
メドレーとメディカルノート、健康アップデートから復活したのはどちらか?
2017年12月を境に、医療情報に関する検索結果が大きく変わりました。
そもそも、検索結果が激変した背景としては、DeNA社のWELQの問題をきっかけとした「信頼できる情報をいかにユーザに届けるか」という問題が大きかったと思います。
今回のテーマは、「健康アップデート」と呼ばれるGoogleの検索結果アップデート。それにより、検索経由のトラフィックを大幅に失ったものの、無事にリカバリーできたメディカルノートの事例と、中々リカバリーできていないメドレーの事例を比較していきましょう。
健康アップデートが及ぼした影響
Googleは医療情報を代表とするセンシティブな検索ニーズに対して、信頼できる情報をどうやってユーザーに伝えるのか試行錯誤した結果、「信頼できると考えるドメイン」を優遇するようにアルゴリズムを変更しました。
そのため、検索結果には、下記のようなドメインが極端に軒を連ねることとなります。
- 製薬会社
- 病院公式サイト
- 官公庁などの公的機関
確かに信頼できるドメインと考えられるものの、下記のようなウェブサイトでも医療機関のドメインであれば上位に掲載されるデメリットもありました。
- モバイルフレンドリーになっていない
- 構造化を全く考慮していない
- ウェブサイトの使い勝手が悪い
反対に、下記のようなサイトであってもアクセスが激減することが多発しました。
- ウェブサイトの使い勝手が良い
- 構造化されていて読みやすい
- 専門的な言葉をわかりやすく伝えている
例えば、スタートアップによる新規ドメインのサイトにおいて、アクセスが激減する現象が多発したのです。これらの変更は健康アップデートと呼ばれるようになります。
健康アップデートからリカバリーしたメディカルノート
医師である木畑宏一氏が代表であったメディカルノート。
メディアでトラフィックを稼ぎ、MAの仲介手数料など他の事業で稼ぐモデルだったようです。
「医療機関への支援の一つとして、当社が力を入れているのが医療機関の事業承継です。日本全国で現在、10万ほどのクリニックがあるわけですが、そのうち、毎年5,000ものクリニックが廃業し、ほぼ同じ数が開業しているといわれています。廃業する理由の多くが後継者問題です」
参照:日本の医療現場のあり方に変革をもたらす、医師の挑戦
ただし、木畑宏一氏が退任したようで、今後ビジネスモデルがどうなるのかはわかりません。
そのメディカルノートはアップデートで大きくトラフィックを落としたものの、リカバリーを果たし、そこから急成長をしています。
人材領域に強いメドレー
一方、多くの医療従事者を抱えているメドレーはどうでしょうか。
事業ドメインは下記の4つに分れていますが、成長力の軸になっているのは創業当時から行なっている人材事業のよう。
- 人材
- メディア
- 医療従事者支援サービス(ex.遠隔医療・予約システム)
- 介護システム検索メディア
メドレーの人材事業は、市場価格よりリーズナブルな料金設定で人材領域のシェアを25%と伸ばしています。そこを起点に、様々な事業に展開させる構想のようです。
ジョブメドレーはシンプルに顧客のメリットを訴求した。一般的な人材紹介の手数料が20〜30%に対し、メドレーは2〜12%程度という圧倒的に安価な価格設定。DMや電話等の非対面営業でも売りやすい商品構成にするなど、営業コストの効率化を図ることで価格を抑え、「試してみよう」という事業者を集めていった。
ジョブメドレーは、あらゆる医療ビジネスを立ち上げる上での事業基盤になる構想でした。この業界には65万ほどの施設があります。そのうちの約15万、つまりほぼ4つに1つの施設が我々のサービスを利用いただいている。これがジョブメドレーがもつ、大きな可能性です。
我々は、この顧客群に対し、バーティカルに事業を立ち上げられる。例えば診療所であれば、電子カルテやオンライン診療アプリといった診療所向け業務システムの提供を。介護施設や老人ホームであれば、それ用のサービスを…といった具合です。
参照:「未来志向と凡事徹底が医療の未来をつくる」──メドレー代表 瀧口浩平が語る改革思考
結論から言うと、メドレーが運営するメディアサービスは健康アップデートの影響を受け、中々リカバリーすることができていません。
メディカルノートとメドレーの比較
では、具体的にどれほどの違いがあるのでしょうか。「メディカルノート」と、「メドレー」のトラフィック推移を比較してみましょう。
メディカルノートのトラフィック推移
メドレーのトラフィック推移
メディカルノートと、メドレーにはどんな違いがあるのでしょうか?
結論は、被リンクの違いです。どういったドメインから被リンクを集めているのかが大きく異なっています。
成否を分けたのは、被リンクの違い
被リンク元抜粋
被リンク先
メディカルノートにリンクを掲載している病院は、規模が大きく歴史もありますし、独立行政法人からのリンクも目立ち、全体的に公的な毛色が強い特徴があります。
一方、メドレーは自身の病院のオンライン予約受付システムや、遠隔診療受付の機能ページに対してリンクを集めており、メディカルノートと比べると小規模の医療機関からのリンクが多い傾向があります。
「誰が言っているか」が重視される
メドレーの記事の品質はかなり高いです。しかし、今の医療領域における検索結果は下記のようなことが重視されています。
「何をいっているかではなく、誰がいっているか」
そのため、Googleは以前よりも大手の公的医療機関のドメインを高評価しているのです。だからこそ、その被リンクを数多く受けているメディカルノートはその恩恵を受けて伸びています。
海外事例ですが、医療機関からの相互リンクによって健康アップデートからリカバリーした事例の中にも、医療機関との相互リンク施策が入っています。
- サイトについていたブログを分離
- コンテンツ改善
- 記事の著者ページから医療機関への相互リンク
- 構造化データのエラーを整備
- Googleの自動翻訳プラグイン削除
(参照:How a physician review site recovered from Google’s ‘medic’ update )
信頼度の高いドメインから被リンクを獲得する
もし現在、読者の方の中にも、健康アップデートの影響に苦しんでいる方がいらっしゃれば、
- 大手医療機関(独立行政法人や大学病院など)からの被リンク獲得
が最優先課題でしょう。
また、健康アップデートで起こったことは、他の領域にも遅かれ早かれ訪れる可能性があります。
医療メディア関係者でなくとも、下記のような高単価商材を扱っている方は今回の事例が参考になるでしょう。
- 金融
- 不動産
今からバックアッププランを考えるのは、決して遅くないはずです。