事業開発の初期は、「何をすればいいか」でかなりの時間を取られます。そんな時、あなたを助けるのがフレームワーク。これを知っておくだけで、相当のロスを避けられます。今回はアビリオン代表取締役・石川康裕さんに依頼し、14のフレームワークを紹介いただきました。
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フレームワークを知ると、「新幹線」に乗れる。
新たに事業を行なおうとしている、あるいは新規事業立ち上げに関与している立場の方々は、ときに「何からやればいいんだ?」という茫漠とした気分に陥ります。
だだっ広い何もない場所に放り出されて、キョトンとして、でも、すぐにでも何かを始めなければいけない焦りだけが日に日に募る、ハイパーストレスフルな状況。しんどいですね。
事業開発の初期は、こういった「何をすればいいかを考える」というタスクでかなりの時間が無駄に終わります。
しかし、有効なフレームワークを知っていると、悩む時間が考える時間に変わり、一気に進みが良くなります。例えるなら、フレームワークを知らない頃を「東京から一般道で名古屋に行く」とすると、知った後は「東京駅から『新幹線のぞみ』で名古屋に行く」くらいになります。
このメディアの読者の方であればまさに”DOER”と考え、新規事業開発をするときにおさえておくといいフレームワークを書いてみます。
なお、フレームワークはフェーズと目的に応じて必要なもの・有用なものが変わってきます。今回は事業開発フェーズにおける大きな山場でもある「資金の確保(予算や投融資の承認)」をゴールとして、アッセンブルして説明させていただきます。
事業開発フェーズで有効なフレームワーク14選
1.ポジショニングマップ
- 効能_「お、この新事業はブルーオーシャンやんけ。投資したるわ」と金主に思ってもらう効果を発揮する。
- 重要度_★★★★☆
- 用法_2軸を設けてライバル事業をマッピング。その中でどのポジションを自社がとるのかを明示する。軸の取り方がポイントになる。
2.SWOT分析マトリクス
- 効能_「なんや、ちゃんと自分の良し悪しわかっとるやんけ」と金主に思ってもらいつつ、意地悪な質問を先回りして解消しておけるという効果。
- 重要度_★★★★☆
- 用法_事業のStrength(強み=内的要因xポジティブ要素)/Weakness(弱み=内的要因xネガティブ要素)/Opportunity(機会・チャンス=外的要因xポジティブ要素)/Threats(脅威=外的要因xネガティブ要素)を可能な限り書き出す。
※やり方/作り方の詳細はググってください
3.TOWS戦略マトリクス
- 効能_「ええやん、ちゃんと押しどころと引きどころもわかっとるやん」と金主に思ってもらいつつ、金主と有意義な事業発展のディスカッションにもっていけるという効果を持つ。
- 重要度_★★★☆☆
- 用法_SWOTマトリクスで洗い出したStrengths/Weaknesses/Opportunitys/Threatsを掛け合わせて、「積極的に攻めるべき場所(=SxO)」「脅威への対処策をかけるべき場所(=SxT)」「補填策をかけるべき場所(=WxO)」「可能な限り回避すべき場所(=WxT)」を可能な限り書き出す。
4.マネタイズモデル
- 効能_「自分ら、こうやって商売しようと考えとります!」と金主にパッと説明できるもの
- ※金主にどう思ってもらう以前に、これがないと話も聞いてもらえません。
- 重要度_★★★★★
- 用法_最終的なお客様や仕入先など、主要なキャストを配置して、モノ/サービス/カネの行き来を図示。
5.競合分析
- 効能_「ヨソがやれてないことをやるっちゅうことやな。よっしゃ、乗ったろう」と金主に思ってもらえる。
- ※これも金主にどう思ってもらう以前に、ないと話も聞いてもらえません。
- 重要度_★★★★★
- 用法_主要な競合を数社並べて、「サービス/デザイン/コスト」などの切り口で比較評価。数値化できるものは可能な限り行ない、ものによっては◎/◯/△/×程度の粒度で評価を記載するでも良い。
※比較の切り口はとても重要です!
