才流(サイル)では、『先駆者に聞く、SaaS×パートナービジネスのリアル』と題して、パートナービジネスの先駆者の皆さまを取材し、パートナービジネスを進めるうえでのポイントや仕組みづくりのナレッジをご紹介しています。
今回は、サイボウズ株式会社の清田 和敏さんと酒本 健太郎さんに、SaaSのパートナービジネスでよくある課題や悩みについて、コメントをいただきました。
ピックアップした課題・悩みは、次の3つです。
- パートナー契約をしても、売ってくれない
- パートナー向けの勉強会に手応えがない
- パートナーに、オンボーディングやカスタマーサクセスまでお願いしたい
パートナービジネスを拡大したいと考える企業は、ぜひお読みください。
聞き手は、才流のコンサルタント・桂川 誠です。
才流では「適切なパートナーと契約したい」「代理店が売りたくなる仕組みをつくりたい」企業さまを支援しています。代理店販売でお悩みをお持ちでしたら、ご相談ください。
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Q1.契約したのに、パートナーが思うように売ってくれません
桂川 パートナービジネスでは、「パートナーに売ってもらう」ではなく、「自社サービスでパートナーの課題を解決する」姿勢が重要です。
そのうえで、サイボウズのパートナー営業の皆さんは、どのようなコミュニケーションをとっていますか。
酒本 パートナーによって、ビジネスのフェーズやニーズが異なります。そのためサイボウズでは、パートナーごとに、コミュニケーションを最適化することを大切にしています。
たとえば、パートナーとの関係性がまだ深まっていない段階では、情報収集から始めます。パートナー企業の窓口となっている方、実際に現場で動いている営業の方、トップの方にヒアリングをして、課題を確認します。
そして、パートナーの営業がサイボウズの製品を提案し始めるようになったら、案件同行や、窓口の担当者との定期的な打ち合わせを行います。引き続き営業の皆さんとも会い、現場の課題や状況も聞いています。
清田 私は、パートナー企業の階層を意識しながら、コミュニケーションを取るようにしています。
現場の皆さんとの関わりも大切ですが、それだけでは、パートナー企業全体を巻き込んだ大きな動きにはなりづらいです。
現場との関わりと並行して、四半期に1度くらいのペースで営業本部の皆さんとも定例会を行います。
このとき、関わっている現場の方の名前を挙げて、サイボウズとのパートナービジネスから、どのような成功体験が生まれているかも共有しています。
本部の皆さんは、kintone活用の具体的なイメージを浮かべられますし、社内でも把握できていなかった情報も得られる。すると、別の課題解決にもkintoneを活用していこうとなるのです。
パートナー契約後、思うように売れない背景には、経営層や管理職層だけにアプローチしているケースと、関係つくりを現場のみに留めているケースの両方があるのではないでしょうか。両方に対するアプローチが重要です。
Q2.勉強会をやっても手応えが出ません。効果の出る勉強会の方法を教えてください
桂川 パートナービジネスの啓蒙活動において、勉強会はテッパンの施策です。ただ、「勉強会を実施する」だけでは、成果にはつながりにくいですよね。
酒本 勉強会は、「参加者の半分は聞いてないし、終わった数分後にはその内容を忘れている」くらいの心構えで取り組むのが、ちょうどいいかもしれません。
少なくとも、勉強会を1回実施したらすぐに売れるようになる、なんて魔法のようなことは起こらないです。
清田 kintoneの場合、パートナー企業の上長と「なぜkintoneを一緒に売っていくのか」をしっかりと握ったうえで、勉強会を進めています。
すると、何ヶ月という継続したスパンで勉強会の時間をいただいたり、新人研修にkintoneの勉強会が組み込まれたり、というケースも出てきます。
勉強会だけで終わらず、すぐに声をかけられる体制づくりとして、パートナー社内に常駐する方法もいいですね。
勉強会のポイント
- パートナー社内の組織構造を理解し、その構造にあわせた勉強会コンテンツやコミュニケーションを設計する
- サービス単体ではなく、パートナーが注力している商材と絡めて、パートナーの営業にとって「自分ごと」になる勉強会を行う
- パートナー社内で生まれた知見や成功体験は、勉強会で共有。「自分でもやってみよう」という人が増えるまで、勉強会と共有のサイクルを繰り返す
Q3.パートナーに、受注後の導入支援からカスタマーサクセスまで興味を持ってもらうには?
桂川 ベンダー側でリソースが足りず、パートナーにもオンボーディングなどの導入支援やカスタマーサクセスに取り組んでほしいという声を聞きます。
清田 パートナーに受注後のプロセスも見てもらいたいならば、受注後もパートナーのビジネスができる仕組みをつくることが重要です。事業として成り立てば、パートナーも前向きに取り組むのではないでしょうか。
酒本 kintoneの特性として、部門導入から始まり、接点が広がるに連れて他部門へ展開していくケースが多いです。
そのため、エンドユーザーのお客さまとの接点として、パートナー側に「カスタマーサクセスをやりたい」というニーズがあり、実際に支援事例がありますね。
このようにkintoneは、パートナー独自にメニューが開発でき、パートナーのビジネスが広がる仕組みになっています。
パートナービジネスの成長は、パートナーの課題解決にある
パートナービジネスは、直販営業の片手間でできることではありません。
どのくらいの予算、人的リソースが割けるか。経営層・管理職層もパートナーの現場に足を運び、「一緒にビジネスを大きくしていこう」とコミットできるか。企業の本気度が試されているビジネスです。
今回とりあげた課題以外の、パートナービジネスによくある失敗パターンと解決策は、以下の記事も参考にしてください。
SaaS企業のパートナービジネス失敗体験〜10社に聞いた課題と解決策〜
パートナービジネスの失敗には再現性があります。失敗のパターンを学び、失敗を避けることでパートナービジネスの成功確率を高めていきましょう。
(撮影:ヤマダヤスヒコ 文:大崎 真澄 取材・編集:水谷真智子)