち手として、パートナーへのインタビューをおすすめします。パートナーの具体的なインサイトを引き出せれば、どこに重点を置いてパートナー戦略を進めるべきか見えてきます。
本記事では、既存パートナーおよび、これからパートナーになる可能性がある想定見込みパートナーへのインタビューを効果的に行うための項目をまとめました。ぜひご活用ください。
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パートナー向けインタビューの流れ
パートナー向けにインタビューする際の流れは以下です。全項目のヒアリングに要する時間は最大で60分を想定しています。
共通設問
基本情報、事業情報、営業体制、顧客基盤、業務上の情報収集方法
既存パートナー向けの設問
(自社プロダクト)の選定基準、(自社プロダクトのカテゴリー名)の販売状況、(自社プロダクト)の提案方法
想定見込みパートナー向けの設問
外部仕入れプロダクトの取り扱い状況、(自社プロダクトのカテゴリー名)の選定基準、(自社プロダクトのカテゴリー名)の販売状況・提案方法、自社プロダクト紹介後のフィードバック
インタビューシートに、内容を記入していきます。聞き逃し、書き逃しがないように念の為に録音(WEB会議の場合は録画)をしておきましょう。
インタビューの基本項目
インタビュー項目はさまざまな状況を想定して、網羅的に用意しています。実際のインタビューでは、ヒアリングしたい項目を精査したうえで、実施するとよいでしょう。
基本情報はインタビュー前から準備する
インタビュー相手の「氏名」「職種」「従業員数」などの基本情報を記入します。
インタビュー前にわかる範囲で記入し、Webサイトをみて相手の会社の事業内容や組織構成をインプットしておきましょう。以降の設問で深堀りヒアリングをしやすくなります。
事業情報には「アライアンスのストーリーづくり」のヒントがある
「事業概要」「注力商材」「事業の課題」を記入します。
「注力商材」と「事業の課題」には、アライアンスのストーリーづくりのヒントが隠されています。パートナーの事業課題を把握することで、アライアンスのスキーム構築が描きやすくなります。
顧客基盤・営業体制の情報は、売れるパートナー戦略の肝となる
「営業の評価基準」は、営業が商材をかつぐ際の優先順位に直結する重要事項です。
例えば、パートナーの営業の評価が売り上げと粗利に加えて、注力プロダクトの販売数に設定されている場合。当然ながらパートナーは注力プロダクトを売ることを常に意識して、営業活動を展開します。
自社プロダクトをパートナーの注力プロダクトに盛り込んでもらうために、以下のアプローチが必要です。
- 注力プロダクトを選定する該当部門の意思決定者と関係を築く
- 注力プロダクトの選定時期を逃さない
粗利重視の評価であれば、パートナーが利益を出せる報奨設計にすることを視野に入れましょう。
また、パートナーのポテンシャルを把握するために、「営業人数」「どの業界に強いのか」「営業先の窓口部門はどこか」をヒアリングします。特に、パートナーの営業が関係値を築けているのは顧客のどの部門かを見極めることが大切です。
例えば、自社プロダクトのターゲットが経理部門の場合。パートナーが経理部門に強くなければ、いくら有望な顧客でもあっても、売るのは容易ではありません。自社プロダクトとの相性はよくないでしょう。
パートナーのポテンシャル分析は、取引先の顧客名ではなく部門まで深堀りしましょう。
既存パートナー向けのインタビュー項目
ここからは、既存パートナー向けの設問です。
取り扱いの選定基準は基本の質問
「取り扱いの背景」「選定基準」「比較したプロダクト」「契約の決め手」など、パートナー戦略を立案するうえで参考になる情報が多く含まれています。
競合プロダクトの販売状況
「競合プロダクトを扱っているか」「年間の案件数はどれくらいか」「競合プロダクトはどれくらい売れているか」をヒアリングします。
競合プロダクトや代替手段が売れている数がわかれば、パートナー内でのインストアシェアを推定できます。相対的地位や販売ポテンシャルを把握することで、営業リソースの優先順位をつけやすくなります。
※インストアシェアとは:特定のパートナーにおける売上高や販売数量のうち、自社商品が占める割合のこと
パートナーが顧客に紹介する際のトークやセールスツール
「なぜそのプロダクトを選んで提案するのか」「顧客に紹介する際によく使うセールスツールはなにか」「欲しいセールスツールとその背景」をヒアリングします。
中でも「◯◯を顧客に紹介するとしたら何と言って紹介するか」の設問は有効です。パートナーは端的に「◯◯は〜〜なプロダクトです」と説明する傾向があります。
つまり、パートナー内でどのような第一想起を取れているのかの把握につながります。
想定見込みパートナー向けのインタビュー項目
ここからは、想定見込みパートナー向けの設問です。想定見込みパートナーとは、これからパートナーになる可能性がある将来のパートナー候補を指しています。
社外から仕入れるプロダクトの傾向