6.PL(収支の推移予測)
- 効能_「まー3年は儲からんだろうけど5年で見れば回収の見込みあるっちゅうこっちゃな」と金主に対して具体的な投資価値を伝える。
※出資検討が目的なら、これもマストで必要
※初期はいろんなものが概算だということは金主も理解しているが、ここをどこまで分解できるかでやる気度合いを見ています。※累積の営業利益も記載することでざっくりと金主が資金繰りの計算可能 - 重要度_★★★★★
- 用法_大まかにでも売上と原価を月次で割り出し、月次の推移を5ヶ年算出してグラフ化する。最低限表示すべきは「月次売上推移」「累積営業利益推移」。その他重要なKPI(ユーザー数など)があれば併記するとなお良し。
7.キーマン(プロフィール)
- 効能_「なんや杉山ちゃんもプロジェクト参加するんかいな。しかも仕入れは有富水産さんやんけ!へー!ほんなら大丈夫そうやんな」と金主に安心してもらう(実現可能性を感じてもらう)という効果がある。
- 重要度_★★★☆☆
- 用法_内部の関係者/外部の関係者でこのプロジェクトに関してのキーマンを可能な限り書き出しつつ、簡易的なプロフィールを添える。
8.ステークホルダー(体制図)
- 効能_「この体制だったら一部不安はあるけどなんとかいけそうやな」と金主に安心してもらう(実現可能性を感じてもらう)という効果がある。
- 重要度_★★★☆☆
- 用法_「名前/担当」などを書いた組織図をつくる。
9.サプライチェーン
- 効能_「なるほど、業界のこの部分をがっぷり取りに行こうっていう寸法やな。おもろいなー」と金主に事業のもう少し大きな観点での野心を伝える効果を持つ。場合によっては金主と有意義な事業発展のディスカッションにもっていけるという効果を持つ。
- 重要度_★★☆☆☆
- 用法_大まかな商流を書き出し、その中で自分たちはどのプロセスを担っているかを明示する。
10.マイルストン
- 効能_「だいたいこのくらいに出来るんやな。わかった」と大まかなスケジュール感を伝える。※金主にとっては重要な検討材料なのでとても必要
- 重要度_★★★★★
- 用法_ざっくりと年単位で大まかな線表を引き、「20xx年xx月にサービス開始予定」「20xx年xx月に利用者100万人突破」など、目覚ましいイベントをプロットする。
11.課題/解決/未来
- 効能_「そもそもユーザーさんの困りごとっちゅうのと、今回のサービスってのはきちんと対応しとるんやな。ええなー」と金主に理解いただける効果を持つ。 ※市場ニーズがあるかも金主にとっては重要な検討材料
- 重要度_★★★★☆
- 用法_現状の課題や問題点を箇条書きにし、問題点に対応したサービスや機能を隣に併記、さらに隣に解決された結果どうなるかを記載する。
(例:【課題】病院の待ち時間が長い →【解決】受付整理順が3つ前になったらメールで自動通知 →【未来】待ち時間を有効に利用でき、ストレスが減り再訪につながる)
12.スローガン
- 効能_「ええから一言でこのサービス自体と、君の意気込みを教えてもらわんとわからんわ」という金主から確実に言われるツッコミへの回答効果を持つ。一言で言えないということは、話が煮詰まってないという風に金主はみなします。
- 重要度_★★★★☆
- 用法_全部の資料を作り上げた後に「つまりどんなサービス?」「どんな好影響を社会に及ぼすの?」という自問自答を部屋に閉じこもり煮詰めて、それをテキストで簡潔に書く。
13.プロダクトサマリー/サービスサマリー
- 効能_「なるほど、こんなんが出来んねんな。よっしゃわかったわ」と金主に具体的なイメージをもってもらう。プロダクトモックやデザインラフは、言葉よりも理解のインパクトが大きく承認を得やすい効果がある。
- 重要度_★★★★☆
- 用法_デザイナーもしくはエンジニアさんに依頼して大まかなラフを作成していただく。それを資料に貼り付けて簡易的な説明を付帯する。
14.市場規模(現状&予測)
- 効能_「そもそも市場規模(パイ)ってなんぼあんねん?そのパイを陣取り合戦するのか、それともパイを太らすんかでいうとどっちや?」という重要ツッコミに答える。市場規模が小さければサービスが頭打ちになるので投資判断の大事な材料となる。
- 重要度_★★★★★
- 用法_ネットをダイブしてとにかく調査し、その結果を「割合なら円グラフ」「推移なら棒グラフか線グラフ」としてビジュアルにまとめる。
※可能な限り信頼できる情報源から採取する。
おわりに
すべてのフレームワークを駆使せねばならないわけではありません。また、これで十分とも言い切れません。汎用性という観点で抜粋した結果が、上記の14個でした。
いろいろとプレゼンや交渉をしている中で、本当に必要だと思ったもののみを掲載しているので、ここへの足し算引き算は読者の方々にお任せいたします。よき事業プラン(あるいはリプラン)となることを祈っております!
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業の立ち上げからPMFに至るまで一気通貫で支援しています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)