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Carelyは最初の100社の顧客をどう開拓したのか?

新規事業
コンサルタント
黒須 敏行

今回は、弊社コンサルタント黒須のYouTube動画「Carelyは最初の100社をどのように開拓したのか」を記事化してお届けします。fondeskBizerboardTimeRexに続く、最初の100社シリーズ第5弾です。

データに基づいて、従業員の健康を管理する健康管理SaaS「Carely(ケアリィ)」。2016年にローンチした同サービスは、最初の100社の顧客をどのように開拓してきたのでしょうか。

株式会社iCAREの取締役 CRO 中野 雄介さんに話を伺いました。

健全な組織づくりを効率的に行う健康管理SaaS「Carely」

黒須:まず、Carelyとはどのようなサービスなのかを教えてください。

中野:Carelyは、人事・労務・総務などの方が従業員の健康状態を把握し、健全な組織づくりを効率的に行うためのサービスです。

健康管理に関する業務は、人事労務担当者の負担が大きくなっています。健康診断は電話やFAXで予約や変更の管理に手間がかかり、結果を紙で通知されることも多く、管理が大変です。

またリモートワーク下で、従業員の健康管理は難しくなっています。そこでCarelyは従業員の健康に関する情報を一元管理し、効率化します。

【Carelyが解決すること】

  • 健康診断予約の効率化
  • 健康データの一元化
  • メンタルヘルス予防と対策
  • 健康経営の推進
  • 50名以上の健康管理における法令遵守
  • 最適な産業医の紹介

導入80社で手詰まり状態。課題を再検討し、サービスコンセプトを変更

黒須:創業時とは事業内容が変わっていますよね。どのような経緯があったのでしょうか。

中野:「働くひとと組織の健康づくり」というビジョンは創業時から変わっていません。しかし、創業当初は産業医を企業に紹介する、人材紹介に近いことをメインの事業としていました。また、従業員が専門家とチャットで健康相談ができるクラウドサービスを提供していました。

ただ、これらのサービスは見事に売れませんでしたね。リニューアルして生まれたのが今のCarelyです。

黒須:リニューアル後、サービスの導入は順調に進んだのでしょうか。

中野:ローンチ後の約2年間は迷走してしまい、約70~80社程度しか導入が進みませんでした。月額単価も3万円以下でしたし、ビジネスとして大きくグロースさせていくのが難しい状況でした。

黒須:最初の70~80社への導入はどのように進めたのですか。

中野:もともとやっていた産業医の紹介事業とセットで販売したり、代理店を使ったり。あらゆる方法で進めました。しかし、最初の70~80社で、できることはやり尽くしてしまいました。

敗因として考えられるのは、当時のサービスコンセプト「オンライン保健室」ですね。

響きは良いし、サービスのイメージもなんとなくはできる。みなさんも「良いサービスだね」と言ってくださったのですが、お金を払ってくれる人があまりにも少なかったんです。

そこで改めて、従業員の健康管理を担う人事部の方々の課題を考えました。すると、そもそもの業務量が多いことが一番の課題なんじゃないかと気づいたのです。

例えば社員数50名ほどの企業では、人事部の担当者は1~3名程度です。その人数で採用はもちろん、就業規則の制定や社会保険・マイナンバーの手続き、ストレスチェックの管理など多くの業務を担当しています。

実際にお客様とメールでやり取りをしていると、返信が23時半とか。常に業務が逼迫している様子が窺えました。

人事の方の業務時間をもっとスリムにし、課題を解決したい。ここでコンセプトをオンライン保健室から、業務効率化ツールへと変更しました。

黒須:サービスそのものも変えていったのでしょうか?

中野:提供しているサービス自体はほとんど変わっていません。ただ、解決したい課題が変わっているため、開発の思想や課題への応え方などは変えていきました。

検索キーワードとターゲットも広がり、新たな顧客獲得へ

黒須:コンセプトを変えて、具体的にどのようなことからはじめましたか?

中野:Webサイトや営業資料など、お客様に届くインターフェースの部分の見せ方を変えていきました。ターゲットも少し変わり、従業員数の多い企業にもアプローチすることにしました。

結果として、マーケティングの部分では、サイトのPV(ページビュー数)・SS(サイトセッション数)・CVR(コンバージョン率)・CV(コンバージョン)の全指標が向上しました。営業も、商談をしてから稟議にかけてもらう機会が増えましたね。

このタイミングで広告出稿も始めました。最初は安いFacebook広告から始めて、徐々にGoogleとYahoo!にも出稿しました。

Google広告は基本的にリスティングです。費用はかかるものの、質の高いリードを獲得できたので、まず我々の主戦場となるキーワードを取りに行きました。そこから徐々にキーワードの幅を広げて、リターゲティング広告やオウンドメディアなども始めました。
自社の強みだと思っているのは豊富なウェビナーとホワイトペーパーです。