競合のプロダクトを仕入れていない場合は、直近で外部から仕入れたプロダクトをヒアリングします。取り扱いの背景を聞くと、パートナーが目指している事業の方向性や課題が見えてくるため、アライアンスのストーリー作りのヒントが得られます。
競合のプロダクトの選定背景
競合のプロダクトの選定した背景をヒアリングします。競合のプロダクトと差別化できれば、取り扱ってもらえる可能性が高まります。
パートナーが顧客に紹介する際の売り分け方や案件数
「各プロダクトの売り分け方」は複数プロダクトを扱っている場合にヒアリングしましょう。
通常、パートナーの営業は「◯◯の要件ならA社のプロダクト」「要件がなければB社のプロダクト」などと、プロダクトのポジショニングマップを脳内に描いています。自社プロダクトは適切に認知されているか、カバー範囲を広げることはできないかなどの対策を講じるヒントを得られます。
「セールスツール」についてもヒアリングし、改善点がないか確認しましょう。
余談ですが、まったく異なる業界のプロダクトで、優れているセールスツールを用意しているメーカーを教えてもらう設問も有効です。パートナー戦略施策は、toC、toB問わず、他の業界から学べることがたくさんあります。
自社のプロダクトを紹介し、フィードバックをもらう
ひととおりのヒアリングが済んだら、自社のプロダクトを5分程度で紹介しましょう。
自社のプロダクトのどのような部分に良い反応、または悪い反応を示しているのか。想定見込みパートナーの生の声や行動を把握できます。得られたインサイトは紹介資料の改善やアライアンスのストーリーつくりに活かせます。
既存・想定見込みパートナー共通のインタビュー項目
最後に、共通設問です。
業務上の情報収集方法
パートナーが業務上、どのように情報収集をしているかを把握できると、広告選定などタッチポイント検討時に参考になります。パートナーが業界専門メディアを閲覧している場合、競合や業界の動向を把握するために、広告枠まで含めて見ていることも。パートナーの認知を獲得するために、業界専門メディアに掲載する施策などが考えられます。
【2社の実例紹介】パートナーのインタビュー後の考察
既存パートナーや想定見込みパートナーにインタビューしたら、サマリーをまとめましょう。チーム内での共通認識の醸成ができます。実際のパートナーへのインタビュー結果を2例紹介しますので、参考にしてみてください。
システムインテグレーター(SIer) A社のケース
システムインテグレーター A社の営業担当へのインタビュー結果をみてみましょう。以下のインサイトを得られます。
- プロダクトを担ぐ理由は、新規開拓に便利だからと捉えており、顧客先での話のネタとなる業界ごとの事例やトレンド情報を求めている
- 一方で、各社のプロダクトに性能差は感じておらず、顧客に説明できていないと推察できる
- 当該カテゴリーにおける◯◯社のインストアシェアは8割のため、シェアを奪取するアプローチが必要
ここまでパートナー理解が進めば、パートナーに対してどのような施策を打てばよいか明確になります。
ディストリビューターB社のケース
次に、ディストリビューター B社のMD担当へのインタビュー結果です。このインタビューからは以下のインサイトを得られます。
- 「かんたんに売れる」ような魅せ方やパッケージ化を検討するとよい
- 評価項目の1つに注力商品の販売数があるため、注力商品として採用されるための戦略を練る
- 顧客から「聞かれた」ときに、「〜〜なら◯◯」の第一想起をとるための仕掛けが鍵を握る
このように、パートナーの営業活動の癖や評価項目を把握することで、ネクストアクションが明確になります。
※関連記事:ディストリビューターの実態が知られていないので、解説してみた
よくある質問
Q. パートナー企業の誰にインタビューすればいいですか?
既存パートナーの場合は、「取り扱いの判断をした事業責任者」と「自社プロダクトを一番売っている営業担当者」にインタビューしましょう。売れている要因を分析することが最優先事項だからです。
想定見込みパートナーの場合は、「事業責任者」または「営業部門かマーケティング部門の外部プロダクトの仕入れ担当」にインタビューしましょう。想定見込みパートナーの場合は、全項目をヒアリングできることは稀です。優先順位をつけてヒアリングをするとよいでしょう。
Q. 想定見込みパートナーはどのように探せばいいですか?
縁故を辿って探す、ビザスクで募集する、顧客に紹介していただくなどの手段があります。ユーザーインタビューの協力者探しに役立つ主なサービスは、以下の記事でまとめているので参考にしてください。
※関連記事:BtoBマーケティングで重要な「顧客理解」を深める12の方法
パートナービジネスで成果を出すためには、パートナー解像度の向上は欠かせません。新規のパートナーを探したり、既存パートナーが売ってくれない悩みがある場合は、パートナーに直接聞くことをおすすめします。
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