おそらくこれまで50個ほどのウェビナーやホワイトペーパーを提供しています。ターゲットとなる人事の方が気になるテーマを掛け合わせ、コンテンツを作っていきました。例えば「メンタルヘルス」と「テレワーク」のような感じですね。

黒須:ということは、基本的にはインバウンドでのリード獲得がメインですよね。

中野:そうですね。一部アウトバウンドもやっていますが、基本的にはインバウンドがメインです。

もともとの「オンライン保健室」というコンセプトでは、検索クエリは「メンタルヘルス」くらいしかなく、トラフィックを集めづらい状況でした。コンセプトを変えたことで「健康管理」という大きなテーマになり、クエリも増え、トラフィックを獲得できるようになりました。

また、2015年に50人以上の労働者を有している事業場ではストレスチェックが義務化されました。世の風潮としても健康経営が意識され、検索ボリュームも増えてきました。「今後伸びるキーワードを見極めて、獲得しにいく」という施策は、今でも継続しています。

導入社数450社、1社あたりの月額単価は以前の3~4倍に

黒須:どのくらいの従業員規模の企業がターゲットになるのでしょう?

中野:我々は300名以下を「スモール」、300〜1,000名が「ミディアム」、1,000名以上を「エンタープライズ」とわけています。スモールはもちろん、ミディアムの企業もどんどん増えてきました。

人事労務の方は、従業員数が増えるほど、業務は増えていきます。業務がボリュームディスカウントされるわけではないので、エンタープライズの規模になると、必然的に中央管理できるシステムが求められます。エンタープライズの方にも、幅広くご利用いただいています。

黒須:導入社数はどれくらいまで伸びましたか。

中野:現在は、約450社のお客様にご利用いただいています。

黒須:従業員数の多い企業へのアプローチで、月額単価にも変化はありましたか。

中野:そうですね。Carelyはアカウントビジネスなので、ID数での販売です。従業員数が多ければ1社あたりからの単価も多くなります。

コンセプト変更から従業員数の多い企業の導入が進んだため、1社あたりの月額単価は3~4倍になりました。

黒須:SaaSのビジネスだとチャーンレートも見られますよね。状況はいかがでしょうか。

中野:現在、チャーンレートは年次で0.4%くらいです。ただ、これは社数ではなくMRR(Monthly Recurring Revenue:月次経常収益)でのチャーンレートですので、仮にエンタープライズのお客様が解約してしまうと、大きな影響が出ます。そういった意味では0.4%というのは、非常に低い状態を保てていると思っています。

黒須:もしコンセプト変更の前に戻れるとしたら、やっておけばよかったと思うことはありますか?

中野:サービスのローンチから迷走していた2年半は、今思えばなくてはならない期間でしたが、もっとその期間を短くできていればよかったとは思いますね。

当時、年間100~200社くらいの人事の方にヒアリングをしていたのですが、本当に困っていることを引き出せませんでした。もっとユーザーの声に真摯に向き合って、課題を解決するという姿勢があれば、2年という時間はかけずに済んだのかなと思います。

インバウンドを中心に、アウトバウンド・ABMも掛け合わせて顧客増を目指す

黒須:今後も今のマーケティング活動を継続していく予定ですか。

中野:基本的にはそうですね。インバウンドがメインです。

というのも、従業員数が50名を超えると、健康診断の実施と報告の義務が生じるため、従業員の健康管理にリソースを割く必要が出てくる。つまり、我々のメインのお客様になり得る企業なんです。

従業員数50名以上の企業が、現在国内に約200万社あると言われています。そういった意味では我々はまだまだサービスを伸ばしていく余地があります。そこをインバウンドで指数関数的に獲得しにいくつもりです。

ただ、その中でも受注できるお客様と、受注につながらないお客様がいます。その差を明確化し、今後はアウトバウンド・ABM(アカウントベースドマーケティング)も必要になってくるとは思っています。

特にエンタープライズのお客様は、インバウンドだけだといつか天井がくると思います。アウトバウンド・ABMでも取りに行く、そして事例を作り、またインバウンドでも獲得する。そんなインバウンドとアウトバウンドの掛け合わせは、今後必要だと考えています。

「働くひとの健康を世界中につくる」Carelyが目指す未来

黒須:ありがとうございます。最後にお伝えしたいことはありますか?

中野:我々は「働くひとの健康を世界中につくる」というパーパスを掲げています。

コロナ禍で健康管理への意識が高まり、企業の関心も高くなっています。感染症以外にも、メンタルの不調など、働いているとネガティブな現象は起きます。しかし本来、働くということはとてもポジティブな行動です。

そこで起こってしまうネガティブを食い止めるのが、我々のサービス「Carely」なんです。

この価値を多くの企業と働くひとに届けるのが、私が先陣を切っているセールス・マーケティングのチームです。弊社のサービスと世界観、パーパスに興味を持っていただいたセールス、マーケティングの方々、ぜひ一緒に働きましょう。

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